2021年6月県議会 楠本文郎 一般質問 概要記録

   録画中継

2021618

1.日高川流域治水プロジェクトの具体化について
(1)「流域治水プロジェクト」とは
(2)地域住民代表の知見をいかす

2.風力発電所問題、その現状と課題について
(1)洋上風力発電について
  ・事業者向け説明会の実施状況について
  ・企業の関心と動向について
  ・パシフィコ・エナジー株式会社の手続の状況について
(2)陸上の風力発電に係る手続きについて
(3)白馬山脈における風力発電について
(4)健康被害についての県の把握状況
5)森林法に基づく許認可について

3.介護保険制度を持続可能にするために
(1)とても高い介護保険料の現状
(2)現場の介護人材は深刻な不足
(3)介護保険20年、原点に立って


1.日高川流域治水プロジェクトの具体化について
《質問》楠本文郎 県議
 国土交通省は、「流域治水」に関する地域での取組を推進するため、河川整備に加え、流域のあらゆる関係者が協働して行う対策も含めた治水対策の全体像を「流域治水プロジェクト」として各水系でとりまとめ、全国一斉に公表しました。流域治水プロジェクトは、近年の気候変動による災害の激甚化、頻発化を踏まえ、上流、 下流、本川、支川の流域全体を俯瞰し、河川整備、雨水貯留浸透施設、土地利用規制、利水ダムの事前放流など、治水対策の全体像をとりまとめた初めての取り組みだと説明されています。
 全国109の一級水系を対象に、和歌山県では、紀の川水系、新宮川水系で取り組まれ、二級河川では全国で12カ所、県内では二級河川としては日本一長いとして日高川水系が取り上げられています。
 6月3日、県は管内7市町や関係機関で構成する日高地域における大規模氾濫減災協議会を開き、この協議会の中で、「日高川流域治水プロジェクト」最終案を承認、策定したと報道されています。
 早速、公表されている資料を読ませていただいて、以下の質問をいたします。
(1)「流域治水プロジェクト」とは
 まず「流域治水プロジェクト」と銘打つことの意義を示していただきたいと思います。と申しますのは、このプロジェクトは3つの柱が示されていますが、その中には、これから取り組むもののほか、すでに取り組みが完了したもの、着手を始めたものもたくさんうたわれています。この中には、地域の意見・要望となっていることがたくさん含まれています。例えば、1つ目の柱は、「氾濫を出来るだけ防ぐ・減らす対策」です。その具体的中身は、今年度で言えば補正予算も含め9億7000万円も計上されている西川河川整備や、下川放水路整備などが位置づけされています。
 これらに関しては和田川樋門の活かされ方はどうなるか。また、その上流の千貫樋門の改善が進めば東裏川の流下は進むが和田川との競合は心配ないのか。その際の西川の流下能力と海水の満潮・干潮時の差はどうなるか。また、千貫樋門の上流の改善までに上流域の砂利の浚渫が必要になっている。さらに、下川放水路計画は2000万円の調査費が付いて歓迎されていますが、御坊市内の浸水対策としても、西川だけでなく他の河川への負担軽減のためにも優先してほしいといった意見など、たくさんの地元からの意見をお聞きしています。
 2つ目の柱は、「被害対象を減少させるための対策」です。ここでは、農業振興地域の農業転用の監視、二線提の保護などが位置付けられていますが、その内容では、二線提の保護にすぐ着手してほしいという意見、土地利用規制の検討をのぞむ意見もあります。
 3つ目の柱は、「被害の軽減・早期復旧・復興のための対策」です。この内容としては、すでに市町で完成してきているハザードマップ、防災ナビアプリの普及啓発や水位計や監視カメラの設置などが位置付けられていますが、このジャンルでは日高川の支流域にも水位計が必要だという意見もお聞きしています。
 本会議場はこうした具体を議論することにはなりませんので、個別に回答を求めるものではありませんが、「流域治水プロジェクト」と、これまでの「日高川水系河川整備計画」との関係を整理していただけたらと思います。
 もう一つの角度は、この「流域治水プロジェクト」と、これまでの「日高地域の減災に係る取り組み方針」との関係を説明いただきたいと思います。
 日高地域等における大規模氾濫減災協議会では、「日高地域の減災に係る取り組み方針」について、今年令和3年が5か年計画の最終としてまとめ、あらためて5か年計画を策定していくというタイムスケジュールを示しています。今年度は、「取り組みが完了した項目」、「継続的に実施する項目」、「新規に実施する項目」の3つにふるい分け、取り組み方針の改定を行うとされています。どのような改定内容になるのでしょうか。

《答弁》 県土整備部長
 まず、1つ目の流域治水プロジェクトと銘打つことの意義については、日本一長い二級河川の日高川において、治水に寄与するハード及びソフト対策、対策の実施主体、スケジュール等を関係者の間で共有することにより、協力体制をより強固にし、治水対策を加速化させることです。
 2つ目の河川整備計画との関係については、河川整備計画に基づく治水対策がこの流域治水プロジェクトに含まれます。
 3つ目の日高地域の減災に係る取組方針との関係については、本取組方針に基づき作成した浸水想定区域図やこれに基づくハザードマップ、避難指示の発令に着目したタイムライン等がこの流域治水プロジェクトに含まれます。
 なお、本取組方針の改定内容については、今般の日高川流域治水プロジェクトの策定にかかって出た様々な議論を踏まえて、現在、検討しているところでございます。

《再発言》楠本文郎 県議
 基本的にこの間に連続してマップが届けられています。これが2014年の津波防災マップというで、市町の仕事になっています。私が住む家は海岸線ですから、これを待ち望んでいました。この津波と同じように、今出ているのは色は変わりましたが、これが洪水ハザードマップになります。この洪水ハザードマップに関しては、私が住む塩屋地域は何もない白色です。ところが、御坊市の中でも津波と洪水の2つに挟まれる地域が出てきます。それが、日高川流域の中でも御坊河北地域とよばれる所で、堤防が崩れないか、決壊しないか大いにかかわるので、どうやって逃げればよいかも含めてハザードマップが作られてきた経過であり、市町の仕事です。
 その次に、最近ため池マップがどんどん出てきました。国や県管理の大きなため池はこれまでもずっと出されていましたが、これは地域が管理しているため池も含めて、市の農林水産で作成され、全戸に配られています。
 そういう蓄積の上に、昨年から予備的に質問させていただきましたが、流域治水プロジェクトというネーミングがが突然現れて、今年の3月にこれからこれでやっていくという形になってきたので、頭の中を整理すると同時に、部長が答弁されました、住民はどうしたらいいのかという所がポイントだと思いますいので、その出発を御坊・日高、それから日高川流域だけでなく、他の近くの河川も含めて考え方を示していきましょうという方向になっていると思います。
 そういう共通理解をこれから広げていくことが、今何より大事だと思います。

(2)地域住民代表の知見をいかす
《質問」楠本文郎 県議
 以上の点を前提に、今現在の専門的知見の総合的評価を県市町職員が共有することはとても大事なことだと考えます。その上に、これからはそれを地域住民にどのように理解してもらい、住民自ら主体となって豊かにする営みが必要だと考えます。
 地域により課題の共通項と相違があることを前提に、課題の大きい地域からワーキングチームを作って検討と実践を積み重ねることが必要だと考えています。ちなみに、私は昨年来、御坊市全体で2回目の防災シンポジュウムを開き、地域住民の生の声をお聞きしました。さらに広域的な集会では焦点が定まらない場合があることもわかり、より小さな範囲での地域懇談会的な聞き取りもしてまいりました。先ほど申し上げた具体的な事柄はそうした中で出されたご意見です。
 その中で感じたことは、町内会長さんや町内会連合の対策会のみなさんの経験上持っている知識の豊かさでした。生活の知恵とも言うべき知見を「流域治水プロジェクト」の中にいかさない手はないという思いです。
 洪水に対する地域の防災力向上のためには、計画の策定段階はもとより、事業を実施していく段階においても県と市町も地域の意見を聞きながら検討を重ねていくことが重要だと考えます。この考え方について県土整備部長の方からのご答弁をお願いいたします。

《答弁》 県土整備部長
 議員ご指摘のとおり、治水計画の策定やその実施にあたっては、地域住民の意見を踏まえることも重要であると認識しています。これまでも、例えば平成28年3月に策定した日高川水系河川整備計画の策定段階においては、地域住民の代表等により構成される日高川を考える委員会の計4回にわたる開催や、32日間にわたるパブリックコメントの実施により、地域住民からの意見を広く聴取したところでございます。
 また、実施段階については、例えば令和2年10月15日に御坊市野口(のぐち)地区で開催した護岸の洗堀対策にかかる説明会など地元住民との意見交換を通じて、まさに地元住民が把握している地理的な知見や被災体験に基づく地域独自の取組みや工夫等の把握に努めているところでございます。つきましては、日高川流域治水プロジェクトの実施にあたっても、地域の方々の意見を聞きながら、市町と連携して、洪水に対する地域の防災力向上に努めてまいります。

《再発言》楠本文郎 県議
 策定段階でも地域住民の意見を聞き、流域治水と非常に大きな視点で取り上げた中でもしっかりと意見はお聞きしていきますという基本的なご答弁をいただきました。
 私は県議会に来る前に町内会長をやっていました。町内会長は行政からすれば少しうるさい存在、ここを直してほしい、これをしてほしい、これが願いだという形でやっていくと、県の県土整備部、日高振興局は直す人という関係になっていきます。しかし今の雨の降りようはそんなことで河川さえ堤防強化すれば治まる範囲を超えてしまったのが、昨年・一昨年・先一昨年から続いているたくさんの河川氾濫です。今までの日高川河川整備計画で積み上げてきた計画は全部やりあげますが、やったからといって今後洪水が起こらないとは限らないわけです。それを地域住民にも知ってもらい、その時にどうするのか、各地域地域でしっかり検討していきましょうと、逃げるとなればこの道を直す必要があるということも共同でできてくると、そういう点では国・県・市町村という行政機構と住民組織が共通の理解を持ち合うことがまず大事で、その共通理解の上に立った役割分担というイメージを持ちました。答弁ただいた中では、ほぼ間違いはないと思いました。今後ともしっかりとピンポンをやりながらその方向で進めていけたらと思います。
 先日、避難指示を出しても中々地域に届かない、避難した人が1割・2割だったということが、色々な新聞にたくさん取り上げられていました。警報とは何なのか、集団で逃げるとは何なのかということも、今の話の中に入れていただきたいと思います。


2.風力発電所問題、その現状と課題について
《質問》楠本文郎 県議
 大きな項目の2点目に風力発電所問題についてお尋ねします。
 地球環境問題から見た再生可能エネルギーとしての風力発電所は、必要不可欠なものと考えます。しかし、どこでも問題なく建設されても良いはずはありません。気候変動の下でも生活できる自然環境を守るために必要なのが「再生可能エネルギー」ですから、この定義からも自然環境と生活環境が壊されるようなことは行わないのが大前提だと思います。
(1)洋上風力発電について
 まずは、洋上風力発電事業についてです。2月議会で質問をし、答弁をいただいていることを前提に、端的に質問をさせていただきます。
 「和歌山県洋上風力発電に係るゾーニングマップ及びゾーニング報告書」の事業者への提供について、商工観光労働部長から「エネルギー関係事業者など数社が関心を持っており問い合わせ等をいただいている。また、事業者向け説明会を開催するなどにより周知を図る」というお答えをいただきました。
・事業者向け説明会の実施状況について
 この項目の質問の1つ目に、この事業者向け説明会の実施状況について、商工観光労働部長にお伺いしたいと思います。

《答弁》 商工観光労働部長
 令和3年2月26日にゾーニング報告書を公表し、令和3年3月12日に「洋上風力発電に係るゾーニング事業者説明会」を開催いたしました。説明会には、エネルギー関係事業者、ゼネコン、商社、メーカー、コンサルタントなど約60名のご出席をいただきました。

・企業の関心と動向について
《質問》楠本文郎 県議
 2つ目に、全体としては2月議会における知事の答弁が県としての基本スタンスですが、だからこそ、県の姿勢を承知の上で企業がどんな関心を寄せているのかは、今後の動向でとても注目をしています。現状において、企業の方々がどのような関心を寄せておられるのかを、商工観光労働部長からお答えをいただきたい。

《答弁》 商工観光労働部長
 令和3年2月定例会において知事からも答弁しましたように、本県周辺の海域につきましては、黒潮の流れが速く、過酷な気象、海象条件である上に、海そのものが観光資源となっており、自然公園や世界遺産からの景観や、騒音による生活への影響など様々な環境上の配慮が必要です。この他、漁業者の活動や船舶の往来なども非常に活発な海域でもあります。
 事業者の皆さんとしても、どの海域にどれほどの懸念があるのかをまず把握されたいということで関心も高く、説明会の後も随時お問い合わせ等があるため、ゾーニング報告書をもとに説明をさせていただいております。

・パシフィコ・エナジー株式会社の手続の状況について
《質問》楠本文郎 県議
 3つ目に、ゾーニングマップ完成前に、すでに環境影響評価法にもとづく手続きを開始している、パシフィコ・エナジー株式会社の手続きの状況を、この点は環境生活部長の方からお答えいただきたいと思います。

《答弁》 環境生活部長
 環境影響評価の手続を大きく区分すると、「配慮書」、「方法書」、「準備書」、「評価書」の順に4つの段階があり、ご質問のあったパシフィコ・エナジー株式会社が進めている洋上風力発電事業については、「配慮書」の手続を令和元年8月に終了しています。

《再発言》楠本文郎 県議
 洋上風力発電でも知事の答弁は、私の地域でもとてもインパクトのある答弁になっていまして、「かなり難しいんやな」というような一言が返ってきます。しかし、事業者説明会に60名の方々の参加があり、可能性を考えるから説明を聞きに来るわけですし、その後も問い合わせがたくさんあるということです。そのもとで答弁があったのは、配慮書は終了しているということです。あの配慮書は、ゾーニングしたところで、とてもつくられるような場所ではないというところまでやっています。日高町の黒島から新宮市まで県がせっかくゾーニング調査しているので、あの配慮書は最初から出直しだと思いますが、手続き上は終わっているというのが今のご答弁です。
 洋上風力については、地元ではもう終わった話のように受け止められていますが、重大な関心をもって対応してまいりたいと思います。

(2)陸上の風力発電に係る手続きにについて
《質問》楠本文郎 県議
 次に、陸上の風力発電所問題について、いくつかに分けてお尋ねしていきます。
 まず、陸上の風力発電所は、県内にすでにたくさん稼働されています。すでに稼働している事業の現状と、現時点で環境影響評価法にもとづく手続き中の事業数についてお示し頂きたい。
 2つ目に、個別問題に入ると稼働しているところもありますが、今現在、環境影響評価を事業者が提出している段階の事業の固有名詞はほんらい仮称扱いですが、この質問ではこの仮称という表現は省かしていただきます。このうちの「海南・紀美野風力発電事業」が4月20日、有田川町に事業計画の変更を伝達して「有田川・海南発電事業」になったということです。設置予定範囲を見せていただいて、とても継続性があるとは思えませんでした。ところが、環境影響評価では、方法書の段階から準備書に進められようとしています。一段階の進展になります。私は始めからやり直しをすべきだと思いますが、法律上どのような変更になれば手続きのやり直しなどの状況になるのでしょうか、お答えください。
 3つ目ですが、「地元同意」についてです。
 これは、他の事業でもくり返し疑問に思っていることですが、陸上における風車という建造物の場合、地権者の同意は当然のことですが、隣接者の同意、もしくは影響を受ける「地元」という表現の同意のあり方がしばしば問題になります。環境影響評価法における、これらの「同意」の必要性についてお答えください。

《答弁》 環境生活部長
 まず、現在稼働している陸上風力発電事業の現状につきましては、環境影響評価法の対象規模である、出力7,500キロワット以上の事業が7事業、発電機総数97基、合計出力が163,250キロワットとなっています。また、6事業が環境影響評価法に基づく手続中となっています。
 次に、環境影響評価の手続をやり直す必要があるケースは、出力が10パーセント以上増加する場合、又は300メートル以上離れた区域が新たに対象事業実施区域となる場合とされていますが、出力や区域を縮小する場合は必要ありません。
 最後に、地元同意につきましては、環境影響評価法において地権者、隣接者及び影響を受ける「地元」等の同意を必要とされていません。

《再発言》楠本文郎 県議
 皆さんに資料を付けさせていただきました。一つは和歌山県風力発電事業の現況という一覧表ですが、上が現に稼働している発電所、下が事業計画中の陸上と洋上です。注目していただきたいのは、上から稼働した順番になっていますが、短期出力が1,000kWのものが2,100kW、計画中のものになると4,500kWが15基です。馬鹿でかいものが後々出てきます。
 この地図を見ていただきたいのですが、日高川町の管内図を用い、町からみてウィンドファームがどうなっていくかという地図にしてみました。白馬ウィンドファームというのが、高速道路にのると日高川町役場から由良へ抜ける所に出てきます。これが20基あります。そこからは広川・日高川ウィンドファームは見えません。そこから次に登っていく形になる中紀ウィンドファームは2,100kW23基が竣工予定というのが2月26日時点ですから、4月に竣工されている中に入っています。
 そして今、環境影響評価が出てきているのが中紀第2ウィンドファーム4,300kW12基という真ん中の鉛筆で丸囲ったものです。右側に大和エネルギー、DREAM Windという名称でこういう形になるのかなということを入れてみました。
 そうしてみて、これはえらいことだというのが質問の動機です。

(3)白馬山脈における風力発電について
《質問》楠本文郎 県議
 白馬山脈の尾根伝いに、今年4月から稼働を始めた「中紀ウィンドファーム」の23基があります。
 そしてさらに、尾根伝いに4,300キロワットもの馬鹿でかい風車を12基建設するという計画が「中紀第二ウィンドファーム」です。さらに尾根伝いに登っていくと、連続する形で「DREAM Wind和歌山有田川・日高川発電事業」という事業計画があります。ここは3,200キロワット、11基の計画です。これをきれいとみるか、すさまじい環境破壊とみるか、事実を正確に把握し、その自然に与える影響をつぶさに考察し、何より近くで住み続けている住民の声が反映されなければならないと感じています。有田川町、日高川町からも地元自治体からの意見が出されています。この過程には、住民説明会においての住民の反発も含まれていると思いますが、私にはこれらの事業者がこうした意見に真摯に向き合っていると思えません。より厳しく対応せざるを得ないのではないかと感じます。
 1昨年8月に「中紀第二ウィンドファーム事業」の方法書について、知事意見が述べられています。また、昨年9月には「DREAM Wind和歌山有田川・日高川発電事業」の配慮書に対しても知事意見が出されています。それぞれの知事意見の基本的な考え方をお示しください。

《答弁》 環境生活部長
 白馬山脈については、東に向かって自然度が高く、貴重な動植物の生息域が残っていることから、この区域における事業は自然環境に重大な影響を与える可能性が極めて高いと考えています。また、この地域で既に稼働している風力発電施設よりさらに東側に、中紀第二ウィンドファーム事業とDREAM Wind和歌山有田川・日高川風力発電事業が計画されており、発電施設が立ち並ぶことによる累積的な影響も懸念されます。
 現在、地球温暖化対策や資源循環の観点から再生可能エネルギーの導入が進められていますが、それはあくまで自然環境や生活環境との調和を前提としたものでなければならず、そうでないものは是認できません。このような考え方を踏まえ、両事業の配慮書及び方法書に対する知事意見では、天然林等の自然度の高い植生の伐採を避けること、騒音等に関して住居から十分な離隔距離をとることなどを求めています。
 加えて、重大な環境影響を回避又は十分に低減できない場合は、中紀第二ウィンドファーム事業については、区域の見直しや基数の削減を、DREAM Wid和歌山有田川・日高川風力発電事業については、事業の廃止を含め事業計画の抜本的な見直しを求めています。

《再発言》楠本文郎 県議
 知事の意見はとても重いものだと考えます。中紀第2についても、DREAM Windについても、繰り返し引いてみると、累積という言葉も含めとても重い意見が出されていることがよく解りました。この審査が住民にとって健康や生活を壊されることがないのか、人間が住めるような自然が壊されることがないのかという立場から審査されるという受け止めで置いておきます。

(4)健康被害についての県の把握状況
《質問》楠本文郎 県議
 今まで設置された風力発電事業において、少なからず健康被害を訴える方々がおられます。このことは、私の先輩の雑賀元県議がこの問題をくり返し取り上げてきたところです。
 白馬山脈の尾根伝いにこの4月から稼働されている「中紀ウィンドファーム」については、そのような訴えは出ていませんか。県の把握はどのようになっていますか。あわせてお答えください。

《答弁》 環境生活部長
 中紀ウィンドファーム事業に関し、周辺地域の住民の方から騒音の訴えがあることは把握しております。
 このことから、現在、事業者と地元区の間で締結された覚書に基づき、事業者が騒音の測定を実施しているところであり、その結果に基づき、事業者において必要な対策が講じられるものと考えております。

(5)森林法に基づく許認可について
《質問》楠本文郎 県議
 この項目の最後に、尾根伝いを登っていくこれらの計画は、白馬山脈の尾根という山の頂を連続して削り、大量の土砂を流出させ、山の保水力を奪うことになるのではないか。私には、こうした計画は、白馬のお山の頭からはつっていくように見えます。自然環境への負荷をたくさんかけることになるこの計画は、森林法に基づく林地開発許可が必要な問題ではないかと思います。
 そこで、これまでにこの地域に設置した風力発電所施設は、どのような許認可が行われたのか、またこれから設置する風力発電所施設は、どのような手続きが必要となるのか。この点は、農林水産部長からお答え願います。

《答弁》 農林水産部長
 風力発電施設の設置に係る森林法の許認可についてですが、地域森林計画区域内で開発行為の規模が1ヘクタールを超える場合は、「和歌山県林地開発許可制度事務取扱要領」に基づく林地開発の許可が、また、保安林に指定されている場合は、国で定められた「森林法に基づく保安林及び保安施設地区関係事務に係る処理基準」に基づく保安林指定の解除のいずれかが必要となります。
 白馬山脈で既に設置されています「白馬ウィンドファーム」及び「広川・日高川ウィンドファーム」につきましては、林地開発の許可を行い、「中紀ウィンドファーム」につきましては、一部に保安林が存在していたことから、林地開発の許可及び保安林指定の解除を行っています。
 次に、現在計画されています「中紀第二ウィンドファーム事業」及び「DREAM Wind和歌山有田川・日高川風力発電事業」につきましては、計画区域が保安林に指定されていることから、保安林指定の解除手続が必要になりますが、現時点では、事業者から保安林解除の申請はなされていません。
 県といたしましては、天然林等の自然度の高い森林が有する公益的機能や自然環境上の価値は重要であり、保全すべきものと考えています。
 したがって、これらの機能や価値を毀損するような望ましくない開発行為に対しては、法的規制等に照らしつつ、厳格な審査を行い、事業の見直しや中止を求めることも含め、断固とした対応で臨む所存です。

《再発言》楠本文郎 県議
 重みのある答弁をいただいたと思います。厳格な審査や中止を求めることも含める、断固としてと、知事の思いも込められていると受け止めてこの質問を終わります。


3.介護保険制度を持続可能にするために
《質問》楠本文郎 県議
 コロナ過の下で、介護の現場は疲弊しています。今、介護をめぐる一番の問題は、コロナ感染症対策です。この点では、高田質問にあったように、特別の対策を求めたいと思います。
 私の質問では、住民負担になる介護保険料・利用料の問題、サービスを提供する介護事業者とその従事者の問題などについてお尋ねしていきたいと思います。
(1)とても高い介護保険料の現状
 2000年に介護保険制度がスタートして、20年を超えました。出発時点の県内の介護保険料の平均は、月2,910円でした。今年は第8期目の出発の年になりますが、月額は県下で6,541円、2.25倍となり、もはや限界を超えたと言われています。「少ない年金から、介護ひかれて大変や」「年金が減らされて、介護は上がる。これからどうなるんやろう」という声がたくさん聞こえてきます。
 御坊市では「保険あって介護なし」の状況にしてはならないと、この20年奮闘してきました。特に認知症の方に寄り添うため、認知症のご本人を主人公とした市条例を作って取り組みを重ねてきており、市民の信頼も高くなっています。一方で、「介護保険料も県下で一番高くなった」とおしかりを受けるという状況にあります。これは別々の問題を一緒にしていますし、御坊市の保険料が高くなっていることには、市の分析が必要な問題もあります。しかし、行政や高齢者施設が介護をしっかりやったら、介護保険料が高くなる。高齢者から考えると、介護のサービス提供を受ければ利用料が必要となり、保険料・利用料の負担が大変、というジレンマを持ちます。
 今年度から始まる、第8期介護保険料が高くなっていることをどう捉えているのか、福祉保健部長からご答弁をいただきたいと思います。

《答弁》 福祉保健部長
 本県では、要介護認定率が全国で最も高く、保険料も4番目の高水準にあることから、市町村とともに体操教室やサロンなど「通いの場」を充実させることで元気な高齢者を増やし、健康の保持を図る「介護予防」を推進するとともに、介護の必要度が低い軽度な方を対象に、自立につながる適切なケアプランを検討するための「地域ケア個別会議」の実施を、全ての市町村に拡大させ、ケアプランに適切なリハビリテーションを反映させるなど「自立支援」の取組を推進してきました。
 このような取組の結果、第7期の介護保険事業支援計画で想定していた、要介護認定者数やサービス利用量が見込みを下回ることができ、これまで右肩上がりで上昇していた県平均保険料は、第8期において月額6,541円と、前期に比べ3円増とほぼ横ばいとなっています。
 ただし、介護保険料は、団塊ジュニア世代が65歳以上となる2040年には、約9,600円まで上昇が見込まれることから、上昇の抑制のため、引き続き「介護予防」や「自立支援」に取り組むことが重要と考えています。

(2)現場の介護人材は深刻な不足
《質問》楠本文郎 県議
 全国的な統計では、ホームヘルパーの年齢構成は60歳代以上が4割を占め、20歳代は4パーセントにすぎないと言われています。ヘルパーの高齢化が問題になっているというのは和歌山県でも同様ではないかと思います。全国的にはヘルパーだけでなく介護職員の高齢化となり、若い方の職場定着率が低いなどと言われているところです。和歌山県内の介護職場で働く人材はどのような状況になっているでしょうか。ハローワークによりますと、令和2年度和歌山県内の有効求人倍率は全業種の0.92に対し、介護関連職種は2.99となっています。担い手不足は歴然です。
 なぜ介護の担い手が不足しているのでしょうか。私の身近なところでも、「一日の勤務の中でもきつい肉体労働になる。交代制で夜勤もあり、休日が保障されずそれで体調を崩した」「肉体的、精神的に過酷な労働やよ」「シングルマザーとして今の給与ではやっていけない」「もう少し大事な仕事をしているという給料が欲しい。待遇よくしてやると言われて久しい。期待して待ってるけど・・・」と言う話をたくさんお聞きしてきました。
 介護職はスキルと専門性、高齢者や障害者の「尊厳と人権」を守る職務ですが、その必要不可欠の役割が認められていないようにさえ思います。しかし、こうした状況を改善するために、対策も取られてきているところだと思いますが、賃金格差は改善されてきているでしょうか。和歌山県の処遇改善の取り組みはどうでしょうか、お答えをいただきたい。
 さらに、全体としての介護人材の確保というテーマを持ってさまざまな改善策を具体化されていると思います。以上2点について福祉保健部長からのお答えをいただきたいと思います。

《答弁》 福祉保健部長
 全国における、令和2年度の訪問介護員の給与額は月額約26万円と、全産業の平均よりは約7万円低くなっていますが、平成21年度の給与額と比べると、約5万7千円改善されています。これは、平成21年度から4次にわたる、処遇改善による引上げによるものです。
 介護職員の処遇改善については、国が定める介護報酬の中で措置されているものであり、また、令和元年10月から始まった更なる処遇改善について、介護報酬の加算制度を取得している事業所の割合は約6割強に留まっていることから、県としては引き続き、事業所に対する説明や指導、社会保険労務士による個別助言など、必要な支援を行ってまいります。
 次に、県における介護人材の確保に向けた施策については、高校生が無料で介護職員初任者研修を受講できる取組や、返還免除付きの介護福祉士修学資金の貸付等により、介護職場への参入促進を図るとともに、介護ロボットやICTの導入支援等により、労働環境の改善と離職防止を図るなど、総合的に取り組んでいるところです。
 なお、介護人材を安定的に確保するためには、介護職への理解促進とイメージアップ、処遇改善が重要であることから、全国知事会等を通じて、国に対し引き続き要望してまいります。

(3)介護保険20年、原点に立って
《質問》楠本文郎 県議
 国会で介護保険法が可決されたのは1997年、当時の世論調査では国民の8割もの方がこの制度の導入を支持しました。背景は、「介護地獄」とも呼ばれた家族の介護負担がありました。とくに妻・嫁・娘など、もっぱら女性が家族の介護を担わせられるという苦しみと理不尽さがありました。それゆえ、「介護の社会化」によって解消するという理念に多くの国民が期待を寄せていたと言えます。
 この原点をもう一度再確認しなければなりません。保険料・利用料の負担は限界という高齢者の叫びがますます大きくなる中、「介護の社会化」を持ち続けるためには、制度設計の出発である国費の負担割合を引き上げることが必要だとの認識が圧倒的となっています。介護保険制度の持続化のために県としての取り組みについて福祉保健部長にお伺いしたいと思います。

《答弁》 福祉保健部長
 介護保険制度は、介護を必要とする高齢者を家族から社会全体で支えるため、それまでの行政主導の措置制度から、利用者がサービスを選択できる公的保険制度として、平成12年度に創設され、現在、県内で約6万8千人が利用する、暮らしに欠かせない制度として、浸透・定着しています。
 当制度の財源は、介護サービスの利用者が原則1割を負担し、残りを40歳以上の保険料と国・県・市町村の公費で半分ずつ賄っており、65歳以上の保険料については、保険者である市町村が介護サービスの見込量を推計し、独自に設定することになっています。
 県では、現行制度の持続性を高めるため、先に申し述べましたとおり、市町村とともに、介護予防や自立支援の取組を推進しています。
 ただし、一方でこのような取組によっても、高齢化の進展に伴い、今後も上昇が見込まれる保険料を抑制することには限界があることから、国の責任において、恒久的な保険料の軽減措置を講ずるよう、国に対し要望しているところです。



                         環境生活部長の答弁を聞く、楠本文郎県議(右)
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