2022年2月県議会 文教委員会 楠本文郎委員の質問概要記録
225日(補正予算等議案) 315日(付託議案審査等)

225日(補正予算等議案)
《質問》楠本文郎 委員
 私の地元では、小中学校の学級閉鎖が続いている。子どもの感染も戦々恐々とされているが、「何で教師が感染するのか」という言い方で言われると心が痛む。
 今、定期的に抗原検査を行う方向になっていると思う。国が各学校に配布した上に、都道府県がプラスして配布し、とにかく調子が悪かったら、先に抗原検査をする。そう言うと少し語弊があるが、調子は悪くないが心配というところで、抗原検査をやろうとなっていたと思う。そのことが今、物すごく大事な局面ではないかと思うので、現状について示していただきたい。

《答弁》 教育支援課長
 教職員についてもしっかりと感染対策をしているところであるが、対策をしていても感染するということは、防ぎようがないところでもある。体調が悪い場合は、出勤せず、すぐに医療機関を受診するということで、対応している。
 さらに、学校において体調が悪くなった場合は、配布された抗原検査キット等を活用し、対応しているが、抗原検査キットを活用した場合であっても、医療機関を受診してもらい、できるだけ早く対応するということは徹底しているところである。

《質問》楠本文郎 委員
 基本点については、答えていただいたとおりだと思う.。
 問題は、それぞれの学校で不安を払拭するために、教職員が抗原検査をするようになっているのかということと、検査をするだけの量があるのかという話になる。
 私が訪ねたいくつかの小中学校では、使ってしまったら悪いから使わないという状態がある。
 個人的な話であるが、少し喉がはしかいが調子は悪くないという経験があり、和歌山県庁へ出てくるために、とにかく抗原検査で陰性を確認して出てきた。数日たって鼻水が出て調子が悪くなったため、医療機関を受診し抗原検査をしてもらった。いつもの風邪だと診断され安心した。
 教職員が、こういう循環になっているかということについていかがか。
 また、国支給の抗原検査キットが足りているかということも重要だと思うがどうか。

《答弁》 教育支援課長
 抗原検査キットについては、不安があるからするというために配布しているものではない。無症状者に対しても精度は低い。学校においては、症状がある中で、すぐに医療機関にかかることができない場合にするということを示している。配備している中で、本当に必要なときに不足しないよう学校長や教育委員会の判断の中で使用している。
 また、国から配布された抗原検査キットは使用期限が切れたものもあるが、令和3年度の国の補正予算による補助金分、抗原検査キットを購入することも可能となっており、このことについても市町村教育委員会に対して、周知しているところである。

《意見》楠本文郎 委員
 この点は3回目になるため最後にするが、考え方が異なり、平行線の部分もあることについては申し上げておきたいと思う。
 「調子が悪くなったら医療機関にすぐかかれ」、これは同感である。
 ただ、調子が悪いとまではいかない中で授業を行い、話し過ぎて喉がはしかいのか分からないときなどに、一番役に立つのが抗原検査キットではないかと思う。そのような症状のときに、予防的に、予見的に使うようにしていかないと、学校において抗原検査キットは必要ないということになっていくと思う。
 子どもの問題ではなく、教職員の問題として、無症状であっても心配がある場合は使うというのが、抗原検査キットを学校へ配布した前提だと考えている。捉え方が違うように思ったため、私の考えを申し上げておきたいと思う。
 そして、十分にやるということで言えば、国から配布されているもの、市町村で購入できるもの、県立学校においては県で購入できるということでよろしいか。そう受け止めて、この質問は終わる。
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《質問》楠本文郎 委員
 予算説明書の「出」90ページの保健・給食管理運営で1億1120万円の増額、うち需用費が7450万5000円の増額となっている。この時期に増額するというのは、どのようなことなのか説明してほしい。

《答弁》 教育支援課長
 コロナ対策費を来年度に繰り越すことによる増額である。

《質問》楠本文郎 委員
 需用費で7450万5000円増額である。説明書きの保健・給食管理運営も1億1120万円増額である。減額予算がほとんどという中で、増額というのは目を引くので説明してほしい。
 イコールの場合もあるが「節」で需用費の増額となっている。説明書きでも保健・給食管理運営費で1億1120万円の増額。包含関係にはあると思うが、コロナ関係の衛生費用の使わなかった部分を翌年度に繰り越すのであれば増額ではないはずだが、補正予算で増額している。

《答弁》 教育支援課長
 12月に国の補正があり、学校でのコロナ対策に係る費用を今回要求している。予算の執行は来年度に行うことになっている。

《質問》楠本文郎 委員
 大体、人件費の減額と、コロナで子どもや保護者を集めたりする事業ができなかったことで減額にならざるを得なかった年度である。
 ただ、コロナ対策で補正がついたのであれば、補正の額がもう少し増えるはずである。減額の分と補正がついた分と合わせて、マイナスとプラスが出て、結果7400万円の増額になったのではないのか。

《答弁》 教育支援課長
 委員がご指摘のとおり、国の補正がついて増額した部分と、執行残を減額した分の差額でこれだけの増額になるということである。

《要望》楠本文郎 委員
 需用費というのは設備費とはまた違う中身があるかと思う。需用費として、国の補正がこれだけついたことと、減額分がいくらで、結果、需用貪が7400万円という細かな説明を後で教えてもらいたい。
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議案に対する採決
議案第28号 令和3年度和歌山県用地取得事業特別会計補正予算
は賛成多数で原案可決

議案第18号 令和3年度和歌山県一般会計補正予算
議案第21号 令和3年度和歌山県修学奨励金特別会計補正予算
は全会一致で原案可決


315日(付託議案審査等)
《質問》楠本文郎 委員
 新型コロナ関係で、「新型コロナウイルス感染症による小学校休業等対応助成金」というものがある。これは、学校が休みになったことで、保護者が休まなければならない状況のときに助成するものである。事業所の理解が得られず申請ができなかったり、期限が切れて申請できないという誤解があったりする状況がある。今のコロナの状況では、クラスターが学校、学級で続いて発生しており、事業は令和4年5月末まで拡張されていることから、現時点で、教育委員会としてどのような対応をしているのか示してほしい。

《答弁》 教育支援課長
 この事業は厚生労働省の事業であり、教育委員会所管のものではないが、文部科学省から市町村教育委員会等に情報提供をするよう依頼があったため、周知している。

《要望》楠本文郎 委員
 直接の担当ではないということを押さえながら、助成金の窓口が労働局であることも含めて、学校が知った上で保護者に教えてあげてほしいと要望する。
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《質問》楠本文郎 委員
 資料配付があった全国体力・運動能力、運動習慣等調査結果について質問する。コロナ禍で子どもたちの体力が低下した。コロナ禍の期間が長いので、体力低下は容易に想像できるし、全国的にも同様の傾向である。
 和歌山県として、体力測定をずっと行ってきていることからも、その結果に基づいてコロナ禍への対応をどのようにしていくのか。
 また、県教育委員会の分析で「運動する子としない子の二極化」があると指摘されている。「小学校男子の体力低下」という問題意識も掲げられていることから、これらの点を含めてどのように対応していくのか伺いたい。

《答弁》 義務教育課長
 コロナ禍における体力向上に向けて、基本的に密集・密接の場面を避けるなど、対策を講じた上で運動を実施している。
 運動する子としない子の二極化については、分析結果から中学校において特に顕著に見られる。この原因は運動部活動に参加している子とそうでない子に大きな差が見られるのではないかと考えている。
 また、小学校男子の体力低下については、全国と同じように県でも体力低下の傾向が見られる。これらの結果を踏まえて、今後、これまでも取り組んできたが、小学校対象の「きのくにチャレンジランキング」という、インターネットで団体・個人が運動の記録を競い合えるものがあるが、これを本年度魅力あるものに改修しており、来年度以降全ての小学校で取り組んでもらえるよう推進していく。
 中学校においても、日常的に運動することが大切であることから、例えば、これまでも取り組んできた「紀州っ子かがやきエクササイズ&ダンス」を、動画でいつでも見ることができるようにしている。現在では、1人1台端末もあり、家庭でもネット環境があれば見ることができるようになっているので、こういったものを活用しながら、全ての生徒がさらなる運動機会を創出できるように取り組んでいく。

《要望》楠本文郎 委員
 基本として押さえられているのが、体力は生きる力の源であるということである。人間として生きていく上での原点であるという捉え方の下で、多様な機会を保障していく学校現場の取組が大事だということである。チャレンジランキングというのを出されていて面白いと思う。しっかりと幅を広げていただけるように要望する。
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《質問》楠本文郎 委員
 「わかやまスクールパワーアップ」予算が1000万円計上されている。1校当たり50万円の上限であるが、瞬く間になくなってしまうのではないかと思う。どのくらいの学校数を想定しての予算となっているのか。

《答弁》 教育総務課長
 20校を想定している。

《質問》楠本文郎 委員
 20校というと、1校当たり上限50万円を申請すると1000万円となる。これは多くの希望が出てくると思う。独自の取組として財源が必要な学校がたくさんあるという前提に立っての施策だと思うが、この発想が出てきた背景、きっかけ、目的は何か。私はすてきな発想だと思っている。

《答弁》 教育総務課長
 県教育委員会では、数年前から、学校の裁量で行う主体的な取組を支援したいと考えていた。これまでは、県教育委員会が考えた事業を学校で活用してもらうことが多かったが、本事業については、各学校が企画提案を行うことにより、児童生徒や学校の主体的な取組を促し、それに県が直接予算をつけることで、学校教育の活性化と学校と地域の協働を促進したいと考えている。

《質問》楠本文郎 委員
 小学校や中学校で、廃品や古紙の回収をPTAの方々と一緒に行い、そこで得たお金を財源に各学校の独自の活動ができる。これは環境教育であるとともに、各学校の財源づくりであり、校長裁量の予算ができるということをこれまでお聞きしてきた。
 わかやまスクールパワーアップ予算は、例えば防災や熊野古道のマップ作成などにも使え、学校が自主的に活用できる予算という認識でよろしいか。
 また、状況によっては補正予算もあり得るのか。この事業は2年目、3年目とつけてもらえるのか。上限50万円なので、50万円未満の申請も含めると、もう少し校数は増えるのだろうが、各学校の自主的な取組を引き出す上でも、私はよい事業だと思った。この事業の今後の方向性について示してほしい。また「尖った資質・能力」とあるが、どういう意味か。

《答弁》 教育総務課長
 わかやまスクールパワーアップの事業の要綱は、4月に向けて作成中である。多くの学校から申請をしていただけたらと思っている。
 上限が50万円なので、例えば10万円で申請する学校もあれば、50万円で申請する学校もあるかと想定されるので、計算上は20校だが、より多くの学校の応募を期待している。
 この事業によって、それぞれの学校が、自主的に地域の活動に取り組んだり、児童生徒が取組を通して成長していってくれることを期待している。
  「尖った資質・能力」という表現については、子どもたちは皆宝石の原石であり、各学校の特色化を図り、児童生徒の個々の個性、長所を伸ばしていきたいと考えている。

《意見》楠本文郎 委員
 この事業は、学校独自の活動ができる裏づけになる。「地域の教育力を引き出す」が取組例として挙げられている。地域と一緒になって取り組める財源はなかなかない。地域の教育力を引き出すための、よいアプローチだと思う。
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《質問》楠本文郎 委員
 和歌山博物館施設デジタル化計画において、データベース化は単なる整理ではなく、専門的観点も必要であり、そのマンパワーをどう確保するのか。

《答弁》 文化遺産課長
 和歌山博物館施設デジタル化計画について、博物館等で収蔵している資料は、展示による劣化等もあることから、展示に制約がかかっている。また、コロナ禍の中で来館できない方もいることから、いろいろな形で、多くの方に、常に見ていただけるように、博物館等の収蔵資料を高精細画像・3D画像等のデジタルデータとして蓄積し、ウェブサイトで公開するものである。
 資料のデータベース化は、令和4年度から3年間で、それぞれ主要なものを集中的に実施する。各博物館の学芸員が通常業務の中で取り組むことになるが、そのモチベーションは上がっているように感じている。

《意見》楠本文郎 委員
 専門的なことであり、学芸員の皆さんの努力に支えられるしかないと思うので、モチベーションが上がるのは本当にうれしいことである。しっかりお願いしたいと思う。

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《質問》楠本文郎 委員
 地域の特別支援学級について尋ねる。
 委員から特別支援学校に係るご指摘があったが、支援を必要とする子どもたちが増えているというのが、どちらにしてもテーマである。
 以前の一般質問で、私も特別支援学校の問題を質問したのでここでは省く。各市町村の特別支援学級の状況を調べてみたところ、子どもの数が知的、情緒という形で極端に増えている。私が聞いた御坊市周辺の町の学級のことであるが、1から2へ、2から3へ、来年度4へと教室を確保していくこと自体が大変な状態で、町でもかなり問題になってきている。前提として、なぜこんなに障害がある子どもが増えているのかということを、共通の詔識にしておきたいと思うので、改めてこの点を示してほしい。

《答弁》 特別支援教育室長
 先ほどの質問でも回答したが、近年、平成19年の特別支援教育のスタート以降、特に発達障害、軽度の知的障害の子どもへの気づきやアプローチということがクローズアップされてきた。
 委員ご指摘のとおり、特別支援学級で増えているのは、自閉症・情緒障害特別学級に在籍する子どもたちと、知的障害の特別支援学級に在籍する子どもたちというこことになっている。
 まずは、学校の先生方が、発達障害の傾向のある子どもや、自閉症への理解が進む中で必要な支援への気づきというのがあり、必要な支援を子どものところへ届けるための教育の場として必要ということで増えている。それから、早期療育という形で県内の各圏域において児童発達支援センター等が充実してきている。保育所・幼稚園に行かずに、こういった児童発達支援センターのほうで、発達障害のある子どもや軽度の知的障害がある子どもたちが学んでいて、支援の継続性という形で、特別支援学級への入級を希望されているということも増えてきていると思っている。早期から支援の要る子どもたちへの適切な療育、その継続性、引き続いて行う教育の必要性ということで認めていただいて、今、特別支援教育を必要とする子どもの人数が増えてきていると思っている。

《質問》楠本文郎 委員
 子どもの発達、成長の状況に応じて、ハンディキャップが明確にあったらそのための支援を受けることができる、子どもを尊重した社会がどんどんと進化してきているという社会進歩の捉え方が必要だと思っている。
 特別支援学校の新たな設置は、これまでも県教育委員会として取り組んでいるが、より進める必要があると同時に、市町村のほうでもそういうことがあり得るという前提でもって、学校の建築をしていかないといけない。子どもの数は減っているが、障害のある子どもの特別支援学級は増えているという、このバランスを見るのはとても難しいが、社会進歩であるので、早め早めに対応する取組が必要ではないかと思う。
 子どもによっては、特別支援学級から特別支援学校へ、特別支援学校から特別支援学級へ転学する場合も当然あり得る。県教育委員会の先行した取組の事例を、市町村教育委員会にもしっかりと伝達し、共有してほしい。共有の問題はどうか。

《答弁》 特別支援教育室長
 児童生徒の就学に関しては、市町村教育委員会との連携も密にし、県立特別支援学校に入学する子ども、特別支援学級に入級する子どもの状況についても、常々情報共有を行っている。
 今後は、就学に際する幼児段階の子どもの動向等についても、県福祉部局、市町村福祉部局とも連携し、市町村教育委員会と情報共有をしていきたい。
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《質問》楠本文郎 委員
 次は発想がまるで変わって、串本古座高校における宇宙探究コースの新設の経過について質問する。
 全国初のことであり、とてもインパクトのある知事の会見であった。内容的にも大きな関心を呼ぶ事項で、この議会でも4人の先輩議員が質問した。それぐらい、皆さんがいわゆる歓迎の方向で、早く具体化してほしいと求められるような質問になったと思う。そのこと自体を問うつもりはないが、出発点として私が懸念した事項について確認したい。
 教育委員会制度が変わった。あえて新教育委員会制度と呼ぶが、これは教育委員会と首長との関係で教育委員会制度が変わったと認識しているが、その関係を原則的な部分として整理をしてほしい。

《答弁》 教育総務課長
 教育委員会と首長との関係については、これまでと同様、独立した行政委員会となっている。

《質問》楠本文郎 委員
 首長との関係は独立しているが、知事が串本古座高等学校の学科・カリキュラムを新設すると言う。それは教育委員会の詮議事項ではないのか。知事が発表するのはよいが、教育委員会内ではどこまで議論しているのか。県には、地域に根差した教育振興計画を知事部局・知事と合同で協議する総合教育会議がある。ここでの議題になっていたのか。そこが前提となり、教育長ではなく知事が記者発表するのが道理だと思う。

《答弁》 教育総務課長
 首長と教育委員会が協議し、大綱を策定しており、本県では教育振興基本計画を大綱としている。「県立高等学校教育の充実と再編整備に係る原則と指針(案)」は教育委員会で協議を行ってきたところである。特に、その中でも、各エリア・地域における各高等学校の在り方については、教育委員の学校訪問で得た知見も交えながら検討してきたところである。串本古座高等学校の改善、改革の方向性として、ロケット発射場を生かした、この地域でなければ学ぶことができない特色ある教育活動が必要との認識は共有されてきた。具体的な構想案として、12月22日の教育委員会定例会の協議においても、宇宙探究コースの新設について、担当課から説明を行い、今後構想より具体化していくことについて、ご理解を得たところである。

《質問》楠本文郎 委員
 教育委員会として、宇宙探究コースは共有していたという答弁になるのか。

《答弁》 教育総務課長
 そのとおりである。

《質問》楠本文郎 委員
 そこは大事だと思う。カリキュラムに関わるような細かなところは、教育委員会事務局で済ませ、教育委員に一つずつコースまでご審議いただくという形にはなっていないと思う。
 ただ、宇宙探究コースは別格だと思う。だからこそ、知事が記者会見の中で発表したのだと思う。人工衛星に関わるコースをつくろうということであるので心配している。普通の高校が、宇宙開発に関わるような高度な内容を、どのように教えるのかと思った。発想としては、人工衛星に最初に乗った毛利先生にずっと講演してもらわなければ、正しい教育のカリキュラムができないのではないかと思う。そこまでの議論はまだできていないだろう。令和4年度はどのような講座に関心があるのか、どのようなことが必要なのかをしっかり考えていこうということであると思う。
 串本古座高校では、何をどのように教えるのかという議論は、もうその時点では出来てあったと理解してよいのか。

《答弁》 県立学校教育課長
 学校の状況ということであるが、串本古座高校の地域との絡みも含めて答弁させていただく。
 串本古座高校では、地域の町や町教委、商工会、観光協会などに参加いただいている串本古座高等学校地域協議会というのが組織されている。学校と地域が密接に関わりながら教育活動に取り組み、いろいろなご支援をいただいているところである。その協議会から令和2年11月に、ロケット発射場がある地域として、ほかでは学べない宇宙の学習を串本古座高校に導入してほしいという要望書が提出されていた。
 そのようなことから、地域の希望も踏まえて、宇宙というのは特殊なものであるので、来年度すぐというわけにいかないが、令和6年度に向けて様々な専門家や、宇宙に関する大学の先生であったり、あるいはそういった企業の関係者であったり、知見をいただきながら、今後、検討していくことが必要であると考えている。
 串本古座高校においては、ロケットの発射場ができるということを踏まえて、今年度当初から、来年度に向けて、総合的な探究の時間でどういった形で取り入れられるかということについて、既に議論されている最中であった。
 もちろん、令和6年度に向けては、学校とも十分な協議をしながら進めていくことになると思っている。学校に対しては、校長に私どもからも事前に説明なども行い、校長から教職員にも周知されている。
 今後、細かいことは、また学校と一緒になって進めていきたいと考えている。

《要望》楠本文郎 委員
 気になるのは、学校の教職員が全然知らなかったということが、質問のきっかけである。これだけ高度な選択科目を新設するには、誰が何をどのような形で教えるのかという教育編成プログラムが学校の中で共有されてからスタートということになるのが当たり前であり、原則である。
 そういうことも含めて教育委員会として把握されていて、なおかつ先ほどからの答弁にあった、地域の教育振興のための施策に関する基本的な計画を定める教育振興基本計画が教育基本法の改正の中で新設されたのは、そういうことだと思うので、その原則も押さえて、今後とも運んでいただけるようにお願いする。
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《質問》楠本文郎 委員
 新しい取組で出されているのが学力テストである。私が把握している子どものテスト観は「テストがない国へ行きたい」という子が結構いるというものである。中学校2年生になると、年間どのくらいテストを受けているのかをまず報告してほしい。
 また、今の日本の中学校、高校にかけて、過度な競争社会になっているという指摘は、実は国連で言われている。これは日弁連が資料を出しているのだが、2019年の国連子どもの権利委員会で「ストレスの多い学校環境、過度に競争的なシステムを含む」から子どもを解放するための措置を強化せよと指摘されている。
 そのような中に子どもたちがいるという認識を文科省はどのように考えているかというと、文部科学省が出している全国学力・学習状況調査の実施要領で、調査の公表については説明責任を果たすように言いながら、一方、調査により測定できるのは、学力の特定の一部分であること、学校の教育活動の一側面であること等を踏まえ、序列化や過度な競争が生じないようにする等、教育上の効果や影響等に十分配慮することがうたわれている。
 この要領に基づいて、和歌山でも県独自の学力テストをやろうとなっている。それが、去年、私はやめようと言ったのだが、2回にするという回答であった。これはと思った。この点の経過を、まず教えてほしい。

《答弁》 義務教育課長
 中学校2年生は、学校によって違いはあるが、いわゆる期末テストや中間テストと言われる定期テストは、大体どの学校でも年間5回行われていると把握している。そこにこれまで、県の学習到達度調査を年間1回実施してきた。また、市町村教育委員会独自で別に調査を実施しているところもある。
 それから、過度な競争社会ということについては、これまでも県の学習到達度調査の実施に当たっては、全国学力・学習状況調査の実施要領も踏まえながら、生徒への丁寧な説明や公表等において配慮が必要ということで、実施要領において、過度な競争にならないようにという公表の仕方等についても、記載をしているところである。
 今回、2回の調査を行うということについては、全国学力・学習状況調査の中で、小学校のほうは全国平均と同程度ということで、一定の成果が現れている。しかし、中学校に大きな課題が見られるというところを踏まえて、きめ細かく、中学校に入ってきた子どもたちを調査することによって、弱点を克服する、あるいは学校の授業をさらに改善していくという目的で、今回、新政策として考えたところである。

《質問》楠本文郎 委員
 私は、悉皆調査ではなく抽出調査が、何が、どこでつまずいているのかを分析するのによい方法だと思っている。それが、悉皆調査を年2回行うことにつながるというのが、理由として分かりづらい。このことは付け加えてもらいたい。
 その上で、年2回のテストを作成するのは誰で、採点するのは誰で、全体の分析をするのは誰で、児童生徒個人の課題を把握して個に応じた復習教材・補充教材を提供するのは誰で、補充学習をするのは誰で、学年・学級の傾向を把握して授業改善を図るのは誰なのか、それぞれの主体を示してほしい。
 業者委託をすると聞いているが、どのようにして選ぶのか、業者対象の範囲はどのぐらいなのか、県学力テストの情報は究極の個人情報になるが、どのようにして保全するのかも示してほしい。

《答弁》 義務教育課長
 問題作成や採点、分析、教材の提供は、学習到達度調査の中学校版の実施業務委託に係る公募型プロポーザルで公募している。それに応募した業者の中から、最終的に委託業者を決定し、その委託業者が行うことになる。補充学習については、各学校で教員がすべきものと考えている。授業改善も同じである。この業者の範囲については、全国の業者である。
 個人情報については、これまでの学習到達度調査も同じようにしてきたが、教育委員会及び学校は調査において知り得た個人情報について、それぞれが遵守すべき地方公共団体が定める条例に基づき、適切に取り扱うように示している。また、この委託に係る実施要領において、委託業者に対してはプライバシーマーク付与事業者またはISMS取得事業者であることを参加要件とし、個人情報保護遵守の徹底を図っている。
 悉皆調査とする理由については、県内全ての中学生に対して、学力の定着状況をきめ細かく把握、分析し、個々の生徒への学習指導の充実改善に役立てるためである。

《意見》楠本文郎 委員
 悉皆かどうかというところも、テストで評価し個別の子どものつまずきを把握するのも業者がするということであるが、授業をするのは教科担任であり、小学校であればクラス担任である。そうであるにもかかわらず、マイナスの部分、つまり落ちている部分が何かを教員は知らなくてよいのか。クラスの中で、この子のつまずきは放っておけないから居残りをさせるという営みをするのが、教育をつかさどる教員のプロフェッショナルの部分ではないかと思う。
 業者が何につまずいているのかを調べて「あなたはここがつまずいている」と教材を持ってきて、その部分をテストするとなれば、学校の教員は何をしているのかという感じになってしまう。それこそ、プロである教員が責任を持たないといけない部分ではないか。それを、業者のテストを全員にさせるとはどういうことか、というのが私の感覚である。この議論は、今年1年で終わらないと思うし、続けていかないといけない。
 私のところに送られてきた「調査結果の概要について」の中では、「知識・技能を問う問題についてはおおむねできている。ところが、知識・技能を活用する問題や記述式の問題については依然として課題がある」と示されている。これは対面形式で解決するものではないか。ペーパーテストで何回も同じことをさせるのではなく、対面で子どもに「どうしてこのように思ったの」と聞くことではないか。教科担当のプロである教員のすべきことを取り上げないでほしいと申し上げて、私の質問を終わる。
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議案に対する採決
議案第52号 和歌山県立学校等職員定数条例の一部を改正する条例
は賛成多数で原案可決
日本共産党 楠本文郎委員は反対
杉山俊雄 議案に対する反対討論 録画中継(2900)

議案第51号 教育職員の給与に関する条例の一部を改正する条例
議案第53号 和歌山県職員定数条例の一部を改正する条例
議案第54号 和歌山県大学生等進学支援金貸与条例の一部を改正する条例
議案第55号 和歌山県文化財保護条例の一部を改正する条例
議案第65号 訴訟の提起について
は全会一致で原案可決



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