2022年9月和歌山県議会 杉山俊雄 一般質問 概要記録


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                                    2022921
1.生活保護世帯の大学進学者に対する給付奨学金について

2.中学校英語が難しい訳について

3.中学校の教育に関する二つのトピックスについて
(1)部活に関するトピックスについて
(2)学習に関するトピックスについて


1.生活保護世帯の大学進学者に対する給付奨学金について
《質問》杉山俊雄 県議
 議長の許可を得ましたので、早速質問に移ります。
 始めに生活保護世帯の大学生に、給付奨学金を支給してほしいとの思いで質問します。
 生活保護世帯の大学等進学率について、全国は77%に対して生活保護は37.3%で、全国の半分です。一方、和歌山県では、全県で73.5%に対して生活保護世帯は23.9%で、3分の1以下です。全国に比べて非常に低いのが特徴です。
 生活保護世帯の大学等進学率が低い理由は明白です。それは配付資料のグラフを見れば歴然です。グラフを見てください。
 上の茶と紫の折れ線グラフは高校進学率を示しています。茶は全国平均で、紫は生活保護です。格差は5%程度で、ほとんど差はありません。
 下の二つのグラフは大学進学率です。青は全国平均で、鶯色は生活保護です。大きな格差があります。
 2020年度の高等学校等進学率の全国平均は全世帯99%に対し、生活保護世帯は93.7%で、格差は約5%です。2019年度の和歌山県の場合は全世帯99.3%に対して、生活保護世帯は95.3%で4%の格差です。
 高校進学で格差がほとんどなく、高い進学率を示しているのは、生活保護法による高等学校等就学費(生業扶助)と県の就学給付金があるからです。高等学校等就学費(生業扶助)には教材費・授業料・入学料・入学考査料・交通費・学習支援費等があります。また県の就学給付金(年額32,300円)の支給もあります。このように生活保護世帯には高等学校の教育費のほとんどが給付されています。心配なく高校教育が受けられる条件が整っています。
 一方、生活保護世帯で大学などに進学した子どもは支給の対象外で、自立して生活を営まなければなりません。親元の世帯は対象家族の減少で、保護費が減額されます。高校を卒業すれば、自立して生活しなければならないので、生活費や学費を賄うのは容易ではありません。自宅外では家賃などさらに出費がかさみます。
 50年前、国立大学の授業料は月額1,000円で年間12,000円でした。家庭教師等のアルバイトをすれば、下宿をしても大学生活を心配なく送ることができました。
 今の物価は50年前と比べ約50倍になっています。一方労働者の賃金は約5倍にしか増えていません。賃金ベースで言えば、大学の授業料は年間6万円ぐらいが妥当ではないでしょうか。それが今では国立大学の授業料は年間58万円で、その上入学金は約23万円必要です。初年度には約80万円が必要です。私立大学ならそれ以上の学費等がかかります。自宅通学なら約10万円、自宅外なら約16万円の必要経費がかかります。生活保護世帯の子どもは、一人で自立して大学に通うことは困難です。奨学金は貸与が多く、大学卒業後に返済ローンが待っています。大学へ行くより就職する方が家計を助けることになり、大学進学を諦めざるを得ません。
 「教師になる夢も、負担増に耐えられないと進学を諦めた」という生徒もいます。「給付奨学金があれば安心して大学に行けるのに」、「生活に困っているから大学なんて考えられない」。そんな状況ではないでしょうか。
 生活保護世帯であるが故に教育の機会奪われています。大学等進学率の大きな格差を「生活保護差別」と捉えるべきだと思います。公教育には格差を是正する役割があります。貧困の連鎖を断ち切らなければなりません。
 私は6月の文教員会で生活保護世帯の子どもの大学等進学率の低い理由を尋ねると「様々な理由があると思うが、これといった決め手はないと思う」との答弁でした。
 私は教育の機会均等という観点から、経済力に応じて大学進学が決まり、その上、全国よりも非常に低い状況に危機感を持ってほしいと指摘しました。
 これに対し、教育委員会は「国・県の制度を知ることなく進学を諦めることのないよう、学校を通じて周知している」との答弁でした。
 確かに生活保護世帯及び非課税世帯への大学進学に関する国・県の給付奨学金制度があります。
 国では、令和2年度から「高等教育の修学支援」として、経済的に困難な学生の支援を目的として、授業料や入学金の減免とか、給付型奨学金の支給(80万円)を実施しています。しかし県は、生活保護世帯及び非課税世帯の何割が利用しているか把握していません。
 また県では、大学生等進学支援金として年間60万円を4年間貸与する制度があります。大学等卒業後、3年間県内に居住し、県内外に就職すれば免除となる制度です。今年度、50人の募集で42名が内定しています。対象は非課税世帯や生活保護世帯ですが、これらの世帯の何割が利用しているかも県は把握していません。
 令和2年度の生活保護世帯の卒業生は44名です。県の生活保護世帯の大学進学率23.9%を当てはめれば、10名程度が大学に進学している可能性があります。これを全国平均の大学進学率まで高め、「生活保護差別」を是正していく必要があると考えます。
 そこで教育長に伺います。「生活保護差別」をなくすため、県の制度については、生活保護世帯を含む低所得者世帯の大学進学希望者を対象に、4年制大学、評価3.5、3年間県内居住、日本学生支援機構の奨学金を受給していること等の条件をなくし、給付にすればより安心して進学できます。制度を変更してはどうですか。お答えください。

《答弁》 宮﨑教育長
 現在、国では、高等教育の無償化制度として、真に支援が必要な低所得世帯の生徒に対する授業料等の減免と給付奨学金があります。
 高い進学意欲を持っていながら、国の制度を活用してもなお経済的に進学が困難な生徒に対しては、県独自の支援策として、大学卒業後に県内就職等すれば返還免除となる和歌山県大学生等進学支援金を実施しているところであります。
 限られた財源の中で、少子化対策の一環として大学卒業後に県内に就職等することを支援することには合理性があり、意味があると考えております。

《再質問》杉山俊雄 県議
 国と県、合わせて受給できれば、良い制度だと思っています。しかし、県では、生活保護世帯の大学進学率が全国平均の3分の1以下です。私は、これだけの格差を教育差別=「生活保護差別」と捉えています。教育長はどう考えますか。お答えください。

《再答弁》 宮﨑教育長
 格差というふうにおっしゃいますが、県内で学びたい子どもの希望が県内でかなえられるように、できるだけ条件整備を行うということが、教育の目的の一つであると考えております。例えば、経済的理由によって修学が困難な子どもには、可能な限りの経済的な支援。それから、スポーツを頑張りたいなという子どもには、体育施設を整備したり。例えば、勉強したいという子どもには、補習授業をしっかりとする。今後も県内で学びたい子どもたちに対して可能性を伸ばせるように、最適な支援に努めてまいりたい。このように考えています。

《要望》杉山俊雄 県議
 私が問うたのは、教育格差をどのように認識しているかということを聞いたのです。それに対して格差を認識するのかどうかも、あまりはっきりと答えなかったと思います。
 格差をなくしていくには当然、生活保護世帯の子どもが何人いるのかということ、例えば県の条件付き貸与も何割、生活保護世帯の子どもが受給しているのか、あるいは国の制度も何割、生活保護世帯の子どもが受給しているのか、そういうことを一つも分からない、不明といわれます。それを分からずして格差が埋められるのか。格差をなくそうと思えば、どこに原因があって、そのためにどういう対策をするのか、ということをしっかりやらないと格差は縮まらない。
 前の文教委員会では「周知しています」ということでしたが、周知しているだけで、進学率を伸ばそうということが見られない。周知だけで進学率が上がるとは思えません。
 条件なしで給付にしていただければ、安心してできる。県内に住むのはそれなりの合理性があると言われますが、そうでなくても給付にして全国に行ってもまた帰ってくるかも分かりませんし、貧困の連鎖を断ち切ることは、社会に還元してくると思います。大学を出てそれだけの志気を持てば、和歌山県であろうと全国であろうと還元されてくる、生かせると思うので、ぜひそしてほしいと思います。
 県は周知していると言いますが、高校3年生で知ったって、もうすでに進学を諦めていると思います。高1に入った時点で大学へ行くよりも家計を助けるために就職したいと思って進学を諦める。私もそうでした。高1のときに進学コースに入っていましたが、高2では就職組に入って、進学を諦めた経験があります。高3でいくらこういうのがありますと教えてくれても、すでに進学を諦めている。周知の仕方もどうすれば希望が持てるのかというところまで、きっちり抑えてやってほしいと思います。
 それから、限られた財源と言われますが、日本共産党県議団でさくら支援学校の調査に行ったときに、隣接している北高等学校西校舎のプールを見てびっくりしました。50mプール4コースがあります。すごい室内プールです。ネットで調べたら、その建設費は5億6千万円、通学に1時間以上かかる子には寮もあります。水泳部14名のうち8名が寮に入っています。寮の建設費は2億円です。1日千円ちょっと、月3万いくらで生活できます。
 水泳部のアピールを見ると、基本的に週9回練習、いろんな機械があり、酸素カプセルが2機、エアロバイクというトレーニング機、パワーマックスというスピードや持久力をつける機械、インボディ370という体力の状況をいろいろ測定できる機会がある。
 それから、栄養学の先生を呼んで年10回ぐらい講義をし、アスリートのための食事ということで、練習後すぐにおにぎりが食べられるように週2回、女性の先生が作って用意する。
 アスリート育成のためには本当に至れり尽くせりの、これだけのことをしてくれる。それを全ての県立高校の生徒にしていただければ有り難いし、生活保護世帯の子ども40数名が全て大学へ行くとは限りませんが、20~30名だとしても年間60万円とすれば1800万円ですむと思います。ぜひ、そういうことをお願いします。


2.中学校英語が難しい訳について
《質問》杉山俊雄 県議
 中学校英語が難しくなっていることについて質問します。
 東京都世田谷区の中学校1年生が「先生が英語で全部話しているから分からない」と涙を流し、「1学期の定期テストの平均点が40点台」との記事を読んで大変驚きました。
 60年前に英語を習った人間には分かりません。小学校から英語を取り入れ、時代の要請だといわれても、日本語を十分に理解できていない子どもに、オールイングリッシュの授業は酷ではないでしょうか。私が米国で授業を受けているようなものだと思いました。
 今年4月から学習指導要領が変わり、「授業は英語で行うことを基本とする」になり、文法については「繰り返し使用することで、気づきを促したりする」としています。つまり文法が分からなくても進むと言うのです。
 なぜ中学校の英語が難しくなったのかを何人かの英語教師に聞きました。簡単にまとめると4つぐらいあります。
 1時間で見開き(2ページ)を学習しますが、単語数が多く覚えられません。小学校では600語学んでいますが書けません。中学校では新たに1,600から1,800語を学びます。
 動詞について言えば、今まで、見開きはbe動詞だけでした。今はbe動詞と一般動詞が入ります。進度が倍化し、ついて行けません。
 教科書本文の文章量が多く、内容が深すぎます。高校で教えている絶滅危惧種(専門用語)など、普段使用しない単語が中3で出てきます。
 文法では、高校で学んでいた「仮定法」など8種類が降りてきて、理解するのが困難です。
 オールイングリッシュで授業をする先生は「中1では、文法は日本語で説明します。そうでないと理解できないから」と言っています。
 別の英語教師は、中1の学年集会で「英語好きな人手を上げて」と言ったら3人程しか手を上げなかったと言います。「英語ムリなんよ。私」と話し、別の生徒は「英語が一番嫌い」と言います。小学校から英語に親しんでいるのに、どうしてこんなに英語嫌いが増えるのか不思議でなりません。
 和歌山大学の江利川名誉教授は、学習指導要領が変わったのは「1割のエリートを育成するために9割を切り捨てる、安倍政権の負の遺産」と指摘しています。「小学校で英語教科化」「中学校では英語で授業」の方針は、2013年4月の中央教育審議会答申には盛り込まれていなかったが、翌6月に「第2期教育振興計画」で閣議決定されました。理由は「結果の平等主義から脱却し、トップを伸ばす」ためと説明。決定過程には英語教育の専門家はいなかったと言います。
 語彙が倍増したのは中国や韓国への対抗心からで、「素人集団が妄想で決めたもの。今でも英語嫌いが増え、かえって英語力が落ちてしまう」と新聞のインタビューに答えています。
 外国との対抗心で、こんなに詰め込まれてはたまりません。ゆとりを持って基本をしっかり学ぶ必要があると思います。
 鳥飼玖美子(立教大名誉教授) は新聞インタビューで「中学生は英語の基礎を身につける最適な時期。中学校で最低限の土台と学習の自立性を身につければ、高校や大学、社会に出てから自分で学んでいくことが出来る。英語の基礎として、音とリズム、基本的な語彙、文の組み立て、論理構成を学ぶ。日本語と英語はまるで異なる。英語では主語が来て動詞が来る。文の組み立てをこの時期に教える。教科書の単語や簡単なフレーズを何度も繰り返し覚えることが大切」と語っています。
 また、将来話せるようになる英語の基礎を身につけるには、授業時間の確保、少人数学級と同時に英語を学ぶ面白さや音声学に基づいた音声とリズム、文法をわかりやすく教えられる教員の力量こそが必要とも語っています。そこで教育長に伺います。
 中学校英語について、現場の先生方は「語彙数が2倍になった」「文法では高校レベルが中学校に降りてきている」「本文内容が難しくなっている」と言っています。難しくなっているとの認識がありますか。また、その要因は学習指導要領にあると思いますが、見解お聞かせください。

《答弁》 宮﨑教育長
 平成29年度に小・中学校の学習指導要領が改訂されました。外国語学習を円滑に進めるため、小学校では、従来、小学校5年生から外国語に慣れ親しむために行っていた外国語活動を小学校3年生から始めるとともに、中学校から教科として学習していた外国語を5年生から始めることとなりました。
 小学校から教科化されてきたことで、中学校の学習指導要領では、互いの考えや気持ちなどを伝え合う言語活動がより重視され、生徒の興味関心を高めるため、日常的な話題のみならず社会的な話題に関しても扱うようになりました。それに伴って、語数や文法事項などの学習内容が見直されています。
 このように、小・中学校の体系的な教育を進める中で、中学校英語教育が大きく変わったと認識しております。県教育委員会としては、学習指導要領改訂に向けて、これまでも、小・中学校新教育課程説明会や研修などを通じて、改訂の趣旨や要点などを周知・徹底するとともに、学校訪問を通して、教員の授業改善を図ってまいりました。
 また、中学校英語担当教員が、小学校の学習内容などを十分知った上で指導に当たることが大切であることから、小学校の英語の授業を参観する機会を設けるなど、小・中学校の連携の推進を図っております。
 しかしながら、議員ご指摘の通り、中学校英語担当教員が変化に対する戸惑いや不安を感じることがあるかもしれません。大切なのは、生徒が興味関心を持ち学習することであり、そのことが生徒の英語力向上につながります。県教育委員会としましては、教員の指導力向上に資する研修を、引き続き充実させてまいります。

《要望》杉山俊雄 県議
 指導要領に沿って、着々と進めている。教員にはしっかり研修を積んで、指導力向上を図っています。
 私には、生徒が「英語が嫌い」といって泣いているのは、教師の指導力不足だと言うふうに聞こえました。いつも何か生徒が低ければ教員の指導力不足だと伝家の宝刀が抜かれますが、そういう言われると40年間、教師をしていた私にとっては大変辛いものがあります。
 「昔、新幹線授業」よく言われました。今は、それよりも速く授業が進む。一部の子しかついていけません。和歌山大学の江利川先生の「1割のエリート育成」との指摘通りだと思いました。
 鳥飼玖美子名誉教授は「基礎が大事、何度も繰り返し覚えることが大切」と語っています。しかし、今の授業ではゆっくり教えられる時間的余裕はありません。
 和歌山大学の江利川先生は「素人集団が決めた方向で指導要領が改訂され、英語が分からない子どもが増えたと思います」と、この指導要領の撤回を求めています。そのことを申し上げ次の質問に移ります。


3.中学校の教育に関する二つのトピックスについて
(1)部活に関するトピックスについて
《質問》杉山俊雄 県議
 「輝く紀の国の教育第47号」の教育長のエッセイ「二つのトピックス」について質問します。はじめに部活に関するトピックスです。大変違和感を憶えました。
 一つ目は部活が抱えている今日的な問題と過去から引きづっている問題を同列に述べていることです。
 学校規模が小さくなり、教員数の減少で休止・廃部する部活が出てきたり、複数校で一つのチームを作るなどは今日的問題です。一方、やりたい競技が部活にない場合や競技を専門に指導できる教員がいない問題は学校規模が小さくなったからではなく昔から抱えていた問題です。
 二つ目は教員の業務量増加を部活動の負担に矮小化している問題です。教育長は「部活動指導の負担により教員の業務が増え、多忙化や過労に繋がるとの指摘もある」と述べています。教員の業務の増加は部活動だけではありません。部活動はここ何十年も同じように行われています。教員の業務の増加は学テの学力向上事業に関わる会議や研究授業、それに伴う指導案・授業案づくり。また、教育委員会からの報告書類の処理等が多岐にわたるからです。
 部活動が長時間になってきた要因は勝利至上主義に偏った部活動のあり方が問題で、大会やコンクールの縮小や廃止を決断すれば解決すると思います。
 また、部活の負担による業務の増加が「教員への道を躊躇、断念する一因にもなっている」と述べています。しかし、教員志望を躊躇・断念するのは教員の働き方が異常な長時間労働であることが、教員養成大学の学生たちに浸透しているからです。多忙化を招いている教育行政の責任にあります。
 三つ目は専門性の高い教員が今の部活に「忸怩たる思い」を持っていると言うことです。教育長は「部活動に高い専門性を有し、より意欲的に取り組みたいと思っている教員指導者にとっては、今の部活動に忸怩たる思いを持っている人もいると思います」と述べています。「忸怩たる思い」とは辞書で引く「内心恥ずかしく思うこと」とあります。専門性の高い教員が現在の部活に「内心恥ずかしく思う」というのですが、意味が良く理解できません。他者の行動について語るときは通常使いません。多分誤用だと思います。他人に対して「恥だ」「腹が立つ」等の意味で使っているのだろうと文脈から推測されます。
 専門性を有しない教員が部活を指導することが「恥だ」と言われているように感じます。名もなき杉山のような専門性を有しない教員は部活指導を恥じなければならないのでしょうか。専門性を有しなくても一生懸命部活動に携わってきた一人としていたたまれない気持ちになってしまいます。教育長は何を恥と思っているのか具体的に述べる責任があります。
 文科省は「部活動の顧問は必ずしも教師が担う必要のない業務である」と答弁しています。県教委も文科省と同じだといっています。
 「恥だ」と言われたら、私だったら「馬鹿にするな」と言って、部活顧問を拒否すると思います。教育長の発言は、教師間に分断を持ち込むものです。部活を担当している教員はお互いを励まし合って、和気藹々と部活の面白さを共有し合っていることを知らないのでしょうか。
 四つ目は学校の部活の地域移行の問題です。文科省は地域移行を来年度から休日を段階的に移行し、令和7年度末を目途に進めていくとしています。休日の進捗状況を検証しながら平日も移行する計画です。
 検討会議の提言で「教師等の中には専門的な知識や技量、指導経験があり、地域でのスポーツ指導を強く希望する者もいる」と述べられています。
 教育長は「今後、学校の教員もスポーツクラブの指導者としての立場で指導に当たる仕組みを構築できれば、教員としてのやりがいや誇りを持って指導に当れることができると思う」と述べています。提言と同じ内容の発言です。
 専門性の高い教員が地域のスポーツクラブの指導員になった場合の所属はどうなるのかはっきり分かりませんが、教員ではありません。その専門性の高い教員が「教員としてのやりがいや誇りを持って指導に当れることができる」と言いますが、専門性を発揮できますが教員ではありません。教員としてのやりがいや誇りは学校教育の中で発揮してもらいたいし、分かる楽しい授業にやりがいや誇りが持てるような教育環境を整備してもらいたいものです。そこで教育長に伺います。
 「部活の負担が業務を増やし、多忙化や過労につながる」と指摘していますが、多忙化や過労の要因は部活ですか。
 また、専門性の高い教員の「忸怩たる思い」は、今の部活のどのような状況を言っているのですか。具体的に述べてください。専門性の高い教員に「恥だ」と言わせることは、教師間に分断を持ち込むことにつながりませんか。
 それから、県の地域移行の全体像や課題、また専門性の高い教員の所属等を教えてください。
 以上、3点にわたってお答えください。

《答弁》 宮﨑教育長
 部活動が、多忙化や過労につながる要因かについてお答えいたします。部活動は、学校教育の一環として、学習指導要領に位置付けられた活動である一方、今日までの部活動は、教員の献身的な勤務によって支えられており、長時間勤務の要因の一つであることや、特に指導経験がない教員には多大な負担となっているとの声もあります。同様のことが、スポ-ツ庁においても示されております。
 次に、「忸怩たる思い」が、部活動のどのような現状について言っているのかをお答えをいたします。部活動指導については、担当する部活動の競技経験があるなしに関わらず、全ての教員は日々、懸命に指導にあたっていることはよく承知しております。
 私は、教員を競技の専門性が高いか、高くないかで、区別するような発想は全くありませんでしたので、議員の質問を聞いて、正直、驚いております。
 教育広報誌の私のエッセイでは、「部活動に高い専門性を有し、より意欲的に取り組みたいと思っている教員指導者にとっては、今の部活動に忸怩たる思いを持っている人もいる」と記しています。
 私か直接、話を聞いた教員の「忸怩たる思い」とは、競技スポーツ経験で培ってきたことを、実際の公立中学校の部活動指導で十分に発揮できていない自分と、かつて、競技で凌ぎ合ってきた仲間の中に、高いレベルの指導で成果を上げている者がいることへの、白身の素直な思いであります。
 同僚教員のことを恥ずかしく思う等といった、議員の解釈は的外れでありまして、かえって、現場で日々真摯に部活動指導に取り組んでいる教員に失礼なことではないかと思います。
 運動部活動における地域移行の全体像や課題等についてですが、スポーツ庁有識者会議「運動部活動の地域移行に関する検討会議」の提言では、令和5年度から令和7年度までの3年間を改革集中期間とし、まずは、公立中学校等における休日の運動部活動から段階的に地域移行を進めると示されています。
 その中では、課題として、運営主体や指導者の確保、会費や保険等、保護者の費用負担などがあげられており、本県においても同様の課題がございます。
 また、休日の指導を希望する教員は、教員としての立場で従事するのではなく、兼職兼業の許可を得た上で、地域部活動の運営主体の下で従事すること等についても示されています。

《コメント》杉山俊雄 県議
 私は「忸怩たる思い」を誤用だと決めつけて質問しました。大変申し訳ありませんでした。
 しかし、教育長が紹介した専門性の高い教員に失望しました。専門競技の部活を持てずに、仲間の活躍と比較して、「悔しい・歯がゆい・腹が立つ」といっている教員を恥ずかしく思います。
 どんな状況でも自分が培ってきた知識や専門性を生かすのが、アスリート教員だと思うからです。中学校段階では技術指導より、基礎体力が7~8割だからです。
 それから、「地域移行で専門性を発揮したい」というのは理解できますが、教員としての立場・身分ではありません。
 教育長は「教員としてのやりがいや誇りを持って指導にあたれる」と言っていますが、立場を混同していると思います。地域移行では教員としての地位・身分で部活動を行うのではないことを申し上げ、次の質問に移ります。

(2)学習に関するトピックスについて
《質問》杉山俊雄 県議
 次に、学習に関するトピックスです。違和感の一つ目は「学テを苦手克服のチャンスにする」についてです。教育長は県学テ2回実施で「点数の高低にかかわらず、苦手や解らない所を克服して、理解を深めるチャンスにしてほしい」と述べています。各自の点数は7月初旬に返却されますが、弱点が分かる個票はありません。なければ苦手や解らない所を克服しようがありません。言っていることに矛盾はありませんか。苦手や弱点は日々の授業で克服すべきです。
 二つ目は教員に対して、学テ結果を生徒理解のツールにし、有効活用して力量を高め、生徒の学習意欲を高めて欲しいと言っています。学テが業務増加の要因になっていて、教員にゆとりがなく、教材研究する時間もない中で力量を高め、興味を引きつける授業をしろというのは酷です。教育行政の責任で教材研究する時間を確保してほしいものです。
 最後に教育長は「二つのトピックスをうまく噛み合わせて、中学校教育を充実していくよう努めてまいります」と述べていますが理解できません。部活で業務が増え、学テでも業務が増えています。業務が倍以上に増えている中で、増えている二つの要因をうまくかみ合わせて充実した中学校教育に努力していくと言いますが、困難です。かみ合わせて業務が減る方法を教えてもらいたいものです。そこで教育長に伺います。
 生徒には学テを苦手克服のチャンスにして欲しいと述べていますが、その材料がありません。チャンスにする具体的方法を教えてください。
 それから、教員には有効活用して力量を高め、学習意欲を引き出して欲しいと述べています。教材研究する時間をどこで生み出すのか。また、かみ合わせて業務が減る方法を教えてください。
 以上2点についてよろしくお願いします。

《答弁》 宮﨑教育長
 まず、県学習到達度調査を生かす具体的方法についてお答えします。
 調査結果については、7月上旬に、生徒個人の教科ごとや領域ごとの正答率等が記載された個票として、各学校に返却しています。
 その結果をもとに、個別面談等を行い、担任から各生徒に対して、苦手分野の克服に向けて指導、助言しています。また、個票とともに、一人一人の課題に応じた復習用教材が示されますので、それらを活用して学習内容の定着につなげています。
 教員は、調査結果から学習集団の特徴、定着度等が分かることから、今後の授業の改善・充実を進めることができます。
 次に、教員の業務軽減についてお答えします。
 教員が指導力向上に努めることは職責の1つであり、そのためには、教員の業務負担を軽減することが必要なことだと考えています。
 本県では、中学校において3つの点て業務軽減に取り組んでいます。
 1つ目の人的支援としては、国の制度を利用した教員業務支援員や学習指導員、部活動指導員等を配置し、その軽減に努めています。
 2つ目の県学習到達度調査については、今年度から採点や調査結果の分析、生徒個人の課題に応じた復習用教材の提供等を業者委託とすることで、教員の業務量を減らしています。
 3つ目の中学校の部活動については、地域移行を円滑に進めることにより、教員の負担軽減につなげようとしています。
 こうした取組により時間的な余裕が生まれるので、それぞれの教員が指導力向上に資するとともに、生徒に正面からじっくり向き合って丁寧な指導を行うことが、中学校教育の更なる充実につながると考えています。

《意見》杉山俊雄 県議
 「部活の地域移行と学テの業者委託を噛み合わせて、業務を削減する。時間的余裕が生まれ、教育の充実につなげる」と教育長は言います。
 6月の一般質問で、業務の負担増は教員の定数が少ないこと、また、スクラップアンドビルドができない県教委の姿勢にあることを述べました。噛み合わせても時間的余裕は生まれません。
 英語でも研修、学テでも研究授業。研究・研修のオンパレードです。「研究授業は教師のいのち」と担当職員から反論されました。「命である授業研究に、時間を惜しまず」と言わんばかりです。
 「教師のいのち」である日々の研究授業はどこで生みだすのですか。8時間の勤務時間の中で生み出す条件は、今の学校現場ではありません。それは小学校であれ中学校であれ、12時間近く勤務している実態を見れば明らかです。持ち帰るか、残って一生懸命教材研究をしています。
 かみ合わせて、どこで生まれるのか。労基法が通らない職場だから、自主的に研修するのは当たり前だと聞こえてなりません。それでいいのか。いくら労基法が通らない職場であっても、長時間労働の野放しは許されないことを申し上げ、質問を終わります。



宮﨑教育長の答弁を聞く、杉山俊雄県議(左)

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