2020年9月県議会 楠本文郎 一般質問 概要記録

 録画中継

1.気候変動への対応は待ったなしの課題
(1)第4次和歌山県環境基本計画の達成状況は
(2)県としても、これまでの水準を超える取り組みを進めるべき

2.洪水浸水想定と安全安心の河川づくりについて
(1)「日高川洪水浸水想定」の目的、意義について
(2)今次梅雨における椿山ダムの放流操作について
(3)気候変動のもと、堤防強化と掘削は大きなテーマ
(4)今後の河川整備予算をどう確保していくか

3.国保制度の改善のためには、国の財政措置増額は不可欠の課題
(1)医療費助成ごとの減額調整額
(2)知事会の「提案・要望」を踏まえての和歌山県としての考え方

2020923


1.気候変動への対応は待ったなしの課題
(1)第4次和歌山県環境基本計画の達成状況は
《質問》楠本文郎 県議
 9月に入った途端に日本に襲来した台風10号は、気象庁が最大級の警戒を呼び掛けた中でしたが九州・沖縄を中心に大きな爪痕を残しました。亡くなられた方をはじめ、被害にあわれた方々に心からのおくやみを申し上げます。死者・行方不明・多数のけが人という人的被害、家屋の倒壊・損傷とともに、停電・通信網の寸断が多くあり、交通網も寸断されるなど社会基盤にも広く及びました。
 これから大型のスーパー台風が日本近海に発生し、集中豪雨・強風・高潮・洪水などに悩まされる日々が襲いかかってこようとしています。これから台風の本番に向かいますから、和歌山県では台風進路に細心の注意を払い、警戒を怠らないようにしなければなりません。今日も、台風12号が日本列島に向かってきています。やはり海水温の高いところで発生しています。今回のは、さほど大きくはならないようですが、やはり雨の降り方に注目する必要はありそうです。
 すでに、今年も長い梅雨において大きな災害が発生しています。「近年の温暖化の進行で日本列島周辺の海水温が高くなり、かつてなかったような豪雨災害が起こりやすくなった」と言われ続けてきました。線状降水帯と呼ばれる集中豪雨は、近年の日本では、海岸であれ、内陸であれ大きな被害をもたらしてきています。さらに梅雨が明けたと思ったら、異常な高温が連日続き、41.1度という体温を超える高温が浜松で記録されました。こうした異常気象のもと、100年に1回の規模と言われる大災害が、毎年起きていることを誰しも実感しているところです。
 気候変動枠組み条約のエスピノサ事務局長は「新型コロナは人類が直面する緊急の脅威だが、最も大きな脅威は、気候変動であることを忘れてはならない」と訴えています。「産業革命以前に比べて、地球の平均気温上昇が2度を超えると温暖化は元の状態に戻れない状況となり、壊滅的な事態につながる」と科学者から指摘されてきました。その危機意識をどれだけ広い範囲で科学的に共有できるのかがカギになると考えています。
こうしたなかで環境省は、昨年7月、1.5度に気温上昇を抑えた場合を想定した「2100年 未来の天気予報」という新作版の動画を公表しました。環境省のHPで公開されています。この動画では、このまま有効な対策をとらずに地球温暖化が進行すると、平均気温が4度を越えて上昇すると予測されています。
 最新の気象状況等をふまえ、産業革命以前からの気温上昇を1.5度に抑える目標を達成できなかった場合、大阪の2100年の最高気温は、42.7度と予測されています。目標が達成されれば39.6度の予想です。
 最高気温が35度を超える猛暑日の年間日数でみると、京都では目標の未達成なら66日、達成していれば40日という予想です。私は、さまざまな科学の知見を把握し、しっかりと啓発し、可能な対策を幅広く、しかも徹底していかなければないという思いが今回質問の趣旨です。
 こうした中、「2050年二酸化炭素排出実質ゼロ表明」をした自治体は、近隣では滋賀・京都・大阪・鳥取・徳島の各府県と、7市町あります。また「気候非常事態宣言」をした自治体は、今全国で27自治体、近隣では大阪府内の堺市、大阪市、河南町、河内長野市の4市町あります。これらの自治体における取組を参考に県内外住民へのアピールも必要になるかと思います。
 危機的状況の共有と同時に、「目指すべき方向性」の共有が重要です。自治体だけではなく、非常事態宣言をした学会・研究機関の取組、民間企業の再生エネルギー100%実施事例や、温室効果ガス実質ゼロを目指す企業のイニシャティブの発揮事例などもかなり進んできています。こうした先進事例を紹介しながら、国民的レベルで、ともに「2100年には1.5度達成を目指す」ことを共有することだと考えます。
 しかし、ある意味ではエネルギー大量消費経済から新しい生活様式までを幅広く求めなければなりませんから、これは大変な取り組みでもあります。コロナ対策を含めそれこそ「新しい生活様式」に代わるぐらいのことも求めなければならいテーマになると思います。
 どうしてそれを実現していくのかという点ですが、すでに和歌山県においては第4次となる「和歌山県環境基本計画が策定されており、そのなかに位置付けられた「地球温暖化対策」としての取り組みが行われてきたところです。2021年3月までのこの第4次計画、今最終年度ですが、この達成状況はいかがか、まずお伺いをします。

《答弁》 福祉保健部長
 第4次和歌山県環境基本計画では、取組の方向の1つとして低炭素社会の構築を掲げ、「2020年度までに2013年度比マイナス9%」を目標として温室効果ガス削減に関する取組を進めてきました。
 これに対し、県内の温室効果ガス排出量は、2013年度以降、減少傾向となっており、統計データ上、最新の結果となる2017年度の排出量はマイナス14.8%と、2020年度の目標を達成している状況にあります。

《再発言》楠本文郎 県議
●海水温と言えば、海のはなし
漁師が泣いている。海の深さによって水温は当然違う。真夏の2週間は皮潮が30以上になっていた。底潮や中潮から魚を引き揚げても、海面にきたら死んでいる魚もいた、あわてて氷に付けても新鮮さがなかったというほどです。
●令和2年版 県環境白書によりますと
 ・現状と課題
 ・再生可能エネルギーの導入促進―その中でも小水力発電所の紹介
 ・課題としての海洋再生エネルギーとしての海洋風力をあげている

(2)県としても、これまでの水準を超える取り組みを進めるべき
《質問》楠本文郎 県議
 2015年に、国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)がありました。1850年ごろの産業革命前と比べて、気温上昇を今世紀末に2度を大きく下回るようにし、1.5度に抑える努力をするという新たなパリ協定を採択しました。今世紀後半2050年にガス排出量を実質ゼロにすること、つまり森林や海などの吸収分を上回る温室効果ガスの排出はしないことを決めた点も合わせて、「歴史的合意」と評価されています。
 現在すでに世界の気温は約1度上昇し、対策がなければ5.4度も上がるとされます。185カ国がこれまでに出した対策を実行しても、約3度上昇するとされます。3度上昇すれば毎年45億人が熱波に苦しむなど、大きな影響が出るとされています。それを2度未満に抑え、さらに1.5度まで引き下げることを努力目標にするのが、今回の協定です。
 先進国だけに削減数値目標を義務づけた京都議定書(1997年採択)と違い、途上国を含む世界のすべての国が温暖化対策に取り組むことで合意しているのが、パリ協定のもう一つの特徴です。とはいえ、先進国が引き続き指導性を発揮するよう求めていることに変わりはありません。新協定の仕組みは「各国の自主努力の積み上げ」方式ですが、2度未満に抑え、さらに1.5度まで引き下げる努力をするという目標の下で、2023年以降5年ごとに自国の活動を見直し、取り組みを強化することとなっています。
 国の温室効果ガス削減目標は、2030年までに「2013年比で26%削減」とされていますが、これを国際的な基準である1990年比に直すと、わずか18%削減です。日本政府の対応の抜本的見直しが求められています。政府は、今年5月13日に閣議決定した「地球温暖化対策計画」で、「長期的目標として2050年までに80%の温室効果ガスの排出削減を目指す」としていますが、2030年削減目標のスピードでは到底、達成できないと言われています。NGOは、2030年までに日本が1990年比で「40%~50%削減」すべきだと主張しています。
 これらを踏まえ、県としてもこれまでの水準を超える更なる取り組みを進めるべきだと考えます。いかがでしょうか。

《答弁》 環境生活部長
 現行の第4次和歌山県環境基本計画が今年度で終了することに伴い、現在、計画の改定作業を進めているところです。
 その中で、温室効果ガスの削減に全力で取り組むことはもちろん、自然災害の増加や農作物への影響などによる被害を防止・軽減するため、気候変動への適応についても検討しています。
 第4次計画の計画期間中においては、「わかやま環境賞表彰」や地球温暖化防止活動推進員によるエコ活動の普及をはじめ、「企業の森」等による森林吸収源対策の推進など、地域において実践できる地球温暖化対策を積極的に進めてきたところです。
 次期計画では、気候変動に関する国内外の動向、県内の経済状況や社会状況も十分に踏まえながら、脱炭素社会に向けた新たな削減目標や、県全体が一丸となって気候変動に対処していくための取組の方向を示し、本県の地球温暖化対策の一層の充実を図ってまいります。

《再発言》楠本文郎 県議
●新協定の仕組みは「各国の自主努力の積み上げ」方式と言うのがポイントです。
やっても、やらなくても、大きな地球規模の取組ではほんの少しのことという思いは必ずある。この意識は、市町村にいくともっと大きくなる。だからこそ、励まし合い、進んでいる事例の共有が必要なんです。
●基本計画は、あくまでも基本ですから、各取組の進捗状況にアンバランスはできる。その点で、目標値を意欲的に野心的に持つことが必要だと考える。
●アメリカ大統領はパリ協定からの離脱宣言をしたままです。それに抗してスウェーデンのグレタ・トゥーンべリさんなどの市民運動が大きな飛躍をとげ、世界世論を動かしロンドンの「気候非常事態宣言」に至ったと言われます。
 文字通り、これから豊かな地球環境の恩恵を受けるはずの次の世代に、よりよき環境を譲らなければなりません。
「一番危険なのは行動しないことではなく、政治家や企業家が行動しているように見せかけること」とグレタさんから言われないように、しっかり取り組もうではありませんか。


2.洪水浸水想定と安全安心の河川づくりについて
(1)「日高川洪水浸水想定」の目的、意義について
《質問》楠本文郎 県議
 さて大きな2点目は、そうした地球規模での対応をしながらも、当面する線状降水帯などによる災害防止にどう対処していくのかは直面した課題です。
 「御坊市洪水・土砂災害ハザードマップ」が作成され、8月末から全戸に配布されています。
 水防法等が改正され、日高川水系で24時間総雨量770ミリがあったこと、河川の複数個所の堤防が決壊して浸水するという前提のもと、想定最大規模の概ね1000年に1回の洪水浸水を想定した区域図を県が作成したものを基に、御坊市が「御坊市洪水・土砂災害ハザードマップ」を作成したと紹介されています。
 県が作成した「洪水浸水想定区域図」について、その目的、想定の根拠、活用の方法、県と市町村の役割分担についてご説明をいただきたい。

《答弁》 県土整備部長
 議員ご質問の、洪水浸水想定区域図に係る4点についてお答えいたします。
 まずその目的は、水害リスクを住民に周知し、洪水時の円滑かつ迅速な避難につなげることにより、被害の軽減を図ることです。特に近年、災害が頻発化・激甚化していることから、その必要性はますます高まっています。
 次に想定の根拠ですが、想定最大規模の降雨は、平成27年に改正された水防法に基づき設定されております。具体的には、降雨特性が似ている地域での実績最大降雨量と当該河川における千年に1度の確率での降雨量のいずれかの大きい方を採用しています。その上で、この降雨による浸水範囲は、堤防の決壊や溢水が想定される地点を相当数選定し、その地点が決壊または溢水したと仮定した場合の浸水範囲を重ね合わせることにより作成しています。
 最後に、活用方法及び役割分担につきましては、県は想定最大規模の浸水想定区域図を作成し、ホームページ等で周知しております。市町村は、これを基に避難場所や避難経路を示したハザードマップを作成し、これを住民に周知するため各戸配付するとともに説明会の開催等を行っております。

《再発言》楠本文郎 県議
●すでに各戸に配布されていますが、地震津波ハザードマップと合わせ活用しないと違いが鮮明にならない。としたら説明会が必ず必要です。この説明会等は市町村が主体だと答弁されましたが、文字通りこれからの始まりであることを確認しておきたい。

(2)今次梅雨における椿山ダムの放流操作について
《質問》楠本文郎 県議
 今年の梅雨期において最も心配したのは7月3日から10日ごろにかけての降雨でした。県が広報している河川/雨量防災情報を注意深く見ていました。
まずは確認ですが、この間に椿山ダムから毎秒1000トンを超えて放流したのはどのぐらいの量と時間帯があるでしょうか。
同様にこの間の御坊・小川での24時間雨量の最大値はいかがだったでしょうか。
現在の椿山ダムの夏季制限水位は187.6メートル、「事前放流」の判断をした場合は184.0メートルまで下げてよいことになっています。事前放流すると利水部分をカットすることになり、美山水力発電にも影響を与えることになると言われています。
 今回の日高川の降雨において、事前放流は行われたのかどうか、また、雨量が一定落ち着いてからは185.5メートル前後で推移しています。これはどのような判断の下での操作でしょうか。それぞれお答えをいただきたい。

《答弁》 県土整備部長
 今年の梅雨期における椿山ダムの放流操作に係るご質問をいただきました。
 まず、お尋ねの期間では毎秒1,000立方メートルを超える放流を行った時間帯はございません。
 なお、最大で、7月6日午後7時ごろに毎秒約950立方メートルの放流を行ったところです。
 次に御坊、小川での24時間雨量の最大値は、御坊市の御坊観測局において94ミリメートル、日高川町の小川観測局において407ミリメートルです。
 最後に、今回の降雨において事前放流は実施していません。これは、平成24年5月に利水事業者である関西電力株式会社と締結した協定に基づく実施の基準となる予測雨量に達しなかったためです。
 また、ダムの貯水位については、現在ダム湖内において浚渫工事を実施中であることから、関西電力株式会社と調整のうえ、夏期制限水位である標高187.6メートルよりも低い貯水位で運用しています。

《再発言》楠本文郎 県議
●平成24年6月から規則に基づく実施要領で椿山ダムは操作している。その要領の中に但し書き操作を位置付けているが、今回は事前放流がありませんでした。ただ、放流操作がかなり綿密になされていてきれいな放流曲線になっています。

(3)気候変動のもと、堤防強化と掘削は大きなテーマ
《質問》楠本文郎 県議
 近年の河川災害は、越流による堤防決壊が大惨事を招いていることを受けて、堤防強化、特に耐越水堤防を求める声が非常に強くなっています。また、ダムをつくるべきという意見も出ています。
 元建設省の河川局災害対策室長であった石崎勝義さんは、球磨川水系の氾濫の原因が川辺川ダム計画の中止にあるという議論に対し、「決壊しにくい堤防に改修し、川床を掘削して洪水の水位を下げておけばこれほど大きな被害にはならなかったはず」と言われています。国も以前は河床掘削が必要だと考えていたが、2001年、急に「川底を掘る必要はなくなった」と計画を変更した、と言うのです。「満杯に耐える堤防と掘削をすれば市街地は守れる」という水害に対しての見解です。
 気候変動のもとでの豪雨、強風などが一層激しくなっている今日においては、「掘削」と「耐越水堤防」とすることは大きなテーマだと思われます。県としての考え方はいかがでしょうか。

《答弁》 県土整備部長
 掘削と耐越水堤防について、ご質問をいただきました。
 県は、豪雨災害から住民の生命や財産を守るため、各河川の特性を踏まえ、堤防の整備や河道の掘削、ダムの事前放流など、ハード対策とソフト対策を鋭意実施しています。
 議員ご指摘の河道掘削については、護岸や橋梁等の既設構造物への影響、動植物への配慮等一定の制約がありますが、洪水時の河川水位を下げる有効な手段であり、引き続き推進してまいります。
 次に、越水を考慮した堤防については、国において、昨年の台風第19号による各所での堤防決壊を踏まえ、越水しても決壊しにくく、決壊するまでの時間を少しでも長くする「粘り強い堤防」の検討が進められているところです。
 県としましては、こうした国の取組の進捗状況を引き続き注視してまいります。

(4)今後の河川整備予算をどう確保していくか
《質問》楠本文郎 県議
 日高川の河川整備を進めるために、2月にも質問したように補正予算を含め大きな仕事として今も進められています。ただ、今年は国土強靭化計画3か年の最終年となっています。
 全国的にも、また県内でも相次ぐ災害などが頻発しております。こうした中で今後、日高川を含む県下の河川整備を進めていく予算の確保に向けて、県としてどの様に取り組んでいかれるのでしょうか。お答えをいただきたいと思います。

《答弁》 県土整備部長
 日高川を含む県下の河川整備を推進するための予算確保につきまして、ご質問いただきました。
 県では、日高川をはじめとする河川整備を進めるため、通常の予算に加え、「防災・減災、国土強靭化のための3か年緊急対策」の予算も最大限活用しながら、河川事業を加速化しています。
 しかしながら、本県は風水害の常襲地帯であり、平成23年紀伊半島大水害や平成30年の台風第20号などが今なお爪痕を残すなど、対策を講ずるべき箇所が多く残されており、引き続き、予算を確保し、事業を推進する必要があります。
 そのため、7月に知事による国への政府提案を行うとともに、全国知事会、近畿ブロック知事会等を通じて治水関係予算の確保を要望しているところです。
 特に、議員ご指摘の「防災・減災、国土強靭化のための3か年緊急対策」については、河道掘削や樹木伐採が緊急対策以前に比べ飛躍的に進捗するなど、県土の災害に対する強靭化に多大な貢献をしていることから、その継続並びに拡充が必要不可欠と考えています。
 引き続き、補正予算等も含め、様々な機会を通じて予算の確保に努め、日高川をはじめとする河川の整備を推進してまいります。

《再発言》楠本文郎 県議
●今年の7月、社会資本整備審議会という国土交通省の審議会が「気候変動を踏まえた水災害対策のあり方について」という答申を出しました。
・あらゆる関係者が流域全体で行う持続可能な「流域治水」への転換という副題がついています。
・「ダムに頼る治水には限界があり、流域住民と一体に防災減災対策に取り組むという内容。・「施設能力を超過する洪水が発生することを前提に」して流域治水への転換を推進し、防災減災が主流になる社会をめざすとあります。
・これまでの治水対策は、ダムによる洪水調整が優先、堤防強化や河道掘削などの河川整備が後回しにされてきた。
・近年の記録的豪雨によりダムの緊急放流、堤防決壊が相次ぐなどダム依存の限界が明らかになった。
・河川氾濫を避けるため、遊水池や田んぼなどに水をためる。
・災害危険区域の開発規制やこの区域からの移転の促進などを検討。
・今年度中に「流域治水プロジェクト」を策定する。
・地方レベルでも「流域治水」の必要性を共有し、提案することが必要。
●自助・共助・公助はさかさま、災害対策は、公助=公的責任があって、共助・自助の対策化。


3.国保制度の改善のためには、国の財政措置増額は不可欠の課題
《質問》楠本文郎 県議
 今年度2020年度の国の国民健康保険財政には、前年度と同様の7割、5割、2割減額の法定減額低所得者対策1700億円と、財政調整機能の強化分としての800億円が措置されています。この全体はまだまだ、全国知事会が要求している1兆円規模の国費増額には程遠いものとなっています。一方で、保険者努力支援制度が強化されています。これは私にとっては保険料引き上げを進める市町村には優遇、従わない市町村にはペナルティーを科すような仕組みに見えます。和歌山県でも、今年度は7つの自治体で値下げがありましたが、7自治体で値上げされています。都道府県一元化すればより保険料が高くなるのではないかという危惧が現実味を帯びてきているのではないでしょうか。
 値上げをおさえる根本的な解消法は全国知事会が求めている社会保障関係の「国の施策並びに予算に関する提案・要望」の内容を実現するしかないと思います。
 全国知事会は、医療保険制度間の公平と子育て支援の観点から、1点目に、子どもに係る均等割保険料の「軽減」措置、つまり子どもが多いほど保険料()が高くなる仕組みを取り払い、国の責任と負担による見直しの結論を速やかに出すことを求めています。
 2点目は、今後の医療費の増嵩に耐えられる財政基盤の確立を図るためには、国定率負担の引上げなど様々な財政支援の方策を講じること。あわせて、すべての子ども、重度心身障害児(者)、ひとり親家庭等に対して、現物給付による医療費助成を行った場合の国民健康保険の国庫負担減額調整措置、つまりペナルティーを廃止することを求めています。
 すでに今年度分の市町村の課税状況が出そろう時期になりますが、コロナ禍の元で医療受診状況の把握もまだ不透明です。その上に国保料()の減免、国保制度での傷病手当金の創設も実現されましたので、ここでは次の2点のみお尋ねしておきます。
(1)医療費助成ごとの減額調整額
 まず、令和元年度決算見込みにおける減額調整はそれぞれの医療費助成ごとでどのぐらいの額だと算定されているのかをお答えください。

《答弁》 福祉保健部長
 地方公共団体では、重度心身障害児(者)やひとり親家庭等の経済的負担を軽減するために地方単独医療費助成によって窓口負担を軽減する措置を講じています。国民健康保険の国庫負担減額調整措置は、こうした医療費助成が受診回数や医療費の増加に繋がるものとして、国が、国保財政に与える影響や、限られた財源の公平な配分等の観点から、増加した医療費分の国庫負担を減額調整するものです。
 ご質問の令和元年度決算見込みにおける本県での国庫負担減額調整措置の額は、重度心身障害児(者)医療分で、約3億7,880万円、ひとり親家庭医療分で約7,360万円、子ども医療分で約3,860万円、老人医療分で約60万円の合計約4億9,160万円となっています。
(2)知事会の「提案・要望」を踏まえての和歌山県としての考え方
《質問》楠本文郎 県議
 こうした実情が全国的に広がっている中で、全国知事会は先ほどの提案要望を行っていると思うのですが、この知事会の提案・要望を踏まえての和歌山県としての考え方をお示しいただきたいと思います。

《答弁》 福祉保健部長
 国民健康保険における子どもに係る均等割は、国民健康保険制度が被保険者全体の相互扶助で支えられていることから、応分の保険料を負担していただく必要があるため、世帯員数に応じて、均等に賦課されているものであります。
 このため、子どもの数が多いほどその世帯の保険料負担が増加し、子育て世帯の経済的負担が大きくなります。
 子どもを安心してもつことができるよう、子育て世帯への経済的支援を充実するため、また、他の健康保険制度では実施されていないことから、医療保険制度間の公平性を図るためにも、国において、子どもに係る均等割保険料の軽減措置を導入することが必要と考えています。
 国庫負担減額調整措置についてですが、地方単独医療費助成は、所得制限など、一定の条件のもとで、窓口負担の一部を助成することにより、経済的負担を軽減し、必要な医療が受けられるようにすることで健康の保持と福祉の増進を図るものとして実施されています。
 これらの取組は、生活上の困難が生じても、安心して生活を続けられるようにするためのものであり、国は責任をもって取り組む必要があると考えており、国庫負担減額調整措置の廃止が必要と考えています。
 以上のことから、子どもに係る均等割保険料の軽減措置の導入や国庫負担減額調整措置の廃止とともに、国の負担率の見直し等安定的な財政運営のための方策を講じることを、これまでも全国知事会を通じて国に要望しているところですが、今後も引き続き要望してまいります。

《要望》楠本文郎 県議
・世の中には「保険」と名の付くものはたくさんあります。これらの基本は相互扶助です。ところが、この国民健康保険は、違います。
・そもそも国保に国庫負担が導入されているのは、国保が「社会保障として運営されている」ことを意味しています。この点が他の保険と全く違うところです。
・貧困問題は、自己責任で起きるものではない。自己責任や家族・地域の助け合いだけでは対応できない貧困、病気、失業など様々な問題に対して人類の英知として生み出されてきたのが社会保障だと思います。今のコロナ禍における対応はまさにこうした対応をしてきていると考えます。
・それゆえ、基礎自治体からの声を反映し、国の責務として国保に初めて「傷病手当」が創設され、急激な収入不足による国保の減免措置を、被保険者や市町村負担ではなく、国庫で負担をして減免・減額措置をとっているのでないでしょうか。
・今後、コロナ感染拡大を防ぐ措置がさらに前進して、あらためて医療状況が把握されると思います。そうした中で、基本的な生活が営める前提としての社会保障である国民健康保険がさらに前進するよう求め私の一般質問を終わります。



                                             環境生活部長の答弁を聞く、楠本文郎県議(右)

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