2021年12月和歌山県議会 楠本文郎 一般質問  概要記録

  録画中継
20211213

1.特別支援学校設置基準にもとづく対応について
(1)設置基準が制定されたことについて
(2)現状把握について
(3)集中取組計画の策定に係る県の対応について

2.気候危機への対応について
(1)産業振興への新たな支援策を
(2)気候危機打開の公益的機能について
(3)未来を担う子どもたちへの、環境学習および環境教育の取り組みについて

3.選挙における投票率の向上のために
(1)18歳以上の若者、特に高校生・大学生の投票権行使を広げるために
(2)高齢者などが投票しにくい現状の改善について


1.特別支援学校設置基準にもとづく対応について
《質問》楠本文郎 県議
 障害のある子どもたちが学ぶ特別支援学校について質問します。
 これまで小学校、中学校、高校、大学、幼稚園にはある設置基準が、特別支援学校にはありませんでした。そのもとで、全国的には、異常とも言える劣悪な教育環境が常態化してきていました。
 こうした現状からの改善をと、父母、保護者、教職員、関係団体、教育研究者、議員など広範な方々は、10年余にわたる粘り強い運動を続けられてきましたが、関係者にとってのビッグニュースとして、9月24日、「特別支援学校設置基準」が制定されるに至りました。
 令和3年文部科学省令第45号として、2021年9月24日に公布され、総則及び学科に係る規定は2022年4月1日から、編制並びに施設及び設備に係る規定は2023年4月1日から施行されることが文部科学省から通知されました。この「設置基準」の公布は、在籍者数の増加により慢性的な教室不足が続いている特別支援学校の「教育環境を改善する」という観点から、学校教育法3条に基づき制定するものだと示されています。
 さて、和歌山県ではどうでしょうか。この間の特別支援学校の増設にもかかわらず、きのかわ支援学校178人、紀伊コスモス支援学校229人、和歌山さくら支援学校211人と大規模校化しています。紀北支援学校は平成10年に54人であった小学部は22年後の今、2倍の117人になり、中学部、高等部合わせて273人という大規模過密の学校になっています。
 小学部が増えるごとに、教室が足らなくなる、特別教室を普通教室に転用せざるを得ない状況となり、すでに「もうこれ以上つぶす教室ないよー」と悲鳴が上がっています。こうした現状を改善してほしいから10年余の運動があったわけです。
(1)設置基準が制定されたことについて
 そこで、和歌山県教育委員会として、障害を持つ子どもたちの「学びの保障」の前提となる設置基準が制定されたことをどう受け止められておられるのでしょうか。まず教育長からお答えいただきたいと思います。

《答弁》 宮﨑教育長
 従来、和歌山県においては、決して異常とも言える劣悪な教育環境などではなく、特別支援教育を必要とする児童生徒に対して、障害の程度や特性に応じた環境整備を行ってまいりました。児童生徒の増加に対して、適切に対応してきたところでございます。
 今回、制定された「特別支援学校設置基準」においては、 特別支援学校を設置するための基準が設定されるとともに、地域の実態に応じた適切な対応が可能となるよう弾力的かつ大綱的な規定が示されております。
 設置基準では、校舎や運動場の総面積、校舎に備えるべき施設として、教室、自立教室、図書室及び保健室などを設けるとともに、校舎等を新築又は改築する場合には、設置基準に定める面積基準を上回る必要があることなどが規定されております。設置基準の策定は、本県においても望むところであり、今後、さらに特別支援学校の環境整備を充実させ、児童生徒の学びをより一層、安心・安全で豊かにできるものと期待しています。
 今後も、特別支援学校の教育環境の充実に、これまで以上に努めてまいる所存でございます。

《確認》楠本文郎 県議
 「学びの保障」がキーワードですよね。校舎・運動場の総面積、校舎内の施設として、教室、自立活動室、図書室、保健室なども設ける、なども規定されている、との答弁です。「指針」は意味深なのですが、次に進めます。

(2)現状把握について
《質問》楠本文郎 県議
 県教育委員会のホームページにある特別支援学校在籍者数の推移を見ると、平成14年から令和3年、西暦で言うと2002年から2021年の20年間で1.53倍です。全国でも20年で1.6倍と言われていますから、同様の明らかな急増です。
 ちなみに、県下の特別支援学級では、同じ20年間で小・中合わせて3.29倍と、より一層の急増で、学級数は1.8倍、学校数は1.1倍しか増加していませんから児童生徒数の増加に施設の改善が追い付いていないという問題が生じているのではないかと危惧しています。
 なぜ、子どもの数は全体として少子化なのに、特別支援教育を必要とする子どもが増加しているのか、その要因をどう考えておられますか。
 その中で、和歌山県立の「学びの保障」としての特別支援学校の教育施設環境の現状は、この「設置基準」に照らしてどうなっているでしょうか。
 児童生徒数の増加に伴う一時的な対応状況を整理すれば「改善の課題」はすぐに明らかになります。教育長から現状把握についてご報告いただきたいと思います。

《答弁》 宮﨑教育長
 近年、特別支援教育を必要とする子どもが増加していることについての要因としましては、医療の進歩や特別支援教育への理解が進んでいるとともに、本県の特別支援学校における個々の教育的ニーズに応じた学習や進路指導などの丁寧な取組が、県民・保護者の方々に認められてきたことも大きな要因であると考えております。
 その結果として、和歌山県においても、特別支援学級や特別支援学校で学んでいる児童生徒が増加しているところもあります。そのことによって、設置基準で定める面積基準を満たさなくなることも懸念されます。
 県教育委員会としましては、これまで平成24年度に和歌山市に和歌山さくら支援学校を開校しております。その他の学校においては、令和2年度に紀伊コスモス支援学校に校舎を増築いたしました。現在、児童生徒の人数に合わせて教室を間仕切ることや、一部の特別教室等を普通教室に転用するなど、76教室を確保するとともに、学習形態や指導方法を工夫することにより、児童生徒の学習活動に支障の無いよう取り組んでいるところでございます。

《確認》楠本文郎 県議
 増加に伴う一時的な対応状況は文科省への報告義務があるはずです。特別教室を普通教室に転用が23、その他で53の転用で計76教室分です。しかし、現状はかなりの転用があります。決して正常ではない、この現状認識が大事だと思います。

(3)集中取組計画の策定に係る県の対応について
《質問》楠本文郎 県議
 改善の課題ははっきりしていても、すぐの新設や増設には無理があります。用地買収から設計の段階に至るプランが必要なことは、南紀支援学校とはまゆう支援学校の統合をみても明らかです。法令上も手当されています。しかし、計画的に整理をし、思い切った予算の配分をしない限り後まわしになることはこの間の経過を見れば歴然です。
 文科省は、令和2年から6年度迄を「集中取組期間」と位置付けました。その促進のために、施設設備の新設、増設等に関する申請を優先的に採択していることに加え、集中取組期間における廃校や、余裕教室等、特別支援学校の用に供する改修工事にかかる国庫補助を今年度から3分の1から2分の1に引き上げています。
 そのうえで、この集中期間の計画を来年3月、つまり令和3年度末までに策定するよう求めていますが、県としての対応を教育長から伺いたいと思います。

《答弁》 宮﨑教育長
 文部科学省が定める令和2年度から令和6年度の集中取組期間において、本県が取り組むための計画として、「特別支援学校における教室不足の解消に向けた集中取組計画」を令和2年度に策定しております。これに基づき、紀伊コスモス支援学校の校舎増築、南紀支援学校及びはまゆう支援学校統合に伴う校舎建設、みくまの支援学校校舎の大規模改造工事を進めております。
 これまでも、特別支援学校における多様な学びの場の整備という観点から、必要な環境整備を適切に進めてきたところでありますが、引き続き、設置基準に規定された施設等を確保できるよう努めてまいります。
 本県では、障害のある幼児児童生徒に応じた支援を充実してまいりました。今後も、一人一人の自立と社会参加を目指し、特別支援学校で学んで良かったと実感してもらえるよう、取り組んでまいりたいと考えております。

《要望》楠本文郎 県議
 改善のポイントは、那賀地方に支援学校をつくることです。そうすれば校区、通学範囲の確定もしやすくなります。これは那賀地方のみなさんが長年要望していたはずです。同時に急増している和歌山市の保護者の願いにもこたえられる道ではないでしょうか。


2.気候危機への対応について
《質問》楠本文郎 県議
 大きな2点目に、気候危機問題としてその対応について質問いたします。
 国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)が11月に開かれました。たくさんの報道がありましたが、「1.5度目標」が共有され、「1.5度増に抑える努力の追及」と明記されました。もう一つの焦点は「脱石炭」でした。これは、「石炭火力の段階的廃止」が提案されましたが、「段階的削減」に弱められました。
 このCOP26では、「地球温暖化を1.5度に制限するには、地球のCO²排出量を、2030年までに10年比で45%削減し、今世紀半ばまでに実質ゼロまで削減することが必要だと認識する。」「各国が決定した削減目標を合計しても、30年の温室効果ガス排出量は10年比で13.7%増になるとの推定結果に深い憂慮を持って注目する」との合意になっています。そして、ICPPが警告している気温上昇による壊滅的な影響を念頭に「来年末までに必要に応じて検証し、さらに強化する」よう要請しています。
 また別の角度としてSDGsでは、「脱炭素、工業的農業からの脱却など各種の目標と期限が設定されています。2018年の国連気候変動に関する政府間パネル『1.5特別報告書』では,1.5℃目標を実現するためには,CO²排出量を2030年までに2010年の水準から約45%削減、2050年頃までに実質ゼロとする必要があり、2030年までの削減の取組が決定的に重要である」としています。
 特別報告書に関する記者会見では「いますぐ行動を起こし、今後10年間でCO²排出量を大幅に減らさなければ、気温上昇を1.5℃以下に抑えることが極めて困難になる」と語っています。2050年にゼロにすればよいのではなく、2030年目標の達成が重要なのです。この10年は「未来への分岐点」とも表現されているところです。
 こうした状況を受けて私たち日本共産党は、「気候危機を打開する2030戦略」を提案しています。2030年の位置付け、2030年までの計画が決定的だというところから論建てを始めています。また、環境問題、気候変動のとりくみについて、近年欧米では「環境正義」「気候正義」という概念が使われています。これは、公害、環境汚染の被害者は、人々に等しく降り注ぐのではなく、貧困層、社会的弱者とその居住する地域に集中して現れることから、そこには「不正義」が存在している、と捉える概念です。気候変動による食糧危機などの被害も、貧困層と富裕層では影響が違います。また、現在の世代が利便性を享受した結果、将来世代がその不利益の影響をまともに受けるという、世代間での「不正義」も視野に入れた概念です。当時15歳のグレタ・トゥーンベリさんがはじめた行動が「未来のための金曜日」行動として若者にひろがっているのは、この不正義をなくせ、未来を奪うな、という訴えです。SDGs、パリ協定の目標は、人として、地球の生きるものとしての正義の追求であり、未来の世代への責任だと考えることを前提に提案しています。
 2030年に向けては、県の施策と県民、NPOなどの団体、そして政党も共通認識を持って取り組んでいくことが非常に重要ですから、そのためにわたしは随所で「環境正義」「気候正義」という表現をしていきたいと思いますのでお含みおきください。
 さて、9日の一般質問でお二人の先輩からのご質問に対し、県政としての姿勢、課題等についてのお答えがありました。微妙な部分はさておいて、地球という大きな船の中で、持続的な社会をつくっていくための議論はしっかり多角的に積み重ねていくべきだと感じながらお聞きしました。
(1)産業振興への新たな支援策を
 そこで、先輩方の一般質問と重なる項目を避ける意味からも、まず1点目に省エネ、再エネを含む産業振興面から質問をいたします。
 私たちは、脱炭素化、省エネルギーと再生可能エネルギーの推進は、生活水準の悪化や耐乏生活を強いるものでも、経済の悪化や停滞をもたらすものでもなく、それどころか新しい雇用を創出し、地域経済を活性化し、新たな技術の開発など持続可能な成長の大きな可能性を持っていることをこの「気候危機を打開する2030戦略」の中で示しています。
 省エネは、企業にとっても中長期的な投資によってコスト削減とまともな効率化をもたらします。リストラ・人件費削減という経済全体にマイナスとなる「効率化」とは正反対です。住宅などの断熱化は、地域の建設業などに仕事と雇用を生み出します。
 バイオマス発電や、小水力発電などの地域の発電所は、石炭火力や原発などより、はるかに多い雇用を生み出し、地域経済の活性化につながります。大規模な太陽光発電ではなく、屋根上の太陽光発電は和歌山県のような日照時間の長い県に適したものであり、公共施設や民家の屋根上発電の設置は地域の中小企業の受注にも繋がります。
 海外に依存してきた化石燃料への支払いは大幅に減り、日本経済の弱点である低いエネルギー自給率は大きく向上し、再エネの普及によるコスト削減もあり、実際には電気料金の値下げにもつながっています。
 未来のためのエネルギー転換研究グループによる「レポート2030」の試算では、2030年までに、エネルギー需要を約40%削減する省エネと、再生可能エネルギーで電力の44%を賄うエネルギー転換を実施すれば、年間254万人の雇用が新たに創出され、エネルギー転換で影響を受ける産業分野での現在の雇用者20万人をはるかに上回ります。投資額は、2030年までの累計で202兆円となり、GDPを205兆円押し上げ、化石燃料の輸入削減額は52兆円になるとされています。
 世界的にみても、環境と人権を重視した投資、商品が重視されています。原発、化石燃料関連は「座礁資産」とよばれ、投資の対象とされない時代に入ってきています。また、著名な多国籍企業が「RE100」といって自らの経済活動を再エネ100%で実施することを宣言し、これをめざして、再エネを推進しない事業者は、サプライチェーン、バリューチェーンからはじかれるという時代を迎えようとしています。EUは2026年に、国境炭素税を全面実施することを発表するなどの動きも進んでいます。
 気候危機に対応する地域社会をつくることは、和歌山県の持つポテンシャルを発揮させ、より上質な暮らしと経済を作っていく道だと考えます。
 県政の具体としても、産業振興計画をはじめ、県の基本政策に気候危機をしっかり位置付けることが不可欠だと考えます。
 省エネについて、たとえば生産工程における効率のよい機器の導入、または断熱システムの更新も重要であると考えます。今後、産業部門において省エネ化を進めていくためには、支援策の充実も必要だと思いますが、商工観光労働部長にお聞きします。

《答弁》 商工観光労働部長
 議員ご指摘のとおり、今後企業が脱炭素への対応を成長への機会と捉え、省エネや再生可能エネルギーの推進に積極的に取り組むことで、持続可能な成長につながっていくものと認識しております。
 議員ご質問の企業の省エネ推進の支援についてですが、県では平成29年度より省エネ設備の導入支援を県単独事業として実施してきましたが、昨年度より国の制度が拡充したことにより、現在は、国の補助金を活用いただいているところです。また、今年度から、ものづくり企業における生産性向上のための県単独補助制度を設けており、その中で、省エネ設備も補助の対象としているところです。
  昨年度改定した第三次和歌山県産業技術基本計画においてもエネルギー・環境分野を重点的に推進する戦略分野と位置付けており、計画を踏まえ、ICTやロボット等の先端技術を活用した生産性の向上や作業の省力化など、省エネにも寄与する技術の開発・導入を支援しているところです。
 県としましては、更なる産業部門の省エネ推進に向けて、こうした取組を引き続き実施していくとともに、国の新たな経済対策の動向も踏まえつつ、脱炭素に向けた県内企業の積極的な取組を支援し、県内産業の成長につなげてまいりたいと考えております。

《確認》楠本文郎 県議
 県としては先行してきましたが、小規模のきらいがありました。昨年より国がハンドルを切り切り始めています。この流れをあと押ししていくことです。

(2)気候危機打開の公益的機能について
《質問》楠本文郎 県議
 住宅の断熱化は、光熱費を削減することで、欧州では貧困対策としても重視されています。県営住宅、市町村営住宅の断熱化の促進、また民間住宅の断熱化・省エネ化に向けた改修を、気候危機打開の公益的機能があるとして支援する制度を強化することが必要だと思いますが、県土整備部長の方からお答えいただきたいと思います。

《答弁》 県土整備部長
 住宅の断熱性能の強化やエネルギー効率の高いエアコン等設備の導入は、エネルギー消費を低減させ脱炭素化に寄与することから、2050年までのカーボンニュートラル実現に向けた施策として、今年10月に閣議決定された「エネルギー基本計画」に列挙されています。
 まず、県営住宅などの公営住宅については、行政が運営していることから、政府目標を達成するために、省エネ化を率先して導入する必要があると認識しています。
 ついては、エネルギー消費量を現行基準から20%削減するため、国が現在見直し中の公営住宅等整備基準に基づき、これから計画する県営住宅に対しては、本基準に基づき整備するとともに、市町村営住宅についても適切に整備されるよう助言してまいります。
 また、既存の公営住宅に対しては、老朽化に伴う屋根の改修あるいは玄関ドアや設備機器の取り換え時において、断熱性の高い材料やエネルギー効率の高い設備を用いることとしています。
 一方、民間住宅については、本県全住宅戸数の9割を超え、政府目標の達成に大きく寄与することから、民間事業者の省エネ化に向けた取組を支援してまいります。
 具体的には、国が現在検討を進めている省エネ性能に係る基準の引き上げや臨時国会における補助制度の審議を見極めながら、各種制度の周知や講習会の開催を進めてまいります。

《確認》楠本文郎 県議
 ここでも、住宅リフォーム助成として、ハンドルを切りました。ニーズがあり、需要が増えると単価も安くなり、大手企業でなく、まちの工務店が事業として請け負えます。
 前例は、太陽光発電事業。この中でも、屋根上の発電は効果的です。楠本発電所で22年間実証実験をやってきた実感があります。何より自然を壊しません。和歌山県は日照時間の長い県です。風が通り、南向き傾斜15度取れればFIT事業のもと10年間でペイできます。これを流行らせることです。

(3)未来を担う子どもたちへの、環境学習および環境教育の取り組みについて
《質問》楠本文郎 県議
 経済産業省資源エネルギー庁が募集している「第6次エネルギー基本計画(案)」のパブリックコメントに対して、「日本版気候若者会議」がコメントを投稿しています。日本版気候若者会議(主催:日本若者協議会)では、「環境政策の早期実現」、「開かれた議論の場」、「発信による世論喚起」を目的に、若者108名で2021年5月23日から8月1日までの10週間にわたり気候変動対策について議論し、政策をまとめたとあります。9月には「日本版気候若者会議」として政策提言をおこなっています。未来の担い手として主体者として切り開いていこうとする若者の行動には希望を感じます。
 和歌山県内では、まだこうした若者世代からの働きかけは顕在化していないようですが、子どもたちの活動があります。県内の活動をこの間も見聞きしてきました。
 第5次の県環境基本計画を自らの問題として主体的に実践していってくれるのは子どもたちです。未来を担う子どもたちへの「環境学習」の取り組みについて環境生活部長から、また学校での「環境教育」の取り組みについては教育長からお答えいただきたいと思います。

《答弁》 環境生活部長
 2050年カーボンニュートラルを目指すためには、息の長い取組が必要であり、将来を担う子どもたちに環境問題を正しく理解してもらい、自ら解決策を考え、行動していくといった高い環境意識を醸成する必要があると考えています。
 県では、環境学習を支援するため、学校の求めに応じて専門家を派遣するとともに、省エネルギーの効果を実感してもらうため、植物の苗などを配布し、グリーンカーテンを育てる取組も実施しています。さらに、小学生を対象として、家族とともに夏休み期間中に様々なエコ活動に取り組んでもらい、活動の成果を各地で展示するなど、各種の環境学習に取り組んでいるところです。
 また、本年度より、専門家の指導のもと、小中学生が自然環境に深く関わる知識や技術を学ぶ「ネイチャー・キャンプ」や中高生が海洋環境等の特定のテーマについて主体的に調査・研究を行う「南紀熊野ジオパーク探偵団」など、本県の豊かな自然環境や生物多様性への理解を深める取組も始めたところです。
 引き続き、教育委員会と連携を図りながら、子どもたちへの環境学習に積極的に取り組み、環境意識の醸成に努めてまいります。

《答弁》 宮﨑教育長
 現在、気候変動等の地球環境に関わる問題についての関心が高まっております。
 各学校では、理科や社会科等での学習をはじめ、教育活動全般を通じて、子どもたちに環境について学ばせるとともに、環境を大切にする心を育てています。さらに、地域のごみの分別や川の水質調査等の身近な題材を取り上げ、環境をテーマに、天神崎や南紀熊野ジオパーク等の地域教材を活用した学習にも取り組んでいます。
 環境教育を推進する教員を育成するために、県教育委員会では、環境等をテーマに自主研究に取り組んでいる教員に支援を行っています。また、県立自然博物館等の施設を活用し、教員を対象としたエコティーチャー養成研修会を毎年実施しています。
 今後も、持続可能な社会の実現に向けて、一人一人が自ら主体的に考え、行動できる子どもたちを育ててまいります。

《要望》楠本文郎 県議
 第21回の募集中のわかやま環境賞=応募例では、学習、まちの美化、清掃、環境に配慮した技術・製品開発、資源の再利用、リサイクル活動まで幅広くなっています。
 「環境正義」「気候正義」を世論として、この10年間がとても大事だという時代感を共有して幅広く、自分のやれることから進化していけるような状態をつくっていきましょう。


3.選挙における投票率の向上のために
《質問》楠本文郎 県議
 大きな項目の3点目に、公選法上の選挙における投票率の向上についておたずねします。
 10月31日に総選挙が終わって、各種の分析が出されてきています。第49回衆議院議員総選挙における有権者全体における投票率は、小選挙区が55.93%、比例代表が55.92%。いずれも前回2017年衆院選の投票率を2.24ポイントあまり上回りましたが、それでも戦後3番目に低い低投票率となりました。
 近年、特に強まる低投票率の傾向は、いわば「民主主義の危機」だと感じているもののひとりです。要因についてはもちろん様々なことが重なっており、それは同時に特効薬を求められるものではないことを意味するわけですが、明るい選挙推進協会が発行しているVoters(ボーターズ)10月号に、女性参政権75周年を迎えての特集を見ながら民主主義の発展の歴史を踏まえ、主権者国民・市民の政治参加の保障は政治の成熟度にもつながるものという思いから質問することにしました。
 選挙に関わって和歌山県選挙管理委員会に質問できる範囲は限られていますが、ここでの質問は、投票率向上のために今まで取り組んでいること、その中での課題と取組方向についてお尋ねしていきます。
(1)18歳以上の若者、特に高校生・大学生の投票権行使を広げるために
 総務省は11月5日、今回の第49回衆議院議員総選挙における18歳・19歳の年齢別投票者数調の速報を発表しています。これは全国4万6,466投票区の中から、47都道府県内ごとの4投票区、総計188投票区を抽出し、その投票区での男女別及び18歳・19歳の投票率を調査したものです。
 その結果、投票率は18歳男性が48.80%、18歳女性が53.68%、19歳男性が33.28%、19歳女性が36.87%。全体では43.01%です。男女別では男性が41.04%、女性が45.11%と女性のほうが4ポイント近く高くなっています。年齢別では18歳が51.14%に対し、19歳が35.04%となり、18歳では投票率が過半数に達したのに19歳の投票率の低さが目立ちました。2017年の前回衆院選の18・19歳投票率に比べ、男性の投票率は前回からほぼ横ばい、女性は増加傾向にあり、全体の投票率もわずかながら増加に転じた、という内容を発表しています。
 「地域課題解決学習と高校生の投票行動」という分析をしているある大学教授の論文を拝見しました。2016年参院選で約半数の18歳が投票に行ったのに、なぜ1年たつと投票に行かなくなるのだろうかと問いかけています。
 またこの論文では、主権者教育を「狭義」から「広義」としてとらえようと呼びかけています。例えば高校生を対象とした地域課題解決学習として、地域の課題を考え一緒に解決策を考えていくと、「自分の生活と政治の関連性」について考えはじめ投票行動も大きく変化するのではないかと問いかけていました。
 今まで、18歳選挙権が実施されて以来、こうした若者層の投票率の向上に向けて、県選挙管理委員会として議論され実践されてきたと思います。その取組の状況についてお示しください。

《答弁》 選挙管理委員会委員長
 選挙は、国民が政治に参画する最も重要かつ基本的な機会であり、投票率、とりわけ若年層の投票率が課題であると認識しております。
 そのため、選挙管理委員会としては、選挙時においては、大学生や高校生に啓発物資作成など選挙啓発活動への参画を試みたり、若者がよく利用すると思われるコンビニへのレジ画面広告、ヤフーのバナー広告やSNSを活用した情報発信に取り組んでいるところです。
 また、若年層への対策は、長期的視野に立った取組が重要であり、平成23年度から市町村選挙管理委員会と連携して、小学生を対象に「選挙出前講座」を実施しております。この出前講座では、私どもの職員が「投票することの意義」や「投票方法」など選挙についてお話し、生徒数人が候補者役となり、一つのテーマについてそれぞれ演説を行った上で、実際の選挙で用いられる投票箱や記載台等を使用して、投票を体験してもらう模擬投票を行っております。平成27年度からは、選挙権年齢の引下げを受けまして、中学生や高校生等も対象とし、それぞれ年齢等にあった講座としております。
 今後とも、こうした取組を一層充実させ、投票率の向上に取り組んで参ります。

《要望》楠本文郎 県議
 「広義」の生活体験から考えていく「主権者教育」に重点を置いた取組みの強化を求めます。

(2)高齢者などが投票しにくい現状の改善について
《質問》楠本文郎 県議
 次に、総務省が出している年代別投票率の推移をみると、60歳代が最も投票率が高く、次いで、50歳代、70歳代と下がっていきます。年代が下がるほど低くなりますが、長い間投票してきたはずの70歳代の投票率が下がるのは何故なのでしょうか。
 若者層とは別の問題として、投票所に行きづらいという高齢の方が増えているというのが実情ではないでしょうか。令和3年1月1日の県内人口は95万人弱、65歳以上は30万人超、32.8%に上ります。このうち21.8%は要支援・要介護認定者で、数は6万7,000人以上です。投票率の向上を考える場合、この方がたの投票行動を保障しようという視点は大事ではないかと考えます。
 山間部であれば、期日前投票所となっている役場まで遠くて行けない。当日の投票所は比較的近いところにあるが、それでも歩いては行けない。送ってくれる方がうまくいかなくて結局諦めた方が増えています。これは都市部でも同様の傾向で、車のない方は、誘ってくれる友人がなくて結局棄権したという事例が少なからずあります。
 移動もしくは巡回の期日前投票所の開設、また投票所までの移動支援が決定的ではないでしょうか。県の選挙管理委員会としての考え方、さらに県下の市町村の現状についてご説明ください。

《答弁》 選挙管理委員会委員長
 投票所まで距離がある方や高齢者が投票しやすい環境づくりに配慮することについて、選挙管理委員会といたしましても、これまで、地域の実情に応じた移動支援や移動期日前投票所などを積極的に行うよう市町村選挙管理委員会に対して助言を行ってきたところです。
 中でも、過疎化や高齢化が進む地域の選挙人にとっては移動期日前投票所は、投票機会の確保に繋がる選択肢の一つであると考えており、平成28年に全国で初めて導入した島根県浜田市や県内で初めて導入した有田川町における取組等について、機会を捉えて、事例紹介を行って参りました。
 この有田川町における取組は、平成30年の県知事選挙において導入され、今回の衆議院議員総選挙においても、車2台で町内5箇所を巡回して実施されました。また、新たに新宮市でも移動期日前投票所が設置されたところであります。
 その他の移動支援の取組としては、市町村選挙管理委員会において、期日前投票所又は投票所まで往復する無料の送迎バスの運行や、無料乗車券の発行などを行ったところもございます。
 選挙管理委員会といたしましては、今後とも投票環境の向上に関し、市町村選挙管理委員会と連携して取り組んで参ります。



                                               宮﨑教育長の答弁を聞く、楠本文郎県議(右)


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