2021年12月和歌山県議会 高田由一 一般質問 概要記録


 録画中継
2021128

1.新型コロナウイルス感染症対策
(1)新しい政府方針への対応について
(2)検査の拡大について
(3)施設や学校での定期的な検査の実施について

2.盛土崩落と各種規制の強化について
(1)盛土の総点検の調査結果と今後の対応
(2)盛土やソーラーパネルの設置規制について
(3)森林法での規制について
(4)盛土等の法的規制にあたって

3.子ども・女性・障害者相談センターでの職員の犯罪について
(1)今後の対策と被害を受けた子どもへの対応について
(2)子どもからの相談を受ける体制について
(3)児童相談所全体の人員体制について

4.ユニバーサルツーリズムの推進について
(1)県での取り組みについて
(2)外出困難な方にこそリフレッシュを新型コロナウイルス感染症対策


1.新型コロナウイルス感染症対策
《質問》高田由一 県議
 最初に、新型コロナウイルス感染症についてうかがいます。
 このたび日本でも、新しい変異株への感染者が発見され、世界の株価にも影響するほど心配されています。政府は11月に入って、「次の感染拡大に向けた安心確保のための取組の全体像」という新しい方針を示しました。
 それをうけた全国知事会の緊急提言では、新たな感染状況を評価する指標について、これまでのような新規感染者の数ではなく、医療逼迫の状況に応じてレベル分けしたことについて心配をしています。これまで和歌山県でも取り組んできたように、新規感染者数をもとに早期対策を講じて感染の波を小さくすることが重要であり、新規感染者の周囲の囲い込みが十分にできなければ、囲い込みから漏れた感染者がさらなる感染拡大の要因となり、医療提供体制の崩壊を招く結果となりかねません。新規感染者数より医療の逼迫状況を重視したことについての知事会の心配は私も同感です。
 都道府県が実情にあった取り組みをしていくことが何より重要です。
(1)新しい政府方針への対応について
 そこで福祉保健部長にうかがいます。政府の示した「取組の全体像」では医療提供体制の強化が最初に掲げられていますが、この新しい政府方針に基づく病床確保や宿泊療養への対応について県としてどう取り組んでいかれるでしょうか。答弁をお願いします。

《答弁》 福祉保健部長
 本県では、次の感染拡大に備え、保健・医療提供体制の強化に取り組んでいるところです。
 まず、第6波の確保病床の考え方として、今後、感染力が2倍となった場合にも対応できるよう、国の方向性も考慮しつつ、最大確保すべき病床数を790床と推計し、これを入院病床と宿泊療養施設で確保、運用することとしております。
 入院病床については、第5波のピーク時から15床を追加し、最大620床の確保を見込んでいるところです。
 次に、宿泊療養施設は1施設151室を運用していますが、さらなる施設の確保に向けて取り組んでいるところです。
 なお、第5波では、これまで蓄積したデータを基にした退院基準の見直しにより、退院患者を出ロベースとして宿泊療養施設に移行し、入院病床を円滑に運用しましたが、第6波の病床ひっ迫時には、入院待機施設として、入口ベースでの柔軟な活用も想定しているところです。
 いずれにしても、県としましては、引き続き保健医療行政の努力が重要と考え、感染者の早期発見のためのPCR検査、早期隔離のための全員入院の堅持、感染者や濃厚接触者の特定のための調査を保健所の統合ネットワークにより実施することとしております。

《要望》高田由一 県議
 人口10万人あたりのピーク時の病床は全国で一番多いと聞いていますが、今後はぜひ、紀南地方での宿泊療養施設の確保について要望をしておきます。

(2)検査の拡大について
《質問》高田由一 県議
 次に、検査の拡大についてうかがいます。
 政府の新しい方針では、日常生活の回復についても述べられています。感染拡大を防止しながら、日常生活や経済社会活動を継続できるよう、行動制限の緩和の取組を進めていく、となっています。そこで言われているのが「誰もが簡易かつ迅速に利用できる検査の拡大・環境整備」ということです。これについては、何らかの理由でワクチン接種できない者を対象として、経済社会活動を行う際の検査を予約不要、無料とできるよう支援することになっています。そこで危機管理監にうかがいます。
 この政府方針を和歌山県内で実際に行う場合、どのような課題があるでしょうか。また、自らの意思でワクチンを接種していない県民については、この無料検査の対象となるのでしょうか。
 さらに、感染拡大時に、都道府県の判断により、感染の不安がある無症状者に対し、検査を無料とできるよう支援することにもなっていますが、これについても県内で具体化する場合どのような課題があると考えるでしょうか。危機管理監の答弁をお願いします。

《答弁》 危機管理監
 政府が発表した「次の感染拡大に向けた安心確保のための全体像」を踏まえた基本的対処方針において、日常生活や社会経済活動による感染リスクを抑制するために、緊急事態宣言下等における制限緩和のための「ワクチン・検査パッケージ制度」及び飲食、イベント、旅行等の活動に際し、ワクチン接種歴や陰性の検査結果を確認する取組を推奨する旨示されております。
 また併せて、感染拡大の傾向が見られる場合に、都道府県知事の判断により、ワクチン接種者を含め感染の不安かおる無症状の方に対し、検査を受けることを要請することが明記されました。
 これらに必要な受検に際し、健康上の理由や副反応の懸念等により、ワクチン接種を受けられない方も含め、都道府県が実施するPCR検査等の無料化を、国が支援していくことも併せて示されております。
 これを受けて、本県では、費用全額を国の支援のもと、PCR検査及び抗原定性検査を併せて約50万回分に係る経費等を計上し、今議会での補正予算の審議をお願いしているところでございます。
 課題といたしましては、本県は地理的に南北に長く、採取した検体を検査機関に運搬する時間に地理的な差が生じてしまうことや、検査を実施する薬局等の数にやはり地域差があることから、検査を希望する県民の検査機会が不均衡にならない体制を構築することが課題であると考えております。
 このため一般社団法人和歌山県薬剤師会など関係団体との連携等により、これまで申し上げた課題を克服し、出来る限り公平性を確保できる体制づくりを迅速に進めてまいりたいと思っております。

《要望》高田由一 県議
 ワクチンの副反応が心配という方も無料で検査が受けられるというお答えでしたので、確認しておきます。
 それで県内で50万回の検査となれば、これはPCRだけでなく抗原検査も入った数字だと思いますが、これまで県内で2年近い間に行ったPCR検査の総数は、7万回に届いていません。そこへ新しい方針で年度末までに50万回だと言われても、一体どこでそんな検査数をこなせるのか心配です。
 和歌山県内でそれだけの検査が必要な状況なら、大阪や兵庫などはもっとすごい数の検査需要があると思います。となれば、県外の民間大手検査機関にお願いするというのも難しいような気がします。しっかりと準備をお願いしたいと思います。
 また、感染拡大時には無症状の方も含めて無料検査といいますが、タイミング的に遅くならないかと心配です。感染者が少ないうちに囲い込むのが大切です。3回目のワクチンを前倒しするのであれば、検査の実施も前倒しでお願いしたいと思います。以上、要望です。

(3)施設や学校での定期的な検査の実施について
《要望》高田由一 県議
 次に、これは要望としますが、県では感染状況に応じて、これまで高齢者や障害者施設、あるいは感染の震源地となっている地域に抗原検査キットの配布をして、無症状者も含めて検査を行い、感染の拡がりを抑えこむ成果をあげてきました。
 こうしたこれまでの取り組みに加えて、児童の入所施設や保育園、幼稚園、小学校、学童保育など、ワクチン接種の対象年齢に満たない子どもたちが利用する施設では、クラスター発生を防ぐためにも、感染状況が一定のレベルを超えた段階で、定期的な検査を実施していくことが必要だと考えます。今回、答弁は求めませんが、これまで以上のしっかりした取り組みとなるよう要望しておきます。


2.盛土崩落と各種規制の強化について
《質問》高田由一 県議
 次に、土砂崩落と各種規制の強化についてうかがいます。
 今年7月3日におこった熱海の土砂災害を教訓に、盛土については政府においても「盛土による災害の防止に関する検討会」を設置し法的な規制について検討がされています。
(1)盛土の総点検の調査結果と今後の対応
 そこでうかがいます。和歌山県でも緊急の盛土の総点検をおこないましたが、その調査結果と今後の対応について、県土整備部長にうかがいます。

《答弁》 県土整備部長
 県は、危険な盛土を早期に発見し、適切に対策を行うことで災害リスクを低下させることを目的に、今年7月より盛土の総点検に着手し、航空測量データ等を活用して5,838箇所の盛土箇所を抽出いたしました。
 現在、現地点検が必要とされた561箇所のうち、土砂災害警戒区域に位置する76箇所において、点検を先行し対策工事が必要な箇所を2箇所特定いたしました。
 1箇所目は、湯浅町山田地区に位置し、行為者である民間事業者が盛土撤去に着手しています。もう1箇所は日高川町寒川地区に位置し、所有者の日高川町と土砂撤去に向けた協議を行っています。
 一方、現地点検が必要とされた残りの箇所については、年末までに点検を完了させるべく、現地点検を現在鋭意進めているところです。
 県といたしましては、今後更に、対策が必要な箇所を特定した場合には、当該箇所の盛土状況を踏まえ、所有者等に指導や監督を行うなど、適正に対応してまいります。

(2)盛土やソーラーパネルの設置規制について
《質問》高田由一 県議
 次に、盛土やソーラーパネルの設置規制についてうかがいます。
 和歌山県条例である「産業廃棄物の保管及び土砂等の埋立て等の不適正処理防止に関する条例」、以下、省略して土砂条例と言いますが、この条例と「和歌山県太陽光発電事業の実施に関する条例」、以下、太陽光条例と言いますが、この2つの県条例での規制強化についてうかがいます。
 まず、土砂条例についてです。2009年に制定され、この条例によって11月1日現在までに151件の申請が審査され、条例に基づいた許可やその後の点検等が行われてきました。和歌山県ではこの条例と当局のご努力により、この間、住民の安全と環境を守れてきたのではないかと思います。また、条例制定の経過では、当時、日本共産党県議団の松坂県議が、初当選以来、繰り返し湯浅町山田山の不法投棄の問題を県議会で取り上げ、条例制定を熱心に働きかけていたことの役割も大きかったと思います。
 さて、この土砂条例ですが、今回の熱海の災害などをうけ、県条例としてどうした強化が必要だと考えておられるかをおたずねします。私は、盛土などの事業中や完了後の定期検査の義務づけや監視、加えて土砂流出など不測の事態が起きた場合の対応策などが必要だと考えていますが、いかがでしょうか。
 また、傾斜地へのソーラーパネル設置についてもこの間、問題点が指摘されています。NHKの報道によると、専門家のデータをもとに全国の中規模以上の太陽光発電施設の立地を分析すると、災害リスクのある「土砂災害危険箇所」と一部でもかさなっている施設は全国で1,100カ所あまりあり、このうち249カ所は「土砂災害特別警戒区域」になっているといいます。2018年の西日本豪雨などでは、各地のソーラーパネルが崩壊する事故が多発しました。とくに太陽光発電の特徴として平地はもちろん、山林部分の地山に直接設置しても機能します。県内には、山の急傾斜のところにまるで黒い大きな絆創膏を張り付けたように、ソーラーパネルが設置されているところもあります。このようなものについては例えば今、鳥取県で検討されているのですが、傾斜30度以上の斜面には原則禁止とするなど太陽光発電条例の規制を強化してはどうかと思いますが、いかがでしょうか。
 土砂条例と太陽光条例、2つの条例の規制強化について、環境生活部長の答弁をお願いします。

《答弁》 環境生活部長
 議員からご提示のありました鳥取県の「盛土等に係る斜面の安全確保に関する条例(案)」につきましては、制定前であり、詳細は把握できていませんが、盛土等や斜面に設置する工作物の安全性を確保するため、事業内容や現地の状況に関わらず、一律の基準で規制するといった内容であると承知しています。
 一方、本県では、盛土などの土砂の埋立てについては、「産業廃棄物の保管及び土砂等の埋立て等の不適正処理防止に関する条例」により、外部からの土砂による埋立面積が3,000㎡以上となる特定事業場においては、計画の安全性を十分審査した上で許可を行うとともに、事業実施中の定期的な立入調査や完了時の検査により基準に適合していることを確認しています。
 また、斜面に太陽光発電施設を設置する場合につきましては、「和歌山県太陽光発電事業の実施に関する条例」により、地域の住民に対する十分な説明を求めるとともに、住民等の意見を踏まえた上で、盛土の有無や傾斜の角度といった一律の基準ではなく、安全性が確保され、環境との調和が図られているものに限り、認定を行っています。
 盛土や斜面に設置する太陽光発電施設に対しては、これらの2つの条例により、県民生活の安全確保を最優先に審査を行っており、県内の盛土や太陽光発電施設の安全性は十分確保されているものと考えています。

《要望》高田由一 県議
 現状で対応はできているということですが、確かに現地での立ち入り調査など、積極的に対応いただいていることについては、評価したいと思います。今後、新たな問題点がでてくれば条例の見直し、強化も躊躇なく検討されるよう要望します。

(3)森林法での規制について
《質問》高田由一 県議
 次に、森林法による規制、林地開発の許可制度についてうかがいます。
 現行の森林法では、個々の開発行為については林地開発の制度を使って規制がされていますが、総量規制という観点がありません。私はこれが必要ではないかと考えています。地域森林計画や市町村森林整備計画面積の何%まではいいとか、地域、地域で総量を規制していかないと、心配されている和泉山脈のように、あちこちにメガソーラー計画が乱立するという事態になりかねません。
 かつてのバブルの時代はゴルフ場の開発計画が乱立、現在はメガソーラーなどの計画と、森林と開発をめぐってはそれぞれの時代で様相はちがいますが、常に保全か開発かのせめぎ合いがあります。農業なら農業振興地域とそれ以外の農地に分けられていますが、林業では保安林制度があるのみで、林業そのものを振興する地域だとの位置づけがありません。和歌山県では3つの地域森林計画はありますが、あるからといって開発しようと思えば基準さえ守ればできる訳です。
 森林法による開発規制のあり方を、総量で規制するよう見直す時期にきているのではないかと私は考えますが、農林水産部長の考えをお聞かせください。

《答弁》 農林水産部長
 森林は、水源の涵養や災害の防止といった様々な公益的機能を有しており、森林法に基づく林地開発許可制度により適正な利用を図るとともに、特に重要な役割を果たしている森林に対しては、保安林制度で開発等の制限を行っております。
 また、本県では、環境にふさわしい太陽光発電事業の普及を図ることを目的とした「和歌山県太陽光発電事業の実施に関する条例」を平成30年3月に制定し、より規制を強化しているところです。
 近年、山林を開発する太陽光発電の計画が増加していますが、カーボンニュートラルの達成に資するとはいえ、二酸化炭素の吸収源である森林を開発してまで太陽光発電施設が設置されることには、違和感を感じています。
 議員お話しの総量規制につきましては、盛土の流出や太陽光発電施設等の崩落が生じた場合、人命に重大な危険性を及ぼすことから、県としては、森林法や太陽光条例等に基づき個別の開発計画を厳正に審査すべきであり、総量で規制する必要は無いものと考えます。

《要望》高田由一 県議
 答弁では、総量規制はなじまない、今の森林法では立木の伐採は保安林以外、届け出制ですが、実は昭和37年に森林法が改正されるまでは、たとえ民有林でも伐採は許可制だったとうかがいました。都道府県が伐採の許容限度と造林を行う箇所を、年度計画で定めていたようです。許認可権が県にあったわけです。森林の利用という場合、どうしても環境への負荷がかかることから、こうした許可制がひかれていたのではないかと思います。
 また、ゴルフ場乱開発の時期がありましたが、そのときは、これは直接、森林法での規制ではありませんが、いくつかの県で凍結や総量規制が行われていました。
 こうして過去を振り返るなら、森林法による林地開発の制度も見直し、総量規制や年度ごとの許可制というのもありうるのではないかと考えました。ぜひこうした観点も研究いただければと思います。

(4)盛土等の法的規制にあたって
《要望》高田由一 県議
 最後に要望です。盛土等の法的規制が現在、政府において検討されています。報道によりますと、宅地造成等規制法、いわゆる宅造法を大幅改正するようです。私は法制化にあたっては、地方自治体の独自規制を妨げない内容とすべきではないかと考えます。政府の定める基準が、地方自治体のより強力な規制を弱めてしまうようでは困ります。
 私どもも国会を通じて働きかけていきますが、県当局においても国への要請等、よろしくお願いしたいと思います。


3.子ども・女性・障害者相談センターでの職員の犯罪について
《質問》高田由一 県議
 次に、子ども・女性・障害者相談センターでの、職員による犯罪についてうかがいます。
 さる11月16日、県子ども・女性・障害者相談センターの職員が一時保護していた10代の少女に児童相談所内でわいせつな行為をさせたという容疑で逮捕されました。報道によると職員は、同センターで宿泊勤務中に深夜時間、施設内の部屋に少女を呼び出すなどしていたといいます。心や体が傷つけられ、一時保護の対象となった子どもに、もっとも平穏な環境を与えなければならないところで起きたこの犯罪に、私は衝撃を受けました。
 さらに驚いたのは、この事件の記事をインターネットで閲覧していると、同様のわいせつ事件が今年の5月、横浜市でおき職員2人が逮捕されています。また、2019年には福岡市や仙台市でもわいせつ事件がおき、逮捕者がでているとのことです。
 こうしたことが、なぜ児童相談所でおこるのか。ここまで繰り返されるということは、組織運営上の課題があると思わざるをえません。
(1)今後の対策と被害を受けた子どもへの対応について
 そこでうかがいます。今回の事件はなぜ起きたのでしょうか。二度と起こさないため今後、どのような対策をとるのでしょうか。また、被害を受けた子どもへの対応はどうなっているでしょうか。福祉保健部長の答弁をお願いします。

《答弁》 福祉保健部長
 このたびの子ども・女性・障害者相談センター職員の逮捕・起訴につきまして、被害者及び保護者の方、並びに県民の皆様に対しまして深くお詫び申し上げます。
 児童を守るべき立場にある職員としてあるまじき行為であり、本県の児童福祉行政に対する信用を大きく失墜させることとなってしまい、誠に申し訳ございません。
 県といたしましては、今回の事件を重く受け止め、今後二度とこのようなことが起こることのないよう、再発防止に全力で取り組んでいるところです。
 今回事件が起こった原因としまして、当該職員が一時保護所職員として当然持ち合わせるべき倫理観に欠けていた点と、夜間の職員体制について、職員配置が充分でなかった点が挙げられると考えます。
 事件発覚後、職員に対して、一時保護所運営マニュアル、職員職務規程について再徹底するため研修を実施したところです。今後は、異性児童に対する心理的、物理的な距離の取り方や児童の特性に応じた処遇方法等につき、ロールプレイや事例検討を交えた、より実践的な研修を実施し、職員の資質向上に努めてまいります。
 一時保護所の職員体制につきましては、国の基準を上回る職員を配置しているところですが、シフトの都合上やむを得ず、男性職員だけ若しくは女性職員だけで夜間勤務する場合が発生しておりました。事件発覚後、早急にシフトを見直し、夜間帯には必ず男性職員と女性職員の両方が勤務することとし、夜間の居室の見回りについては複数人で対応するよう体制を整えたところです。
 被害児童に対しましては、児童相談所の児童福祉司、児童心理司が家庭訪問による定期的な面談を継続するとともに、性暴力救援センター和歌山マインヘの通所を支援するなど、全力でフォローを行っているところです。性被害を受けた後に想定される抑うつ、フラッシュバック等、今後起こりうる様々な心身の不調を見逃すことのないよう、寄り添う姿勢を基本に置いた長期的な支援に努めてまいります。
 今後とも事件の再発防止に向け、また、県民の皆様の信頼を取り戻すため、職員一丸となってこうした取組を徹底してまいります。

(2)子どもからの相談を受ける体制について
《質問》高田由一 県議
 次に、これも報道によりますが、今回の事件は、外部の第三者から情報提供があり、職員を質したところ、行為を認めたとのことです。ことの発端が被害をうけた子どもからの告発ではなかったとするなら、保護中の子どもが施設の職員になぜ話ができなかったのか、たいへん疑問です。
 厚生労働省の一時保護ガイドラインでは、保護される子どもの権利擁護として、入所時に子ども向けのしおりなどで子どもの権利について明記することや、子どもの権利ノートを配布することを求めています。このノートは「子どもの権利条約」をもとに作られ、一人一人の子どもが幸せに生き、安心して地域や学校、家庭で生活できる権利を持っていることを書いたものです。困ったときの相談窓口も紹介しています。こうしたノートの配布などにより、子どもの権利やそれが侵害されたときの解決方法について、保護された子どもに説明するようになっています。
 センターでは、被害を受けた子どもからの相談を受け付ける体制がきちんとできていたのでしょうか。福祉保健部長の答弁をお願いします。

《答弁》 福祉保健部長
 「子どもの権利ノート」につきましては、平成13年度から活用し、令和2年度には児童の年齢に配慮した内容に見直し、入所する際、職員から丁寧に説明を行い手渡しているところです。
 また、一時保護所内に意見箱を設置し、職員に直接言いづらいことでも匿名で意見できるよう配慮しております。
 さらに、今年度から、外部の弁護士や社会福祉士等が児童と面談し直接声を聴く「アドボケイト事業」を、希望する児童に対して試行しており、今後拡充してまいります。
 今回、児童から被害の相談を受けることができなかった点については真摯に受け止め、このような新たな取組も取り入れながら、今後より一層児童の権利擁護に努めてまいります。

《要望》高田由一 県議
 たいへんな被害を受けた子どもさんが、こんな目にあったと率直に言えなかったという環境というのは、本当に本人にとっては耐え難いものになっていたと思います。ぜひ厳しく取り組みを見直すようお願いします。

(3)児童相談所全体の人員体制について
《質問》高田由一 県議
 この問題の最後に、児童相談所全体の人員体制についてうかがいます。児童相談所の人員体制は政府の方針もあり、この間、強化されてきたと聞いておりますが、現状と今後の取組はどうなっているでしょうか。様々な複雑な事例に対応するのに十分な体制となっているでしょうか。福祉保健部長の答弁をお願いします。

《答弁》 福祉保健部長
 年々複雑・困難化する児童虐待事案に対応するため、令和元年度の児童福祉法改正において児童相談所の体制強化が定められたところであり、本県におきましても、令和4年度までに児童福祉司、児童心理司、保健師等の採用・配置を計画的に進めるなど組織体制を整備しているところです。
 具体的には、県内2か所の児童相談所を合わせて、平成30年度は30名だった児童福祉司を令和4年度には47名に、児童心理司については13名から23名に増員するとともに、研修を通じて職員の資質向上にも努めてまいります。

《要望》高田由一 県議
 職員の数の上では1.5倍以上に充実しているということですが、ただ増やした反面、業務の質、子どもにきちっと対応できるスキルを身につけているのかどうか、こういうことが心配な点もあります。人間としての基本の部分となりますが、しっかり研修もしていただけるように要望します。


4.ユニバーサルツーリズムの推進について
《質問》高田由一 県議
 最後に、昨年の12月県議会でも取り上げました、障害者にやさしい観光地づくりというテーマで質問したいと思います。
 いま全国でも、高齢や障害等の有無にかかわらず、誰もが気兼ねなく参加できる旅行づくり、観光地作りにむけた取り組みが広がりを見せています。
 観光庁ではユニバーサルツーリズムと呼んでいます。私はバリアフリー観光という言葉の方がわかりやすいと思っているのですが、今回はユニバーサルツーリズムという用語で統一して発言します。
 昨年に続いてこの問題を取り上げるのは、新型コロナ感染症の影響が現時点で考えても、まだまだ世界的な収束を見込めないどころか感染再拡大も起こっており、観光もインバウンドに頼るのではなく、これまで旅行需要の掘り起こされてこなかった高齢者や障害をもった方にこそ、外に出てもらう、観光に来てもらうことが、当事者にとっても観光地にとってもウインウインの関係として求められているのではないかと考えたからです。
 ユニバーサルツーリズムに国内で先進的に取り組む地域では、事実として観光客が増加しています。その理由は、ユニバーサルツーリズムの主な対象者層である高齢者、障害者、乳幼児等の数が国内人口の3分の1に達し、これらの方々を含む家族旅行やグループ旅行などが大きなシェアとなること、ユニバーサルツーリズムに取り組むことで高質なおもてなしができる地域や施設として捉えられ、結果として健常者である一般観光客も増加するため、とされています。
 私自身、先日、体験したのは地元の白良浜で、Tシャツアート展という紀の国わかやま文化祭のイベントです。障害福祉サービス事業所等から募集した絵画等の作品を印刷したTシャツを、白良浜で洗濯物を干すようにつるし展示するという企画ですが、900枚を超えるTシャツの展示は圧巻でした。その様子を配付した資料につけています。その会場には、ビーチマットという普通の車椅子でもビーチに入っていける特殊なマット、買うと10メートルで30万円ほどするそうですが、それが設置され、また、大きな風船のようなタイヤがついたビーチ専用の車椅子が用意されており、実際に一緒に行った車椅子利用者も、ひさしぶりに波打ち際まで行けたと喜んでおりました。海水浴シーズンの白良浜では無理ですが、その他の時期に常設でこうしたものとお手伝いしてくれる方がいれば、もっと幅広い人に白良浜を楽しんでもらえるなと実感した次第です。
 話をもどします。観光客増加の実例をひとつ紹介すると、伊勢神宮です。現在、伊勢おもてなしヘルパーという常設の有償ボランティアが活躍されていますが、こうした取り組みもあり、車椅子使用者の観光が以前と比べて約12倍の、年間1万7千人以上の利用となっています。
 こうした実例は全国にも拡がっており、各地で力をいれています。例えば高知県では昨年、高知市内の2カ所に県としてバリアフリー観光相談窓口を設置しています。※配付した資料の左半分は高知県の取り組みですが、このセミナーに私もオンラインですが参加をさせていただきましたが、豊かな自然を障害者にも楽しんでもらおうという積極的な取り組みを県が音頭をとって推進しています。
 兵庫県では神戸市で来年、世界パラ陸上競技選手権大会が開かれます。これは、パラ陸上の10回目の節目となる大会で、東アジアでは初の開催となります。これに合わせるように、ユニバーサルツーリズムを普及させるための県条例化を目指しています。新しく就任した県知事は「世界一をめざす」と宣言しています。
 和歌山県としても、本格的に取り組むことが必要な時期に来ていると思います。そこで商工観光労働部長にうかがいます。
(1)県での取り組みについて
 これまでも取り組みはしていただいていますが、県としてのさらなる推進が必要ではないでしょうか。その意気込みについてうかがいたいと思います。
 また、受け入れる側の意識のバリアを取ることも大切です。日頃から障害者を受け入れているホテルや観光施設では、なじみ客ができて定着しています。県内の特別支援学校や障害者施設などの遠足や修学旅行で地元体験するなど、まず足下から促進していくことが大切です。そうした意味で、観光行政のサイドから教育、福祉分野への働きかけもすすめていってはどうかと思いますが、いかがでしょうか。答弁をお願いします。

《答弁》 商工観光労働部長
 観光客の皆さんに安全・安心・快適に本県にお越しいただくため、受入地域の宿泊・観光施設などのバリアフリー対応を推進していくことは重要と考えております。
 そのため、県では、県内の宿泊・観光事業者を対象にした「おもてなしセミナー」を実施する中で、バリアフリー観光に対する意識の向上を図るとともに、市町村が設置する公衆トイレのバリアフリー対応を含めた整備に対し、補助してきたところです。
 さらに、今年度は、国の「感染防止対策等支援」を活用した和歌山県宿泊事業者事業継続支援補助金により、宿泊施設のバリアフリー改修など、利用者の安全・安心を確保する取組を支援してまいりました。
 加えて、市町村にも協力いただきながら、観光施設のバリアフリー対応の点検や調査を行い、県で作成している観光パンフレッドやWEBサイトに反映させるなど、観光地のバリアフリー情報の発信についても充実させています。
 また、議員ご提案の「特別支援学校や地元障害者施設などの遠足で地元体験してもらう」ことにつきましては、既に特別支援学校では県内で体験学習を含む修学旅行や遠足を行っていると聞いておりますが、引き続き、観光における和歌山ならではの地元体験プログラムについて、関係部局へも情報提供してまいります。
 今後も、県内の宿泊・観光事業者をはじめ、関係機関と連携しながら、ユニバーサルツーリズムの取組を推進してまいりたいと考えております。

《要望》高田由一 県議
 このユニバーサルツーリズムの推進については、現在の森議長が2014年の2月県議会でも取り上げておられます。そのときも、しっかりやっていきたいとの答弁が出されておりますが、どんどん追い越されているような状況がありますので、ぜひ本格的に推進をお願いします。

(2)外出困難な方にこそリフレッシュを新型コロナウイルス感染症対策
《要望》高田由一 県議
 最後に要望します。これは、ひとりでは外出困難な障害をもった方たちにこそ、外出してリフレッシュしてもらおうという提案です。
 現在、新型コロナ感染症の影響で、本来、自由に外出できていた障害者施設に入所している方たちが、感染防止ということで、本当に厳しい外出制限が続いてきました。感染が落ち着いている今でさえ、行けるのは施設のとなりのスーパーまでとか言われるそうです。
 施設入所の方が、例えば旅行や外出をしようとすると、だいたいはいつもお世話になっている施設職員さんにボランティアとして、休暇のときに同行をお願いする。そのときの食費や交通費は、お願いした障害者自身が負担する、というのがよくある例です。つまり、お出かけをするのに、ヘルパーの分まで負担する、一泊旅行で障害の重い人だと2人分のヘルパーさんの分まで負担することもあり、ひとりで行くときの費用より2倍、3倍お金がかかることもあります。近頃はそうした方々に特化した旅行業者も出てきたようですが、それにしてもずいぶん高いお金がかかることになります。
 これまで、ゴーツートラベルやリフレッシュプランが利用されてきました。もちろん障害者がそれを利用できないということではありませんが、金銭的な負担は自由に移動ができる健常者と比べて大きなものがあります。
 そこで私は、そうした障害者も利用しやすいリフレッシュプランを企画し、例えばボランティアの介助者の分は補助率をあげるなど、ユニバーサルツーリズムに特化したスペシャルなリフレッシュプランとして、旅行代金の補助を実施することを提案します。私は、そのこと自体が受け入れ側のユニバーサルツーリズムの推進にもつながり、大きく役立つと考えています。
 この提案は、複数の部局にまたがって検討しなければならないということで、時間がかかるようですので今回は要望という形にしますが、次回の質問までにぜひご検討をお願いしておきます。



                                               危機管理官の答弁を聞く、高田由一県議(右)

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