2022年4月臨時議会 高田由一 質疑  概要記録
 録画中継
2022418
1.県内の観光地に与える影響
(1)IRによるマイナスの経済効果
(2)コンプやポイントなど囲い込みの影響

2.実施協定案について
(1)IR対策特別委員会におけるマリオ・ホー参考人の発言について
(2)採決前に概要を示すべきでは


1.県内の観光地に与える影響
(1)IRによるマイナスの経済効果
《質疑》高田由一 県議
 最初に、IRによるマイナスの経済効果についてうかがいます。
 IR区域整備計画の意義として、国際競争力の高い魅力ある滞在型観光の早期実現をめざすことが和歌山県において日本型IRを整備する意義と述べています。その経済波及効果が県内の観光地へのプラスになれば言うことはありませんが、区域整備計画でも外国人観光客を将来約110万人受け入れるとしながら、送客施設を活用した旅行者数の増加は、約12万人に過ぎないことになっています。これは日本全国に対しての数字ですから県内観光地への旅行者増加の効果はほとんどないのに等しいのではないでしょうか。
 また、IR来訪者の8割以上が日本人の想定になっています。後ほども述べますがIR全体の収益のこれも8割をカジノ収入が担っており、そこでもうけをあげようとすれば、おのずと来訪者の囲い込みにつながると考えます。これまで県内観光地に行っていた国内客が、IRが開業することによって目新しさも手伝って、旅行消費額をIRに振り向けるということは十分にありえる。結果として県内観光客を食ってしまうのではないでしょうか。こうしたマイナスの経済効果について知事はどうお考えでしょうか。答弁をお願いします。

《答弁》 仁坂知事
 和歌山IRは、高野山、熊野古道、温泉などといった本県の既存の観光地を目的に来訪していた方たちとは異なる、これまで本県を訪れることのなかった新たな客層を呼び込むことを企画していると考えます。
 具体的には、MICE施設で行われる企業主催の会議や、国際会議、インセンティブ・トラベル、展示会といったビジネスイベントや、エンターテインメントイベント、カジノなどを目的とした来訪者でございますから、これまでの県内観光客を取り込んでしまうということはございません。
 なお、議員ご指摘の送客数12万人は、送客施設を利用してIR区域外にIR側が送り出す人数でありまして、IR区域訪問者のうちIR区域外を訪問する人数を表したものではありません。これはもっと多いと思います。
 議員ご心配のような懸念は従ってごさいませんで、むしろ、通常、旅行をする際は、複数の観光地を訪れるケースが多く、IRという新たな観光スポットが生まれることで近隣の観光地への集客効果も、当然高まるものと考えます。
 特に、外国をはじめ遠くから来られる人にとっては、和歌山や近隣県が誇るIR以外の観光資源がとても魅力的に映ると思われ、大いに観光客が増えると考えるべきでしょう。
 さらに、県としては、こうした効果を最大化するために、県全域が世界から認められるより魅力的な観光地となるよう、納付金を活用して受入環境の充実や、周遊交通ネットワークの構築、プロモーションの強化に取り組む計画としており、これまでにない規模の観光客を県内に呼び込むことができるものと考えております。

(2)コンプやポイントなど囲い込みの影響
《質疑》高田由一 県議
 次に、コンプやポイントなど囲い込みの影響についてうかがいます。
 昨年7月の全員協議会の席で、私はクレアベストの梶参考人に、カジノへきたお客の囲い込みについてうかがいました。そのときにコンプといって、カジノでの掛け金額が多ければ多いほど、宿泊代や食事がタダになる制度があることについて質問し、実質的に金銭面での囲い込みにつながり、県内の観光地への影響についてどうなるか、うかがいました。
 そのとき梶参考人は、「後ほど県のほうともご相談申し上げて、そこはゆっくりご説明申し上げたい」と言われたが、このことについて未だにゆっくりご説明を聞いたことはありません。そのうえで、このコンプというのは、「お部屋代をただにするとか、お食事をただにするとか、これは言ってしまえば接待交際費の一部だと思ってください」ともおっしゃられた。こうしたやり方をされれば、県内観光地なかでも白浜のような大規模な宿泊施設があるところは、大きな影響がでるのではないでしょうか。そのことについてどうお考えでしょうか。理事の答弁をお願いします。

《答弁》 田嶋理事
 議員のご質問にございましたように食事代や宿泊代が無料になるのは、それに見合った多額の掛け金を拠出できる富裕層であり、こうした方々は、これまで本県を訪れることが少なかった新たな客層であると考えております。
 こうしたことから、既存の客層を奪い合うといったマイナスの影響はなく、むしろIRに訪れる富裕層を県内の観光地に送客することで、県内に新たな需要を生み出すものと考えております。

2.実施協定案について
(1)IR対策特別委員会におけるマリオ・ホー参考人の発言について
《質疑》高田由一 県議
 そこでまず、IR対策特別委員会におけるマリオ・ホー参考人の発言についてうかがいます。私は、マリオ・ホー参考人に対して、40年の実施協定を県と結ぶが、その間に政治状況が変わって、事業者ではなく政治の都合でIRはやめるとなった場合、県に対して損害賠償を求めるのか、と質問しました。彼の答えは「ノー」で、そういう「政治的なリスクは理解している」、「その結果、ライセンスが付与されなくても、市や県に補償を求めることはない」と明言されました。
 ところが、その後、知事は「事業者に責任がないのに勝手に事業を打ち切られれば、損害を補償するというのが当たり前の話なので、当たり前の話をそこに書いてあるのだろうと思う」と答弁されました。
 そこでハッキリさせるために実施協定案では、こうした場合の損害賠償について、書かれているのか、書かれていないのか、いるとすればどのような内容になっているのか、知事の答弁をお願いします。

《答弁》 仁坂知事
 実施協定につきましては、IR事業者に何ら帰責がないにも関わらず、一方的に県が事業を打ち切るといった県の責めに帰すべき事由により、IR事業者の事業継続が不能となった場合については、IR事業者が現実に被った損害の補償を県に求めることができる旨を規定する予定であります。
 ただし、IR事業の終了といった県や議会の決定の根底に、IR事業者の責めに帰すべき事由がある場合についてはこの限りではなく、この場合は、IR事業者の帰責事由として、県がIR事業者に違約金等を求めていくことになるわけでございます。
 なお、IR事業者が県に求めることができる補償の範囲については、逸失利益を含めないことを予定しております。県の責めに帰すべき事由による事業の終了の場合については、IR事業者の補償の請求に対し、適切に対応すべきだと考えます。

(2)採決前に概要を示すべきでは
《質疑》高田由一 県議
 次に、理事にうかがいます。この実施協定案については、その内容について区域整備計画の認定後、その概要を公表するとしています。この協定の締結については県議会の議決事項ではないと聞いていますが、県の募集要項でも「和歌山IRはIR事業者が設置・運営するものであるが、その実施は地域に及ぼす影響が大きいことから、和歌山県は実施協定の概要を公表する」としています。
 この協定の内容は和歌山市議会でも議論されたとうかがいました。例えば募集要項では、履行保証金について、金額や差入時期、返金条件等の詳細は実施協定案において示すとなっていますが、市会議員の質問に対し、市当局は、履行保証金は初期投資額4700億円の5%で、235億円と答弁している。概要さえ公表されていない実施協定案が一部、公になっているというのは納得できない。どうせなら区域整備計画案の採決前に、できる範囲で概要を公表してはどうでしょうか。答弁をお願いします。

《答弁》 田嶋理事
 実施協定のご質問についてお答えする前に、先ほど議員の方から区域整備計画140ページで周辺の観光客が減少するとご指摘がございましたが、そこに書かせていただいているのは、和歌山県以外の周辺の地域が減少する。それは和歌山県にIRという新たな観光資源ができることで他の区域に行っていた方が和歌山県の選択をして、和歌山県に行く方が増えるだろう。ただし、その後はもとに戻っていってむしろ全体として伸びていくということを書かせていただいていますので、そういう主旨でございます。
 実施協定についてでございますが、実施協定の概要につきましては、現時点で開示することはできないと考えております。
 まず、IR整備法上、実施協定は区域認定後に国の認可を受けた後で締結するよう規定されており、現状、確定していない状況であるため、というのが1つです。
 また、IR事業は公共事業ではなく、あくまで民間ビジネスですので、今後も事業者やその株主のグローバルなビジネス活動は継続されていきます。実施協定の内容が開示されることは、グローバルなビジネスの競争上、極めてリスクが高いという点がございます。
 これらのことから、IR整備法においても、実施協定の公表については、国土交通大臣の認可後、実際に締結した後に行うよう規定されているとともに、公表は実施協定「全文」ではなく、「概要」にて行うよう規定されていると認識しております。
 なお、大阪及び長崎県においても実施協定の公表は行われていません。


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