2021年9月和歌山県議会 杉山俊雄 一般質問 概要記録

  録画中継

2021917
1.タブレット端末と健康について
(1)タブレット使用による健康への影響について

2.置き去りにされてきた生理の問題について
(1)生理に対する正しい理解と認識について
(2)県立学校における生理用品の設置について

3.ヤングケアラーの実態調査について
(1)記名による調査について


1.タブレット端末と健康について
(1)タブレット使用による健康への影響について
《質問》杉山俊雄 県議
 公立学校では、今年から生徒1人に1台のタブレットが配布され、このタブレットの活用で「授業がガラッと変わった」と、ある校長は言います。
 中学校では、教科によって利用頻度が異なるが、家庭科の若い先生に聞くと「はじめは不安であったが、使い始めると授業の半分以上使用している。場合によっては1時間使用していることもある」と大変便利だと言います。体育など実技教科では動画を撮って、自分のフォームを研究したり、作品作りのアイデアや記録として使用しています。
 国語では漢字の意味を調べるのに便利ですが、頭に残るには書くことが一番です。デジタル教科書は電子黒板に写せ、拡大した画面に線やポイントを記入できるので重宝され、音読もしてくれます。電子黒板は使うが、タブレットはあまり使わいません。地道な読み取りや書き込みをしないと力がつきません。しかし黒板はメインで電子黒板はサブ、タブレットで練習問題をする時間的余裕がありません。

 欠点はタブレットを持たせると静かになるが、何をしているかわかりません。勝手にYouTubeを見ていることもあり、他人の悪口を送り、誹謗中傷もできます。タブレットの出し入れに8分~10分程度時間がかかり、使用するのに躊躇すると言っています。
 専門的技術者が週1回、1日常駐してくれるので大変助かります。どんな疑問や質問にも親切に答えてくれ、教師に技術指導や講習等してくれます。
 導入されて1年目なので試行錯誤の段階であり、改善を重ねながら、今後使用頻度が年々上がっていくと思われます。
 話は変わりますが、2020年度の文科省学校保健統計調査によると、裸眼視力1.0未満の者の割合は年齢が高くなるにつれて増加傾向にあり、小学校1年で4人に1人、6年で約半数が1.0未満となっています。
 40年間の推移(1979年~2019年)を見ると、小中高と学年が進むにつれ高くなり、年々少しずつ増加しています。驚くべきことに、スマホが普及する2010年頃から、小・中・高とも増加の割合が大きくなっています。
 一般社団法人「健康長寿」が眼科医を対象にした調査でも「年代別の視力の変化」は、小学生の低下が最も多く、次いで若年層、中学生と続き、若い世代で視力低下がみられます。
 原因の上位は「ブルーライト」「近くでの長時間利用」「ドライアイ」です。ブルーライトは目の水晶体や角膜を通り抜け、網膜を傷つけてしまう恐れがあるといわれています。眼科医はブルーライトが一番悪いと回答していますが、文科省は「医学的評価が定まっていない」として、特に対策は打っていません。
 「視力低下による身体への影響」については「眼精疲労」「肩こり」「注意力の低下」と続きます。疲れ目は睡眠で解消しますが、眼精疲労は症状が長続きし、肩こりや頭痛、倦怠感など様々な影響が出てきます。
 岩手県奥州市の眼科医、鈴木武敏さんは、スマホの長時間利用で、両目で見る機能が低下するといいます。
 患者や高校での調査から、3時間以上使っている人の4割近くが片目の位置が外側にずれ、1時間以内の場合は、目の位置がずれていません。
 2時間ぐらいで片目の位置がずれ始め、3時間になるとずれ幅が大きくなる人もいます。これを隠れ外斜視といいます。
 隠れ外斜視は使用時間を減らせばほとんど治りますが、内斜視は厄介で、知人の息子は手術をしました。
 片目で見る習慣がつくと、使わない目の方が弱視になります。平均台を渡れない子が増えているのは、立体視ができていないからではないかと思われます。
 目以外にも脳への影響があります。東北大加齢医学研究所所長・川島隆太教授は「スマホの長時間利用が脳を破壊する」と指摘します。
 約7万人以上の小中学生を5年間追跡調査し、仙台市の学力テストとスマホの利用の関係について調べています。
 1日に1時間以上利用している場合、家でどれだけ勉強していても成績にマイナスの影響があります。スマホを見ながらの勉強が原因です。人間の脳は一つのことにしか集中できません。最も驚くべきことは、長時間使用で脳の発達が阻害されることです。
 インターネット習慣のある子どもの脳を、3年後の画像で比較すると、前頭前野を中心に脳内の6領域以上で、発達が止まっていたことが確認されました。これほどの脳領域の発達の遅れは、長時間テレビやゲームでも見たことがないと言っています。
 リスクを知らせていくのは大人の責任です。成人までは1時間までの利用にとどめるなどのルールが必要ではないかと思っています。
 iPadの生みの親であるスティーブ・ジョブズは自分や子どもの使用時間を厳しく制限したし、ビル・ゲイツも子どもが14歳になるまで持たせなかったといいます。
 スマホやタブレットで情報を検索しても、検索するのは機械なので脳は働きません。一方、読書をすると脳の神経線維は太くなります。文字を書くのも同様です。スマホやタブレットでは、漢字の変換も機械がするので脳は働きません。紙にペンで書くと脳は働きます。頭の中で情報を整理しないと脳は働きません。
 以上述べたように、タブレット端末やスマートフォンの長時間利用は目や脳の発達に悪影響を及ぼすことが指摘されています。タブレットやスマホを適切に利用する指導が必要であると思いますが、教育長よろしくお願いします。

《答弁》 宮﨑教育長
 タブレット端末やスマートフォン等のICT機器は利便性の高いツールであり、学習面においても有効に活用されています。一方で、長時間利用による健康面への影響も懸念されていることから、こうしたことを理解した上で、児童生徒が適切に利用できるよう指導していくことが重要であると考えております。
 このような状況から、各学校においては、文部科学省により示されている配慮事項等を踏まえ、児童生徒や保護者に対して「正しい姿勢」や「適度な明るさ」、「適度に目を休める」など、目の健康を守るための方法について指導及び啓発を行っています。
 県教育委員会でも、依存症予防教育の一環として、専門家等と連携を図り、家庭におけるルールづくりのリーフレットや学習資料集、動画教材等を作成し、授業での活用を促しているところです。
 今後、ICT機器の活用は必須でございます。児童生徒が、上手く付き合っていけるよう取り組んでまいります。

《要望》杉山俊雄 県議
 和歌山県の学習資料と動画は学活で活用されていますし、計画的に講師を派遣し、講話や学習会でリスク教育を行っています。
 スマホの見過ぎで、斜視になり手術が必要で、弱視は治りません。外遊びが少なくなったので立体視が未発達になっています。
 「スマホ脳」の日本とスウェーデンの2つの本によると、脳の発達を阻害することにびっくりします。
 スティーブ・ジョブズは、脳に悪いことをよく知っていたため、自分の子どもに厳しく制限したうえに、自宅に置くことすらしませんでした。
 県のガイドラインに家庭でのルールづくりが推奨されています。実行可能にするために、「使用時間が1時間を過ぎると自動的に制限されるアプリ」を、県が総力をあげて開発し、希望する家庭に無償配布するよう要望します。学力対策にもなります。


2.置き去りにされてきた生理の問題について
(1)生理に対する正しい理解と認識について
《質問》杉山俊雄 県議
 政府は今年、6月16日に「女性活躍・男女共同参画の重点方針2021」を決定し、「生理の貧困」への支援を盛り込みました。方針の中で、経済的理由から生理用品を購入できない女性の問題が顕在化したとして、地方自治体に対して、きめ細かい相談支援の充実を促しています。これに先立って4月12日、内閣府は都道府県に対して、学校において相談窓口の周知と合わせ、生理用品等の提供を行うなどの事務連絡を出しています。また、文科省も4月14日各都道府県等に、生理用品の提供場所を保健室等の手に取りやすい場所に設置したり、提供場所を保健室のほかに設けたりするなど、児童生徒が安心して入手できるよう、提供方法や設置場所等の工夫を検討するよう事務連絡を出しています。
 日本の「生理の貧困」の実態を明らかにするために、「#みんなの生理」という団体が、高校生以上の学生を対象にアンケート調査を行いました。結果は、「金銭的な理由で生理用品の入手に苦労したことがある」が20.1%、「生理用品の交換頻度を減らした」が37.0%、「経血の処理に生理用品以外のものを利用した」が27.1%など、女学生の数人(3~5人)に1人が深刻な状況でした。
 寄せられた声は切実で、「夜用一個を一日中使い、かゆみと臭いで大変」「母子家庭なので月経困難症の薬代が負担」「トイレットペーパーを代用するといつ漏れるか不安で、学校やバイトに行けない」などといった経済的な理由によって、必需品であるはずの生理用品・低用量ピル等にアクセスしづらい現状がある他、「生理による体調不良を説明したいが、生理について話すことへのタブー意識が強く、言い出せない」などといった声もあり、「生理に関する適切なケア・環境整備で学校生活を支える必要性が明らかになった」と団体代表は話しています。
 生理用品が買えないという問題は、本質的には生活全般にわたる貧困の問題であり、絶対的な貧困問題の解決が重要な要素の一つであることは言うまでもありませんが、経済的貧困だけが原因ではありません。配偶者からのDV、保護者が買ってくれない、また羞恥心から購入が困難なケースもあります。貧困で買えないというだけでなく、その他の事情にも目を向ける必要があると思います。
 生理の問題は、これまで女性特有の問題としてタブー視され、特に男性社会である政治や経済の世界で議論されることはなく、女性の側からも公の場で話題として取り上げることを避けてきた結果、社会では理解されず置き去りになってきました。
 タブーとして扱われてきた生理の問題について声を上げることは、女性にとって、社会の様々な場所にある生きづらさの解消につながると考えます。男女が互いの性について理解を深めることで、互いを尊重し、安心して快適に社会生活を送れるよう、男女共同参画の観点から、男女双方が生理に対する正しい理解と認識を持つよう、一層の啓発を図る必要があると考えますが、どうでしょうか。環境生活部長よろしくお願いします。

《答弁》 環境生活部長
 議員お話のとおり、生理の問題は女性にとって非常に身近で大切な問題であるにも関わらず、未だにタブー視され、恥ずかしいものとされる風潮にあります。
 男女がともに、生理に対する正しい理解と認識を持ち、思いやりを持って生きることは、社会における様々な女性の生きづらさの解消にもつながります。
 県では、思春期から高齢期まで、ライフステージ毎に直面する、様々な女性特有の問題についての理解を深めるため、「和歌山県男女共同参画基本計画」に基づき、性に関する教育の他、セミナーの開催や啓発活動、相談業務など、男女を問わず実施しているところであり、今後もこれらの取組を進めてまいります。

《コメント》杉山俊雄 県議
 タブー視されてきた生理の問題はジェンダーの問題です。
 ジェンダーとは、「女性はこうあるべき、男性はこうあるべき」とか、「男性は外で働き、女性は家庭を守る」などの振る舞いや役割分担などを指し、自然に出来たものではなく、国民を支配・抑圧するために政治的につくられ、歴史的に押しつけられてきたものと言われています。
 私もジェンダーギャップの中で70年生活してきたので、ジェンダーがすり込まれ、染みついていて、なかなか洗い落とせませんでした。
 しかし、今はジェンダーを知り、自覚しているので、新しい自分に生まれ変われたように思います。引き続き、啓発等にご尽力よろしくお願いいたします。

(2)県立学校における生理用品の設置について
《質問》杉山俊雄 県議
 日本のジェンダーギャップ指数は120位で、イギリスは23位です。そのイギリスでも生理に関しては男性中心であるとした著書、「存在しない女たち」があります。
 イギリスでは、ホームレスの簡易宿泊所は国民保険サービスに対し、無料のコンドームの支給を要求できるが、生理用品は要求できません。生理用品を無料で提供できるのは、たまたま予算が余っている場合か寄付金があった場合しかありません。そこで、「ホームレス・ピリオド」というキャンペーン団体がイギリス政府に対し、コンドームと同様に生理用品も無料で支給してほしいと嘆願しましたが、政府から前向きな援助は得られませんでした。
 コンドームは避妊のために無用な精子を捨てる生理用品です。一方ナプキンは妊娠せず、不要になった子宮内膜を排出するための生理用品です。どちらも同じ生理用品です。それなのにコンドームは無料支給でナプキンやタンポンはダメというのはジェンダー平等に反すると思いました。
 世界的にも、女性には生理があるという事実はまともに考慮されず、特に難民の女性たちはその影響を受けています。必需品である生理用品のための資金は提供されないことが多く、生理用品を何年も使えない女性や少女たちがいます。仕方なく非衛生的な代用品を使っているせいで、50%以上の女性は「尿路感染症にかかったまま治療もできずにいた」ことが明らかになりました。さらに「生理を知られるのは恥ずかしく、また漏れるのを恐れて」、ほとんど身動きがとれなくなり、食料を受け取ったり、サービスや情報を受け取ったり、人々と交流したり」できなくなってしまいました。このように必需品である生理用品が提供されないことで女性たちの健康や自由度に影響が出てきているとの報告でした。
 日本では「#Me Too運動」の影響などで、性や生理のことが社会全体の問題として語られるように変わってきました。若い世代が声を上げ、それに対応する自治体や国の動きは急速です。内閣府の調査によると「生理の貧困」への支援をしている自治体は581(7月20日時点)ありますが、公立の小中学校や高校で生理用品を配布しているのは279の自治体で、全国的には一部にとどまっています。
 小学校5年~中学校3年までの女子児童・生徒を対象にした東京都港区の調査では、「学校で生理用品がなくて困った」が17%で、養護教諭は保健室で把握しているより多かったと言っています。「困った理由」は、「持参するのを忘れた」が95%。「経済的理由ではなく、急に生理が来たり、ナプキンが足りなくて困った」ことで、安心して学校生活が送れないという点で課題があると担当課はいいます。
 NHK調査でも公立中学校の女子生徒の30%が「生理用品がなくて困った」と回答(山口市)。置いてほしい場所を尋ねると「トイレ」が87%で、保健室が1%。ほとんどの生徒が「トイレ」と答えています。保健室に生理用品を取りに行くことに抵抗を感じる生徒が多くいることが分かります。
 都立新宿高校は生徒が安心して学校生活が送れるように、東京都の方針で、校内のトイレに生理用品を無償で設置しました。そうすると昨年、保健室での利用が10個程度だったが、トイレに置いた今年は3月半で410以上のナプキンが使用されました。校長は「誰でも使えるようにすることで、『実は困った』とか『生理用品が足りないなんて言えない』という子に届いている」、「トイレットペーパーと同じように、生理用品が当たり前にある環境にしたかった」と語っています。
 これまでは学校のトイレに生理用品がないのが「ふつう」で、家庭で用意するものと考えられていました。「ふつう」を少し変えるだけで、よりよい環境がつくられます。
 今、学校現場はコロナ禍で、生徒たちはストレスを抱えています。せめて衛生面で心配なく安心して学校生活が送れるよう、ジェンダー平等を実現してほしいと思います。
 そのために、県立学校において、女子トイレの個室に生理用品を設置し、先進をいくよう範を示してほしいと考えます。教育長よろしくお願いします。

《答弁》 宮﨑教育長
 現在、県立学校においては、生理用品が急に必要となった場合に備えて、以前から保健室に準備をしております。
 今後も、引き続き、児童生徒が生理に関する悩みを相談しやすい雰囲気づくりや必要な時に入手しやすい工夫をするなど、安心して学校生活が送れるよう取り組んでまいります。

《要望》杉山俊雄 県議
 保健室に置いているから、「今まで通り」との回答でした。ジェンダー後進県です。
 東京都は、生徒の願いに応え、すべての都立高校で女子トイレに設置しました。そうしたら、昨年は月1個あるかないか程度でしたが、今年は置いてから月約120個と利用度が格段に上がりました。
 「生理用品が足りない」と言えない生徒、また「急に困ることになった」生徒に届けられました。
 和歌山県教育委員会には、待ちの構えでなく、かゆいところに手が届く積極的な対策を実施してほしいとおもいます。
 各課と連携することで、地域女性活躍推進交付金や地域未来支援交付金の活用が可能です。多くの自治体で活用されています。
 ジェンダーの観点からも、「これからは生理用品はトイレットペーパーと同じだと思ってほしい」との都立高校の校長の言葉に耳を傾けてほしい、このことを要望しておきます。


3.ヤングケアラーの実態調査について
(1)記名による調査について
《質問》杉山俊雄 県議
 ヤングケアラー支援について、川畑県議がこの間、2回一般質問を行っています。
 2月議会では、「高校2年生を対象に実態調査をすべき」との質問に、福祉保健部長は「県独自の調査の必要性について検討する」と答弁しています。また、「潜在的なヤングケアラーへ踏み込んだ啓発に取り組むべき」との質問に、「教育委員会と連携しながら、パンフレット・リーフレットを活用しながら周知に努める」と回答しています。
 6月議会では、2月議会での啓発グッズ作成の進捗状況と実態調査の実施について質問。福祉健康部長は「今年度、中高生を対象に啓発物品を配布。各種福祉制度についてのマニュアルを作成して、教職員に配布する」。実態調査については「全国調査と比較できるよう、対象は中・高2年生を想定。一人でも多くのヤングケアラーを学校現場から福祉につなぐよう、総動員して支援していく」と答弁しています。
 現在、川畑県議の質問に対する答弁のごとく、啓発グッズの作成と実態調査を10月に予定しています。当局のご努力に敬意を表します。
 県は、全国調査と比較できるよう、対象を中・高2年生にしぼり、実施方法は埼玉県と同様、教育委員会の協力をえて、県下すべての公立中学校と県立高校に調査表と回収袋を段ボール箱に入れ配布、輸送・回収は業者に委託する予定です。
 さいたま市は国や県の調査結果を踏まえ、市内の中高生約3万4,000人を対象に教員が具体的な支援を検討する必要があるとして、実態調査を今年6月に実施しました。調査は生徒に配布されているタブレット端末を使用して、世話をしている家族の状況や本人の悩み、相談相手の有無等をたずね、9月に結果をまとめる予定です。具体的な支援につなげるために、調査は記名式にしました。
 厚労省の全国調査では、ケアラーの割合は定時高校では8.5%、通信制高校では11.0%で、全日制高校の4.2%より高い割合を示しています。
 通信制高校への「入学理由」は、「家族の世話や介護と両立しやすい」が18.4%で、福祉サービスの利用も、1週間のケアの頻度や1日単位でのケア時間が長くなっていることから、負担の大きなケアを担っている可能性があります。
 ケアラーの発する言葉は「自己犠牲」です。「家族への負担にならないように、学費の高い私立の学校は選択できない」、「ケアと両立しやすい自宅から通いやすい学校だけを選択する」「何かが起こった時にすぐ駆けつけられるようにする」、「遠方での就職は選択しない」など、「世話をしているために、やりたいことが出来ない」ことが多く、毎日の通学や自由時間だけでなく、進路変更を含む自分自身の人生設計にケアが大きな影響を及ぼしていると思われます。
 ケアに関する悩みや不安を話せる人について、25.4%が「いない」と回答。また望むサービスとしては、「困ったときに相談できるスタッフや場所」が16.0%、「信頼して見守ってくれる大人」が14.5%、「宿題や勉強のサポート」が13.2%、「被介護者の状況に関するわかりやすい説明」が12.2%と、自分自身に寄り添い、継続的に関わってくれる大人の存在を求めています。
 いま第一義的に求められているのは、①学校でのヤングケアラーを発見する体制の強化、②支援ニーズの高い子どもに対する支援強化、③一時休息や家事援助サービスの充実などで、「過度に」なっている子どものケア負担を減らし救済することではないでしょうか。
 全国調査や埼玉県調査によって、ヤングケアラーの実態はある程度予想できます。全国調査では、中学2年生でヤングケアラーは5.7%、1クラス35人あたり2人程度いることになり、県でも同程度の状況があると考えられます。
 いま急がれるのは、全国調査との比較より、福祉保健部長が答弁しているように、1人でも多くのヤングケアラーを学校現場から福祉につなぎ、必要となる福祉施策を支援していくことではないでしょうか。そのためには、さいたま市が行ったように記名アンケートを実施すべきだと思います。さらに、生徒1人1台のタブレット端末を活用すれば、運搬・回収の業務委託も必要ないし、長期間かけずに、学校の都合に合わせ短期間で実施でき、集計・分析もスムーズに行われるのではないでしょうか。
 そこで、福祉保健部長にお伺いします。1人でも多くのヤングケアラーを学校現場から福祉につなぎ、必要となる福祉施策で支援するためには、実態調査を記名式で実施すべきだと思いますが、お答えください。

《答弁》 福祉保健部長
 今年度実施するヤングケアラーの実態調査は、本県の実情に即した、効果的な支援策を検討するため、まずは県内におけるヤングケアラーの数や実態、その支援ニーズをより正確に把握し、全国調査の結果と比較して本県の傾向を掴むことを目的に行います。
 調査方法につきましては、学校現場を所管する教育委員会とも協議しながら検討しましたが、ヤングケアラーは家庭内の生徒のプライベートに関わるデリケートな問題であり、記名式にすると生徒が実情を答えにくくなる恐れがあることから、今回の実態調査は、生徒が安心して回答でき、より正確な回答が得られるよう「無記名式」のアンケート方法で実施することとしました。
 また、ヤングケアラーは、本人や家族に自覚がないといった理由から、支援が必要であっても表面化しにくいことが課題となっています。
 このため、ヤングケアラーである子どもたちが一人で悩むことのないよう、調査の実施とあわせて、県内の全中高生に啓発物資を配布して相談先を周知し、湘談を呼びかけることとしています。
 さらに、ヤングケアラーヘの支援に利用できる福祉の各種制度や相談先の手引きを作成して教職員等に配布し周知するとともに、市町村でもヤングケアラー対応窓口を一本化することとしており、こうした取組を通じて学校現場における子どもたちからの相談を早期に、適切な支援につないでまいります。

《要望》杉山俊雄 県議
 1人でも多くのヤングケアラーを学校現場から福祉につなぎ支援していくと言いながら、調査は無記名。言っていることと、やろうとしていることに矛盾を感じます。
 さいたま市は具体的な支援が必要な生徒を把握するために、あえて記名式にしました。
 アンケートについては、事前に手紙で保護者の理解を求め、生徒には主旨を伝えていたので、無記名数はクラスに1人あるかないかの結果であったといいます。
 また、タブレット端末活用でも、学校の事情に応じて行われるので、特にトラブルはなかったといいます。
 学校は生徒からの相談を呼びかけ、待つのではなく、積極的に把握していく姿勢が求められます。今後このような機会があれば、記名式にして、タブレット端末を利用することを要望して質問を終わります。

宮﨑教育長の答弁を聞く、杉山俊雄県議(左)



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