2021年9月和歌山県議会 楠本文郎 一般質問 概要記録

   録画中継

2021915

1.新型コロナウイルス感染症対策の現状と課題について

2.流域治水プロジェクトの今後の課題について
(1)流域治水関連法成立以降の現在の状況について
(2)椿山ダムの放流操作について
(3)日高川河川整備計画の今後の力点

3.国民健康保険料(税)に関する現状と課題について
(1)国保の構造的問題について
(2)市町村保険料(税)水準を統一するための課題
(3)子どもの均等割額を国保料(税)に課さない

4.GIGAスクール構想について


1.新型コロナウイルス感染症対策の現状と課題について
《質問》楠本文郎 県議
 全国各地で、第5波と言われる新型コロナの新規感染者数が急増し、感染爆発、医療崩壊が深刻になっています。私たち日本共産党は政府に対し、今求められているのは命を守ることを最優先にした対応であることを具体的に繰り返し緊急提案してきました。
 しかし、感染者の急増の中で8月3日、政府が重症患者と重症化リスクの高い患者以外は「原則自宅療養」という重大な方針転換を行ったことは、コロナ患者を事実上「自宅に放置」する無責任きわまるものです。「中等症は原則入院」との「説明」で修正しましたが、「原則自宅療養」という方針を撤回している訳ではありません。結果、圧倒的多数の患者が「自宅療養」を余儀なくされ、手遅れで亡くなったり、重症化したりする方が後をたたない事態が報道されています。政治が招いた重大な人災だと言われています。
 和歌山県でも第5波はかつてない患者数の増大になりました。ただ取り組む姿勢が違いました。9月8日の知事会見を少し引用させていただきます。
 「依然として全国的に新型コロナウイルスが猛威を振るっていまして、和歌山県でも保健医療行政が感染の拡がりを食い止め、病院が100%感染者の面倒を見、県民にも自粛という不自由を耐えてもらって頑張っているのですが、ウイルスの力も強く、先行きはまだ予断を許しません。(中略)
 日本のように感染症法や保健所という道具のある国では、抑制実効性の乏しい人流抑制にだけ頼るのではなく、保健医療行政の立て直しにも大きな関心を持ってもらったら、日本全体が随分違うと思います。和歌山県も今は少し人流抑制も加味していますが、本来はまず、保健医療行政の充実で感染者を抑える。次は、それでも出てしまった感染者は病院の協力を得て全員入院で命を助ける。また併せて入院することで家族などに余計に感染させないようにする。その次に、これらの対策で持たなくなってきたら、人流抑制で対策を強化するという方式をずっと取ってきました。その結果、大都市のすぐ近くで感染の要因が多い所ですが、他よりもかなり少ない感染者数で食い止め、そうすると全員入院がかろうじて何とか達成できるという形になっています。(中略)
 対策の順番は(1)保健医療行政による感染の封じ込め(2)病床の確保(3)人流の抑制で、その逆ではありません。」と説明されています。納得できる方針、説明です。
 こうしたもとで、和歌山県でも病床が足らない状態にさせないために、さらに何が必要なのかを考えました。
 私たちは、感染伝播の鎖を断つための検査を「いつでも、誰でも、何度でも」の立場で、従来の枠にとらわれず大胆かつ大規模に行う。とくに感染拡大が顕著になっている事業所や、学校、保育園、学童クラブ等に対する大規模検査を、政府が主導して実行するべきだと言い続けてきました。感染力が強い変異株だという特徴はもはや明白です。無症状感染者、初期症状感染者を見つけ出し保護、治療することは、いよいよ重要になっていると考えます。
 この点ではすでに、5月6日、「新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード」(第33回)の議事概要に、その会議の議題2、尾身構成員から「抗原定性検査を活用した検査戦略」という資料のもとで提案されています。
 この提案の目的のところでは、「本来、軽い症状であっても、症状を有する者は速やかに医療機関を受診することが期待される。しかし、実際には医療機関を受診せずに社会活動を継続している軽症状者がいることを踏まえ、本戦略によって、このような者について幅広く薬事承認を得た抗原定性検査の対象とすることで、対策をより早く打ち出し、クラスターの大規模化を防止したい。」としています。そして背景及び根拠の要約ですが、「職場等では倦怠感やのどの痛み等体調不良であっても働いている人が多いこと。抗原定性検査の性能に関するエビデンスが蓄積され供給量も増加していること。抗原定性検査は専用設備が不要で判定が迅速に行えること。抗原定性検査の感度は、PCR検査より低いが二次感染を生じさせるリスクの高い陽性者を見つける上では有効であり、ウイルス量が多い場合には感度が高いこと」などが述べられています。
 その方針は、6月4日には「新型コロナウイルス感染症病原体検査の指針第4版」としてまとめられています。そして政府分科会として、体調が悪いなどわずかでも症状のある人に短時間で結果が出る抗原定性検査を実施し、陽性であれば同じ職場の人全体にPCR検査を行うなどの手法を併用するなどの提案を行っている訳ですが、政府は「検討する」というだけでいまだに具体化していません。
 しかし、和歌山県では5月に高齢者施設に対し持ち込みを防ぐという観点から、集中的に抗原キットを使った検査に踏み切っています。これはこうした知見も含めてではないでしょうか。
 今後、感染症の広がりと、変化の現状認識をどんなにおさえるかが大事だと感じます。第5波は、デルタ株にほとんど置き換わったと言われています。このデルタ株に感染すると非常に感染力が強く、いったん家庭に持ち込まれると家族全員が感染するという状況になり、それが特に10歳代以下の年齢の若年者や小児の感染者の増加に繋がっています。
 第5波における9月8日時点の感染者2,257人と公表されています。年代別では20代以下は全体の45.8%、10代は14.9%、10歳未満は8.1%になると思います。
 私が特に感じるのは、日々県から公表されている感染者の中で、「無症状」の方がたくさんいることです。これ自体は、県として感染経路を追いかけ、濃厚接触者をかなり幅広くつかみ、無症状であってもPCR検査をかけるという積極的疫学調査を行っている証左ですが、「無症状」と「軽症者」の定義については明確な区分がないくらいの差ではないでしょうか。
 学校現場は感染者急増のもとで2学期が開始されました。すでに県内で休校、もしくは学級閉鎖の状況が出ています。こうした状況の中で、尾身氏が言われている「検査戦略」こそ必要だと考えます。
 そこで、福祉保健部長にお尋ねします。すでに和歌山県は、全国に先駆けて戦略をもって対処してきました。爆発的感染とクラスター防止のために、感染拡大が顕著になっている事業所などに対しての大規模検査を、地域・場所を限定してでも、この「抗原定性検査」を思い切って取り入れることをお願いしたいと考えます。ご答弁をお願いします。

《答弁》 福祉保健部長
 抗原検査キットについては、PCR検査と比べると精度は落ちるものの、専用の設備が不要で判定が迅速に行える手軽さから、感染リスクが高まっている局面において機動的に使えるという利点があります。
 そういうことから、第4波におけるとりわけアルファ株の影響により感染者が急増し、高齢者施設等で集団感染が複数件発生したことを踏まえ、県では、感染をより早い段階で発見するため、4月末から、特に高齢者施設等の職員が1週間に1回、定期的に検査ができる体制を強化し、県から各施設に対し抗原検査キットを配付したところです。
 その結果、職員5名に陽性反応があり、医療機関でのPCR検査の結果、2名の陽性が確定し、速やかに入院につなげるなど施設内での感染拡大を未然に防ぐことができたものと考えております。
 また、医療機関にも配付し、従事者から重症化リスクの高い入院患者への感染防止や救急等の現場での活用により院内への感染持ち込み防止にも役立てております。
 第5波においては、例えば、集団感染が発生した飲食店と店舗周辺に対して積極的疫学調査と併せて、県から抗原検査キットをいち早く配付し、2名の陽性を確認できたところです。
 このように、県では今後も、感染拡大地域や施設への重点的な抗原検査キットの配付により、感染拡大の防止を図ってまいります。

《要望》楠本文郎 県議
 文科省もすでに動いているが、対象者をとても限定していると感じています。
 私の提案趣旨は、県作成の資料にある陽性判明時、発熱なしが60.6%という点です。その内31.7%は発熱以外の症状あり、つまりちょっとしんどいとか、風邪症状とか、味覚が変という程度の方ではないでしょうか、そして全く無症状が28.9%もあるいう点です。ところが、初期の頃の「37.5度以上4日間」という刷り込みがありますから、この程度では医者にかかれないというのが今もってある庶民の感覚です。この状況の方を、濃厚接触者の中でPCR検査をして拾い上げていることが和歌山県の優れていると評価されているところではないでしょうか。
 そしてその体制を保障しているのが、保健所体制の強化という方針なのではないでしょうか。この点でも支援体制がすごいから今まで当初方針を堅持していけたのだと思います。
 すこし、減少したとはいえ、次の波はまたやってくることは間違いありません。
 市町村段階でも、また学校関係でもこの抗原定性検査をやろうとしているところが出てきました。
 保育所や、学童への持ち込みや拡散をさせないために、県としての先行経験を活かしていただきますようお願いいたします。


2.流域治水プロジェクトの今後の課題について
(1)流域治水関連法成立以降の現在の状況について
《質問》楠本文郎 県議
 5月10日、流域治水関連法が、9本の法律改正として公布されました。その施行は公布から3か月又は6か月以内とされています。
 特定都市河川浸水被害対策法改正により、特定都市河川の指定対象に河道等の整備による浸水被害の防止が自然的条件の特殊性により困難な河川が追加されました。県として特定都市河川としての指定を検討されているのでしょうか。
 また要配慮者利用施設については水防法改正において、避難計画や避難訓練に対して、市町村による助言・勧告が可能となりました。水防法に基づく避難計画の策定、訓練の実施が必要な県内の要配慮者利用施設について、その状況をご説明ください。
 日高川水系は二級河川としてはいち早くプロジェクトが策定されましたが、有田川・日置川・古座川においてもこの8月に策定されたと公表されています。このほかの水系における策定予定についてもあわせて県土整備部長からご説明いただきたいと思います。

《答弁》 県土整備部長
 まず、1点目の特定都市河川の法指定については、現在、国において作成中のガイドラインを踏まえて、法施行以降に、河川毎にその指定の可否を検討する予定にしております。
 2点目の要配慮者利用施設における避難確保計画については、令和3年3月末現在、水防法に基づく洪水浸水想定区域内の対象施設数1,453施設のうち約6割の895施設が作成済であり、約5割の766施設が避難訓練済となっています。
 3点目の流域治水プロジェクトについては、今年度中に切目川水系など12水系について、作成する予定です。

《要望》楠本文郎 県議
 特定都市河川浸水被害対策法施工後に河川ごとに国が指定ということで了解します。ただ、避難計画は6割が作成済み。ということは、4割も避難計画がない。約5割は避難訓練も出来ていないということが答弁されました。これは大変なことで、具体的な施設は、市町村の助言・勧告が出来るということですが、「流域治水」という考え方に基づいて早期に対応されるべき事項だと思います。
 流域治水プロジェクトは今年度中に2級河川で県内16河川となるようですから、それぞれの河川に関わる地域で急ぎ対応されるよう要望申し上げます。

(2)椿山ダムの放流操作について
《質問》楠本文郎 県議
 2点目に、椿山ダムの放流操作に関してお尋ねします。
 10年になる紀伊半島大水害の一つの日高川洪水が思い起こされます。日高川椿山ダムは、この10年前を教訓にすでに平成24年6月全国に先駆けて事前放流の運用を導入したことが紹介されています。椿山ダムでは、平成26年・30年・令和元年の3回、すでに実績があるということです。
 実は、奇しくも10年になる今年の8月お盆の長雨が私はとても心配で「和歌山県河川/雨量防災情報」とにらめっこしていました。
 お手元の添付資料(流入量/放水量グラフ)をご覧いただきたいのですが、8月13日には、縦軸左側指標ですが、赤色折れ線の流入量が毎秒200トンから400トン程度だったのが、8月14日深夜には毎秒1,100㌧近くに跳ね上がり、緑色の折れ線の放流量も毎秒900トン近くまで増加しました。椿山ダム上流の降雨が多くなるとダムの貯水位は見ている間に191.7メートルに上がったことが青色折れ線の縦線右側指標でお分かりいただけると思います。下流でも大雨になっていましたから、不安になってきていました。しかし、幸いかな大雨はあまり継続せず、その後はさほど大きな雨がなく降ったりやんだりの降雨量になったおかげで流入量もさほど心配する程でなくなりました。赤色の流入量が少なくなると緑色の放流量が流入量を上回り、青色の貯水位が下がり始めます。
 青色の貯水位に注目していただきたいのですが、大きい山のあと下がり、そのあと小さい目の山が来ていますが、8月16日夜に流入量と放水量がほとんど同じになると、しばらくの間185.6メートル前後で調整されていました。椿山ダムは、平常時最高貯水位は206.5メートルです。洪水貯留準備水位は187.6メートルまでの治水域、夏期制限水位となっています。事前放流目標水位でもある最低水位は184.0メートルとなっています。
 今回のダム操作においては治水域の187.6メートルを超えて、184メートルまでの利水域の一部まで放流したことになります。8月13日からの椿山ダムの操作について県土整備部長からご説明をいただきたいと思います。

《答弁》 県土整備部長
 8月13日からの椿山ダムの操作についてお答え致します。
 今回は、操作規則に則り、流入量が毎秒600立方メートルに達した13日20時より、当該流入量を下回った15日17時40分までの約46時間にわたり、洪水調節を実施しました。
 水位調整にあたっては、利水者である関西電力株式会社と調整の上、夏期制限水位よりも低い貯水位を目標に放流し、洪水に備えました。
 その結果、最大流入量毎秒1,092立方メートルを観測した14日2時30分頃には放流量を毎秒886立方メートルまで調節でき、下流への影響を最小限に食い止めたものと考えます。

《要望》楠本文郎 県議
 操作規則に則っているとは言え、私の周りでは、今回の洪水調整は良い評判をいただいています。
 13日に日高川町一般質問で、椿山ダムの堆積土砂に関する質問がありました。平成元年8月豪雨での災害復旧として土砂の浚渫工事が行われており、その堆積土砂撤去を更に求める質問でしたが、その工事の関係で夏期制限水位を下回る185.6メートル前後での調整が関西電力との合意で行われたのだと思います。グラフの赤色の流入量の増加は一つの山で終わりません。特に椿山ダム上流の雨の多い広い流域を持っている日高川では、次の大雨が予想される気象状況の時には、早い目、早い目の洪水調整を行い、関西電力との合意を今回のような水準に持っていくことが出来るよう要望しておきます。

(3)日高川河川整備計画の今後の力点
《質問》楠本文郎 県議
 3点目に、日高川水系整備計画についてお尋ねします。西川の支川では、昨年度に堂閉川、今年度に下川の放水路が事業化されました。今後の予定についてお示しをいただきたいと思います。
 また西川については多額の予算が計上され、大幅に進捗しているところです。今年度は、寺田橋の架け替えとその少し上流の護岸工が整備されています。かなり進んできたことに期待が膨らむところですが、この整備が本当に威力を発揮するのはそのまた上流の斉川・和田川・東裏川の合流点を過ぎ、入山に入ってからではないかと思います。西川流域にかかる来年度以降の予算確保に向けてどのように取り組むのでしょうか。県土整備部長にご答弁をお願いいたします。

《答弁》 県土整備部長
 堂閉川については、河道を一部付け替えて斉川の下流に接続することで流下能力を高める計画としており、また完成までの暫定的な運用として、付け替え河道を貯留施設として活用することとしています。今年度は、付け替え河道のルートや断面の検討を進めているところです。
 次に、下川については、日高川へ接続する放水路を県道御坊停車場線の下に整備することで、浸水被害の軽減を図る計画としており、今年度より事業着手し、現在放水路の設計を進めています。
 県といたしましては、西川流域をはじめとするこれら日高川水系の河川整備に要する予算を確保するために、これまでと同様、政府提案活動など様々な機会を活用し、国や関係者に対し積極的に働きかけていく所存でございます。

《要望》楠本文郎 県議
 堂閉川の河道付け替え計画は本当に待たれています。今回のお盆での降雨量でも道成寺山門付近は道路への冠水がありました。でも一昨年「堂閉川河床の敷張り工事をやってもらったので、冠水の量も頻度も少なくなった」と言う地域の方の話はうれしいものでした。是非早期の付け替えに着手していただきたいと思います。
 さらに、日高川、西川の予算継続を重ねて要望しておきたいと思います。


3.国民健康保険料(税)に関する現状と課題について
(1)国保の構造的問題について
《質問》楠本文郎 県議
 国民健康保険法の一部改正により、平成30年度から保険者は県と30市町村になって3年目に入っています。この新制度では、県が財政運営の責任主体として中心的役割を担うこととされ、市町村は被保険者資格の管理、保険給付、保険料(税)の決定、賦課・徴収、保健事業などを担うことになっています。この役割分担のもと市町村と協同しながら、統一的な運営方針は県が定めることになっています。
 令和3年度からは、この運営方針は第2期になりましたので、その中で述べられている市町村国保の現状と課題の中でまず2点お尋ねします。
 ひとつは、被保険者数の推移、被保険者の年齢構成、国保世帯主の職業別構成割合、また加入状況が示されており、こうしたいわゆる「国保の構造的問題」については共有しています。ただ、国保世帯の平均所得のところで、平成30年度課税標準額の被保険者1人当たり額が市町村比較で2.2倍の格差になっているということですが、その原因をどのように分析されているでしょうか。
 また、昨年来のコロナ禍のもとで、特に低所得者層の多い国保世帯の平均所得についてはよほど慎重かつ丁寧に検討する必要があると思います。この点では、国保には所得の低い方への保険料税の負担軽減制度がありますが、令和2年度における軽減状況と近年の動向はどうなっているでしょうか。
 あわせて福祉保健部長からお答えをいただきたいと思います。

《答弁》 福祉保健部長
 まず、平成30年度の国民健康保険料(税)の1人当たり課税標準額の格差についてですが、課税標準額が最も高いのはみなべ町で、県の平均額より約41万円高く、最も低い那智勝浦町の約2.2倍となっております。
 しかしながら、次に高い有田川町と比較すると約1.5倍となり、みなべ町の課税標準額が特に高いことが格差を大きくしているといえます。
 厚生労働省の平成30年度の国民健康保険に関する抽出調査の結果では、みなべ町と那智勝浦町を比較した場合、農業所得で大きな差があることから、農業所得の差が主な要因であるというふうに考えております。
 次に、国民健康保険料(税)の軽減世帯数とその推移についてですが、保険料(税)については、所得に応じて応益割の7割、5割、2割を軽減する制度があり、所得の低い方への保険料(税)負担の軽減が図られております。
 令和2年度の対象世帯は、約9万4千世帯で、国民健康保険加入世帯の約63%となっており、直近5年間は、同様の水準で推移しております。

《要望》楠本文郎 県議
 みなべ町は飛びぬけて高くなっていますが、経年ではどうか、また、有田川町や、田辺市、上富田町、印南町、日高川町などの県平均より高いところの共通性の分析も必要ではないでしょうか。
 軽減世帯の割合もお答えいただきました。和歌山県は63%の軽減世帯で推移、全国的には53%台から毎年ほんの少しずつの増加です。県内は低所得者層が多いということになります。

(2)市町村保険料(税)水準を統一するための課題
《質問》楠本文郎 県議
 この国保運営方針の中で明確に打ち出されているのが、令和9年度に「市町村保険料()水準を統一」を目指すという方針です。しかし、このテーマはとても大きい課題だと思います。県として現時点における課題について福祉保健部長からお示しください。

《答弁》 福祉保健部長
 本県では、平成30年の国民健康保険運営方針の策定に当たり市町村と協議を重ねた結果、期限を決めて取り組んでいく必要があるとの合意のもと、平成30年度から10年間で保険料水準の統一を目指すこととしております。
 保険料(税)は、負担と給付の公平性の観点から、県内どの市町村に住んでも同じ所得、同じ世帯構成であれば同じ保険料水準が望ましいと考えております。
 しかしながら、保険料水準を統一するためには、多くの課題があります。
 現在各市町村で格差のある医療費水準の平準化、二通りある保険料(税)算定方法の統一化、保険料(税)収納率の差、特定健診の検査項目の追加や子供医療費助成事業など市町村が個別に政策的に取り組んでいるものの整理などが挙げられます。
 県としましては、そうした課題について、市町村と議論を深めてまいります。

《要望》楠本文郎 県議
 保険料算定方式の統一はとても困難な課題ではないかと私は思っています。固定資産割はなくしていく自治体が増えていくでしょう。それは、税として納めた額の何割として国保に上積みすることは実質の2重課税だと思うからです。土地が新たな資産を生み出すことも極端に少なくなりましたから応能負担にはなじみません。ところが、この資産割に重きを置かざるをえない市町村があり、これをなくしたら応益割に頼るしかないという考え方もあります。
 また、市町村の国保基金の差の大きさも難しい問題ではないでしょうか。基金ゼロのところと9億もあるところの差はとても大きい。
 いずれにしても、県だけの判断でなく、法的にも実態的にも、市町村との協議を抜きには考えられません。お答えにありましたように、統一ありきで押し付ける協議ではなく、議論をしっかり深めていただけるようお願いします。

(3)子どもの均等割額を国保料(税)に課さない
《質問》楠本文郎 県議
 もう一つ、この項目の3点目に、高すぎる保険料(税)をいかにしたら引き下げることになるのか、私は子どもの均等割を国保料(税)に課さないことを求めたいと思います。
 国において半額の公費負担が示されました。論理的に考えれば、負担能力のない子どもに均等割を課すことは子育て支援に逆行すると政府の方も認めたわけですから、本来国が全額国庫で措置すべきものであると考えます。そして国が全額措置をするまでの間、県の一般会計から繰り入れることを求めます。また、市町村が一般会計から措置することもありうるのではないかと考えますが、いかがでしょうか。

《答弁》 福祉保健部長
 国民健康保険における子どもに係る均等割保険料は、国民健康保険制度が被保険者全体の相互扶助で支えられていることから、応分の保険料(税)を負担していただく必要があるため、世帯員数に応じて均等に賦課されているものです。
 県としましては、子育て世帯への経済的負担軽減や医療保険制度間の公平性を図るためにも、国に対して、子どもに係る均等割保険料の軽減措置の導入について、これまでも全国知事会等を通じて国に要望してきたところです。
 その結果、本年6月に、国民健康保険法が改正され、令和4年度から全世帯の未就学児を対象に均等割保険料の5割を公費により軽減する措置が導入されることになり、国が1/2、県及び市町村がそれぞれ1/4を負担することとなっております。
 議員ご指摘の県及び市町村が子どもの均等割保険料軽減措置拡充のために、一般会計から繰り入れることは、国民健康保険の被保険者以外の方の負担にもなることですので、避けるべきものだと考えております。
 県としましては、子どもの均等割保険料軽減措置拡充については、医療保険制度間の公平性を図るという観点からも、制度設計者である国が責任を持って対応すべきものと考えており、対象者や軽減幅の更なる拡充を引き続き全国知事会等を通じて国に要望してまいります。

《要望》楠本文郎 県議
 すでに全国には、子育て支援として子どもの均等割額の減免を実施している自治体があります。財源は国保特別会計の基金です。基金からの繰り入れは国も認めているものだと考えます。ただし、お答えの通り、本来、制度設計者である国が行うものであり、しっかり要望していただきたいと思います。


4.GIGAスクール構想について
《質問》楠本文郎 県議
 「学校教育の情報化の推進に関する法律」が全会派賛成のもと、令和元年628日に交付、施行されました。
 第1条の目的には、「全ての児童生徒がその状況に応じて効果的に教育を受けることができる環境の整備を図るため、学校教育の情報化の推進に関し、基本理念、国等の責務、推進計画等を定めることにより、施策を総合的かつ計画的に推進し、もって次代の社会を担う児童生徒の育成に貢献」と概要説明されています。
 昨年は新型コロナウイルス感染拡大の影響で、国の実施するGIGAスクール構想が、当初の予定を前倒しして進められました。
 令和3年7月末時点の文部科学省の集約として、端末利活用状況等の実態調査、速報値が公表されています。
端末の利活用の開始状況は全国の公立の小学校等の96.1%、中学校等の96.5%が全学年又は一部の学年で端末の利活用を開始とあります。
端末の整備状況では、全自治体等のうち96.1%が整備済み。
端末の持ち帰りの学校数は、非常時は64.3%、平常時では25.3%で実施し、51.0%で準備済みと報告されています。
 そこで教育長にお尋ねします。まず1点目、和歌山県における学校教育の情報化に関する環境整備の進捗状況についてお答えください。
 2点目に、タブレット等の利活用について、現在の現場の状況はどのようになっているかをお尋ねします。コロナ感染が広がるもとでオンライン授業やタブレットによる個別学習が課題になりました。
 そして今年の夏休みは様々なところで教職員の研修会が開かれたようです。参加された方の感想をお聞きすると、「タブレットが起動せず研修会が無駄だった」という方から「これは便利で授業で使える」という方まで両極の意見でした。ただ大事なことは、何が何でもタブレットを使わなければならないのではなく、授業の内容や教材によってタブレットを使うことによって子どもたちの理解が深まるかどうかではないかという点。そして、子どもの発達段階を踏まえることも大事な視点ではないかということです。前倒し実施をしてきた中で、利活用としての条件整備はこれから作っていく段階ではないのかと考えます。
 教育委員会として、情報機器導入から利活用に向けての現場の状況をどのように認識しておられるのか、教育長にお伺いします。

《答弁》 宮﨑教育長
 学校教育の情報化に関する教育機器の導入については、県内すべての公立学校で端末の整備を完了しています。
 利活用については、各教科教育研究会を中心に、授業動画の作成に取り組むとともに、教育委員会においても動画活用の研修会を実施するなど、教員の資質の向上に努めているところであります。
 県立高等学校においては、全国的に先駆けて整備を完了した一人一台端末を用いて、授業動画を授業や家庭学習で活用するなど、新しい学びを進めています。
 効果的な学習指導とは対面授業とオンライン授業のそれぞれの良いところを組み合わせて行くことであると考えております。
 9月1日からの全ての県立高等学校での分散登校時においては、対面授業とオンライン授業を併用した学習指導を実施しています。
 小・中学校においては、ドリル学習や調べ学習など、児童生徒一人一人の理解度に応じた学習活動や、子供同士の学びを深めるための協働学習での活用など、教員が児童生徒の発達段階に応じた取り組みを進めているところです。
 これからの学力の向上や授業の改善には、ICT環境の充実というのは必須であります。着実に進めてまいりたいと考えています。

《要望》楠本文郎 県議
 「GIGAスクール構想」という命題は2019年、令和元年の12月の閣議決定から始まる。2017年に内閣府のもとに経産省、厚労省、文科省によって「第4次産業革命人材育成推進会議」がつくられています。
 そのもとで、経産省は「人材力会議」を内閣府は「人づくり革命」を提唱し、経産省は「Society5.0」を打ち出し、文科省は「Society5.0に向けた人材育成の推進」を提案、そして、2021年1月の中教審答申の「令和の日本型学校教育」へと結んでいきます。
 「令和の日本型学校教育」とはどういう方向を目指すものなのか、「Society5.0」とは何を意味するのか、全体像としてはしっかり議論しなければならないことだと考えます。
 そうしたなかで、整備された1人1台です。この利活用をどうするか、いま現場では右往左往と言ったら叱られるかもしれませんが。
 ただ、5か年計画で導入されるものが早く入ったからさあ使いなさい、とはいかないでしょう。ましてや、おもちゃではなく教材としてどう生かすのかというものですから、きちんと計画を立てて、試行錯誤しながら実践を積み重ねてこそ生きるものだと考えます。
 どんなに良いものでも魂を入れないと。今はその段階ではないでしょうか。経済的な費用対効果が議論されるのはそのあとではないでしょうか。以上で私の一般質問を終わります。ご協力ありがとうございました。



                                  福祉保健部長の答弁を聞く、楠本文郎県議(右)

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