2022年9月和歌山県議会 高田由一 一般質問  概要記録
 
 
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                                    2022916
1.安倍元総理の逝去にともなう国葬に係る県の対応について

2.旧統一協会と県行政との関わりについて

3.新型コロナウイルス感染症について
(1)今後の県の対策について(要望)
(2)公立学校の臨時休業の状況と抗原検査キットの活用
(3)一般検査事業について
(4)飲食・宿泊・サービス業等支援金について

4.食料の県内自給率向上に向けて
(1)県経済への波及効果
(2)学校給食への地場産物使用について(要望)

5.県個人情報の保護に関する法律施行条例の制定について


1.安倍元総理の逝去にともなう国葬に係る県の対応について
《質問》高田由一 県議
 最初に、安倍元総理の逝去にともなう国葬に係る県の対応についてうかがいます。
 岸田首相は、安倍晋三元首相の「国葬」を閣議決定し、9月27日に実施するとしています。私ども日本共産党は、これまでも談話を発表し、「国葬」が、「国家として安倍氏の政治を賛美・礼賛することになる」とともに、憲法に保障された内心の自由を侵害して弔意の強制につながることが強く懸念されるとして、その中止を強く求めてきました。
 なぜ安倍元首相を特別扱いにして「国葬」を行うのか。先日の国会の閉会中審査をみても納得できる説明はありませんでした。これは私の主観だけではなく、その後のある世論調査でも賛成38%、反対56%となり、前回8月調査の賛成41%、反対50%と比べて賛成が減り反対が増えました。
 閣議決定のみを根拠に実施する「国葬」は結局、時の内閣や政権党の政治的思惑・打算によって、特定の個人を特別扱いすることにほかなりません。「国葬」の強行は、憲法14条が規定する「法の下の平等」に反すると考えます。
 また、岸田首相は、8月10日の会見で、「国葬」は「故人に対する敬意と弔意を国全体としてあらわす儀式」だとのべました。わが国は、国民主権の国であり、一人ひとりの国民に基本的人権が保障されています。国全体でというこの考え方は、憲法19条が保障する「思想及び良心の自由」に反すると考えます。
 岸田首相は「葬儀委員長」として、「国葬」当日には、「哀悼の意を表するため、各府省においては、弔旗を掲揚するとともに、葬儀中の一定時刻に黙とうすることとする」という決定を行っています。これは「各府省」と、そこで働く労働者に「弔意」を強制するものです。こうした動きが、国の関係機関や地方自治体などに広がることが強く危惧されます。
 そこで知事にうかがいます。私ども日本共産党県議団は県民への弔意の強制につながるような県としての態度を取らないことを先日、申し入れしました。この「国葬」について県としてどのような態度で臨まれるのか、答弁をお願いします。

《答弁》 仁坂知事
 国葬は、国の儀式として実施するものでありまして、その儀式への案内がございましたので、県知事として当然出席し、心から哀悼の意を表する所存であります。
 また、和歌山県といたしましては、本庁舎に半旗を掲げ、弔意を表します。

《要望》高田由一 県議
 武道館に国会議員、地方自治体の首長など6,000人もの参列者を集め、「国葬」として大々的に儀式を行うこと自体が、日本社会全体に同調を迫り、「弔意」を事実上強制する危険をもちます。
 その国葬にあわせた形で県の行政機関が半旗を掲げるなどの行動をすることは、私は避けるべきだと考えます。
報道によりますと、各都道府県の対応もそれぞれのようです。くれぐれも県民への弔意の強制にならないよう対応することを求めておきます。
 「国葬」は、儀式に直接かかわる費用だけで2.5億円、それ以外にも警備費や外国来賓の接遇費の支出で14億円億円余と発表されました。費用の総額は、「国葬」を実施した後でないと明らかになりません。国会での議決もなしに、憲法とあいいれない「国葬」に、多額の税金をつぎ込むことは、認める訳にはいかないということを表明しておきます。


2.旧統一協会と県行政との関わりについて
《質問》高田由一 県議
 次に、現在の名称が世界平和統一家庭連合となっている旧統一協会と県行政の関わりについてうかがいます。この話題は連日、報道等でも取り上げられている折ですので、詳しくは述べません。旧統一協会は単なる宗教団体ではなく、霊感商法や高額献金強要を繰り返してきた反社会的カルト集団であり、全国霊感商法対策弁護士会のまとめによれば、昨年末までの35年間で受け付けた旧統一協会などに関する相談は3万4537件、被害総額も約1237億円に上るとされています。
 したがって、旧統一協会やその関連団体の活動に地方自治体が参加、関与することは、同会の活動へのお墨付きを与え、被害を拡大することにつながりかねません。
 
和歌山県内でも、関連団体が主催する行事「ピースロード」が実施されていたという情報もあります。
 そこで知事室長にうかがいます。県行政と旧統一協会あるいは関連団体との間で後援名義の使用承認などの関係はこれまでなかったのでしょうか。知事室長の答弁をお願いします。

《答弁》 知事室長
 議員ご指摘の旧統一教会の関連団体が主催する行事「ピースロード」が和歌山県においても実施されたことがあると聞いておりますが、県といたしましては、全く関与しておりません。
 県の後援名義の付与にあたっては、依頼があった事業が公共の福祉に寄与するものであるとともに、「広く県民に公開されていること」「特定の政治団体・宗教法人等の活動に関するものでないこと」「営利を目的としたものでないこと」を審査したうえで承認しているところです。
 また当該承認にあたっては、知事室秘書課の合議を基本的には要することとしており、秘書課において過去10年間の後援名義使用の調査を実施いたしましたが、旧統一教会やその関連団体に対して承認した実績はございません。

《要望》高田由一 県議
 他の自治体の例では、後援名義の問題だけでなく、行事への協賛や出席、寄付金の受領など様々な関わりが明らかになっています。今後、県もさらに注意をしてこうした団体との関係をさかのぼってチェックしていくことを求めておきます。


3.新型コロナウイルス感染症について
(1)今後の県の対策について
《要望》高田由一 県議
 次に、新型コロナウイルス感染症についてうかがいます。
 まず、今後の県の対策について要望です。
 新型コロナウイルス感染症の第7波で日本の新規感染者数は世界最多を続け、死者数は過去最悪となっています。医療機関や保健所は際限ない逼迫状態が続き、現場のご苦労は想像に余るものがあります。ある保健師のお母さんからの声を紹介します。「コロナ担当になった娘は、連日16時間勤務が休みなしで続いた日も数ヶ月ありました。過労死ラインはとっくに超えています。第7波では担当する老人施設から保健所はこの2年間何をやってきたんだと怒鳴られることもしばしば。保健師とて人間です。ロボットではありません。保健所が何をやってきたのだではなく、国が何をやってきたのだ、ということです」と訴えられ、「第8波がきたら保健師はみな潰れます」と言っておられます。本当になんとかしなくてはなりません。
 「重症者数は多くない」と言われていますが、ワクチンが普及し、オミクロン株が主流になるなかで、肺炎を起こす例は極端に減っています。そのため、どんなに全身状態が悪くても、酸素飽和度下がらなければ、亡くなる直前まで軽症です。このようにこれまでの新型コロナウイルス感染症で取ってきた対策だけでは、死者数が大幅に増えるという無残な結果となります。

 政府は、感染力が強いオミクロン数の特性を踏まえた全般的な対応方針が求められていたにも関わらず、この間、無為無策で、基本的な感染対策をというだけで、国民はお盆を前に、自粛していいのか、経済を回すためにも動いた方がいいのか、わからないまま8月を過ごし、結果、感染の大爆発を起こしました。そのようななか岸田首相は先日、新たな対応方針の全体像をようやく発表しました。
 しかし、いきなり感染者の療養期間を「10日間から7日にする。実施は今日からだ」と発表したように、現場や感染症対策を担う県行政をわざと混乱させているのではないかと思うほどの唐突さで事を進めています。この療養期間について、厚労省アドバイザリーボードの西浦教授は「発病後7~10日では十分な2次感染を起こし得るウイルス量がある」と指摘しています。たいへん心配です。
 県としての新たな方針もいま検討されていると思いますが、県民のいのちを守る立場で、国の方針にしばられることなく、しっかり手を打っていただくことを要望しておきます。

(2)公立学校の臨時休業の状況と抗原検査キットの活用
《質問》高田由一 県議
 それでは質問に移ります。
 まず、公立学校の臨時休業の状況と抗原検査キットの活用についてうかがいます。学校では2学期が始まり、夏休みが明けての子どもたちへの感染状況が気になります。県当局の報告では乳児、幼児を除く20歳未満の方の感染状況は、7月初旬の夏休み前にその割合がぐんと増え、その後の県民全体への感染爆発へつながりました。いままた9月に入り、徐々に子どもの感染割合が増えてきています。非常に心配です。そこで教育長にうかがいます。第7波が始まったとされる6月21日から現在にかけて、公立学校での臨時休業の状況はどうなっているでしょうか、あわせて、県立学校での抗原検査キットの活用は第6波のまんえん防止措置の時には、積極的に活用されたとうかがいますが、現在の活用状況についてはどうなっているでしょうか。教育長の答弁をお願いします。

《答弁》 宮﨑教育長
 公立学校の臨時休業につきましては、県福祉保健部との協議により、当該集団における感染者及び有症状者の数や感染経路等の状況を踏まえ、臨時休業の必要性や範囲を決定しているところです。
 第7波の公立学校における臨時休業の状況は、学級及び学年を対象としたものが301件、学校全体を対象としたものが12件となっております。
 抗原検査キットについて、県立学校においては、従前から国の感染症対策補助金等を活用し、各学校に配備しており、感染者の発生状況等に応じて、教職員や児童生徒を対象に適宜活用しています。また、特別支援学校の教職員につきましては、定期的に抗原検査キットを使用し、「まん延防止等重点措置」を実施すべき区域に指定されていた3月には週1回、8月以降には週2~3回に拡充して、検査を実施しています。抗原検査キットを使用することによって、わずかではありますが、校内へのウイルスの持ち込みを未然に防ぐことができた事例もあります。
 今後も、市町村教育委員会に対して、抗原定性検査等も活用しながら、適切に感染症対策を実施するよう周知を図り、感染拡大防止に努めてまいります。

(3)一般検査事業について
《質問》高田由一 県議
 次に、一般検査事業についてうかがいます。「感染拡大傾向時の一般検査事業」については、これまで私どもも要望をあげ、実施場所を増やしてきました。しかし、現時点でも県内あまねく全域で気軽に県民が受けられる体制にはなっていない状況です。とくに紀南地方では箇所数も少ない。有田市以南の地域では全体数107カ所のうち28カ所しか配置されていません。また、夜間や土日に対応できるところがほとんどなく、昼間働いている人などは非常に利用しづらい状況です。
 そこでうかがいます。一般検査事業をさらに充実させることはできないでしょうか。くわえて、すぐに体制整備ができるまでの間、発熱等、軽微な症状等がでた場合に利用できる自己検査・登録制度と同様に、感染不安がある場合にも抗原検査キットを自宅に送付し、自己検査し、陽性の場合は自分で登録手続きをするような対応ができないものでしょうか。こうした対応がとくに紀南地方では必要ではないでしょうか。以上の点について、一般検査事業におけるPCR検査および抗原定性検査をあわせた予算上の想定回数およびこれまでの検査実績とあわせて危機管理監の答弁をお願いします。

《答弁》 危機管理監
 感染不安を感じる県内在住の無症状者が対象となる、一般検査事業については、令和3年12月28日から開始しており、令和3年度予算からの繰越明許費分と令和4年度当初予算分を合わせて、76万回分を確保しており、令和4年9月13日時点で実施回数は、約10万件となっております。
 検査実施場所の確保に際しましては、議員ご指摘のとおり、地域偏在や夜間・休日の検査体制充実が課題と認識しており、これまで、薬剤師会を通じて、県内薬局への新規登録等の働きかけや、大手の衛生検査所を誘致することなどで、9月13日現在、県内全域で107箇所が開設されております。
 しかしながら、特に紀南地域においては、小規模な薬局が多く、個人で経営されている店舗などにおいては、通常の調剤業務を行いながらの検査対応が難しいこと、大手衛生検査所は、検体の搬送など迅速な対応が難しいことなどを理由に、これ以上の新設及び体制充実が厳しい状況にあります。
 抗原検査キットの自宅への配送を受けての自己検査については、国の制度上、所定の検査場所において検体採取を行い、その際、事前に研修を受けた者の立会が必要であり、議員ご質問の希望者への配付は困難です。
 このような状況の中、今月初旬には事業者の追加募集を行うとともに、既に開設している事業者に対して、営業時間の延長等の働きかけを行っており、今後も無料検査における、県民の利便性の向上に努めてまいりたいと考えております。

(4)飲食・宿泊・サービス業等支援金について
《質問》高田由一 県議
 この項目の最後に飲食・宿泊・サービス業等支援金についてうかがいます。
 提案されている補正予算では、飲食・宿泊・サービス業等支援金が予算化されていません。私は、今回、この支援金の対象業種の拡大とあわせ、コロナ禍による不況と原油価格・物価高騰への対応も含めた地域経済の回復に向けた県独自の対策を要望しようと考えていましたが、残念な思いです。
 まだまだ業種によってはきびしい状況がつづくなか、なぜ、支援金を終わりにしたのでしょうか。また、電気代や光熱水費などの値上げで、行政機関や公的価格が設定されている福祉部門などについては、その対策費用が今回の補正予算が組まれていますが、こうした対応は多くの業種に必要ではないでしょうか。こうしたことについて県は今後の対応をどのように考えておられるのでしょうか。商工観光労働部長の答弁をお願いします。

《答弁》 商工観光労働部長
 「飲食・宿泊・サービス業等支援金」は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大による営業時間の短縮要請や外出自粛要請に伴い、特に大きな影響を受けた飲食・宿泊業及びそれに関連する業種をはじめ、売上減少が大きい業種を対象に支援金を支給したものでございます。
 現在のオミクロン株による第7波におきましては、県内でも過去最多の感染者数を記録したものの、行動制限は要請しておらず、社会経済活動は維持されております。
 このような状況の中、県が実施した直近の影響調査では、コロナ前と比較して売上げが減少していると回答した事業者の割合は大幅に改善しており、また、様々な業種において営業努力により売上げを回復させている事業者も出てきています。
 そこで、今後の事業者向け支援については、売上げが減少した事業者への一律の支援策から転換し、前向きな投資を促す国の事業再構築補助金の伴走支援や、わかやまリフレッシュプランSをはじめとした需要喚起策、資金繰り支援等に重点を置いて実施していきます。

 原油価格・物価高騰への対応につきましては、地方自治体では特に影響が大きい業種に対するピンポイントでの支援など、出来ることは限られていますが、引き続き社会経済活動の動向を十分注視しながら対応してまいります。

《要望》高田由一 県議
 9月に入ってから新たな地方創生臨時交付金も創設されたようで、こうした交付金を活用してぜひ対策をすすめていただきたい。


4.食料の県内自給率向上に向けて
(1)県経済への波及効果
《質問》高田由一 県議
 次に、食料の県内自給率向上にむけてうかがいます。
 現在、日本は食料の6割以上を海外に依存しており、食料自給率が37%と過去最低に落ち込みました。その危うさが地球規模の気候変動やコロナ感染拡大の中で浮き彫りになりました。さらにロシアのウクライナ侵略が世界の食料情勢に深刻な影響をおよぼしています。世界の小麦輸出の3割を占めるロシア産・ウクライナ産の供給停止の懸念が強まり、小麦の国際価格は2008年の世界食料危機の水準を上回りました。両国に依存していた中東・北アフリカ諸国の代替え需要がアメリカなどに殺到し、食料争奪戦の様相になり、価格がさらに高騰するのは必至です。日本の小麦の主な輸入先はアメリカ、カナダ、オーストラリアなどですが、影響は免れません。
 中国など新興国の需要の伸びも国際相場を押し上げています。中国の大豆輸入量はこの10年で約2倍に増え、1億トンに達しました。日本の300万トンと比べ桁違いの規模です。世界の市場で日本がお金を出しても買えない事態を生じかねません。
 日本の食料の安定供給を揺るがす危機が現実化しかねません。食料自給率の向上は待ったなしの課題です。
 ところが現実はどうなっているでしょうか。これまで政府は、食料・農業・農村基本法に定められた計画で5年ごとに食料自給率の上昇を目標に掲げてきました。現状で38%前後の食料自給率を、10年後には45パーセントをめざすと何度も言ってきました。しかし、1999年から20年間の取り組みで、上がるどころか逆に下がっている状況です。
 この現状を打ち破るためにも私が提案したいのが、国全体で食料自給率が仮に目標の45%に達したときに、農業農村にどんな変化が起るのかシミュレーション、試算を地域毎にしてみることです。例えば和歌山県のカロリーベースの食料自給率は現在、27%です。資料1は果樹生産を主力にしているのですから、これ自体が悪い数字だというつもりはありません。逆にいえば果樹以外の穀物生産などに余力があるとも言えます。国全体で45%に現状より7%自給率をアップさせるなら、和歌山県でも少なくとも5%くらいはいまよりもアップするのではないかと仮定します。そのとき県内でも麦や大豆、芋類、畜産なども含めて多種多様の生産が進むはずです。そうしたときの経済波及効果を、シミュレーションして、この自給率アップがどれだけ県経済へ波及効果があるのかを見てみる。農業生産の経済波及効果は、中山間地にも幅広く及びますから農村の展望というのも見えてくるのではないかと思うのです。
 そして大事なのが担い手です。認定農業者などの規模もしっかりした農業者のみでその達成をするのではなく、地域の家族農業がその食料増産の担い手になるべきです。国連が、地球温暖化の防止など17項目の持続可能な開発目標(SDGs)を掲げ、国連「家族農業の10年」をスタートさせているように、その達成には家族農業・小規模農業の役割が欠かせないものに位置づけられています。
 すでに福島県などでは少し前のレポートですが、県内で農林水産業部門の自給率をあげた場合、どのくらいの経済波及効果があるのかレポートを出しています。カロリーベースの食料自給率をあげるのは和歌山県のような果樹県では難しい面もありますが、国が本気で農政のかじ取りを変えたなら、麦や大豆、芋類、畜産の自給率数パーセントの上昇でもかなりの経済効果が永年、続いていくことが期待できます。こうした試算があってこそ、国民世論としても食料自給率を高めることへの賛同が広がるのではないかと考えます。このような試算を県として研究できないものでしょうか。知事の答弁をお願いします。

《答弁》 仁坂知事
 食料の安全保障の観点から考えると、食料をベースにした国の安全保障を考えますと、国全体で食料自給率の向上を図ることは意味がございます。
 しかしながら、都道府県単位で自給率の向上やその経済波及効果を論ずることは疑問であります。
 なぜならば、県間で安全保障の観点から物資の移動制限が起きるなどということは、考えられないからであります。
 自給率の達成を含んで、およそ人為的に経済活動を制限しようとすると、人々の経済的利益は減ります。
 したがって、意昧のないことをやってはいけません。
 それぞれの地域では、気候、風土、地形などの特徴を踏まえ、長い年月を経て、その土地に適した作物の生産を行い、また生産性向上のための技術を培ってきたと思います。
 いうまでもなく、本県では傾斜地を活かした高品質な果実の生産や温暖な気候を活かした施設栽培など、収益性の高い農業を行ってまいりました。
 また、平野部を中心に稲作が行われてまいりましたが、「米どころ」と呼ばれる県に比べると平地が少なく、スケールメリットを活かせる大規模経営が難しいため、裏作で収益性の高い野菜を栽培するなど、複数品目の栽培により農業所得の向上をなんとか図ってまいった訳でございます。
 こうして、最も比較優位のあるものを作り、それを磨き上げ、利益が上がる様にするのが、農家の利益でございますし、地域の利益でございます。
 カロリーベースでの食料自給率向上だけを目指すのであれば、麦、大豆などの穀物やイモ類、畜産用の飼料米の導入に注力することになりますけれども、そのような取組は、本県では新たな設備投資や人件費に見合う収入がおそらく得られず、農業所得の向上につながらないばかりか、むしろマイナスになってしまうと考えます。
 したがって、「もうかる農業」に重点をおき、農業産出額の向上に取り組むことが重要であり、こういった取組が県内各地で展開されることにより、経済的な効果が得られ、県民の幸せにつながると思います。

《要望》高田由一 県議
 もうかる農業が大切といいますが、それはその通りです。麦など穀物の畑作や小規模の畜産が厳しいのはもうかりにくいからです。でも国が本気で食料自給率を上げようとすれば、こうした作物をつくってももうかる仕組みを新たに作らなければ自給率の向上は達成できないのはこれまでの経過をみればわかります。その新たな仕組みを国民合意のもとで作るためにも、地産地消がさらにすすみ、食料自給率もあがった状態の農村の姿を、夢を描くようにシミュレーションしてみることは、そんなに的外れな提案だとは思いません。
 和歌山県内でも多種多様な生産がさかんになってこそ、かつてのような環境と調和のとれた農業や農村、山村がよみがえるのではないでしょうか。こうした方向でこそ、県内の少子高齢化もくい止められる可能性があるのではないでしょうか。ぜひご検討をお願いします。

(2)学校給食への地場産物使用について
《要望》高田由一 県議
 次に、学校給食への地場産物使用について要望です。資料2にもありますように、各都道府県別に給食に地場産物を使う割合がでています。果樹県である和歌山で地元産の食材を使う機会は少ないようですが、同じような愛媛県では高い数字となっています。地元のすさみ町ではすでに学校給食を無償化していますが、できるだけ地元の農産物を食材に使おうとがんばっておられます。和歌山県全体でもまだまだ工夫の余地はあります。さらに取り組みを進められるよう要望しておきます。


5.県個人情報の保護に関する法律施行条例の制定について
《質問》高田由一 県議
 今議会にかかっている議案第95号、個人情報保護法施行条例についてうかがいます。この条例制定の根拠は、昨年5月に成立したデジタル関連法にあります。デジタル関連法は、首相のもとに強い権限と予算を持ったデジタル庁を新設、国や地方自治体のシステムや規定を標準化・共通化して、個人情報を含むデータの利用を強力にすすめるとしています。
 このことで地方自治体がもつ大切な個人情報を、匿名の加工をすることを条件に、営利企業が利用できるようになります。すでに県では早い段階から非識別加工情報として情報提供ができる体制を作っていました。県ホームページにも個人情報ファイル簿として作成・公表されたものがリストアップされています。資料3は一部抜粋したものですが、かなりセンシティブな個人情報が含まれたものばかりです。
 県当局の説明では、これまでのところ、非識別加工情報としての利用はされていないようですが、個人情報保護法の改正で来年4月から全国の自治体で、個人情報を含むデータの利用が始まるため、今後、これらの個人情報を利用したいという企業が現れれば、県が情報を匿名加工したうえで、利用者に渡すことになります。
 今回の条例制定の最大の目的は、匿名の加工情報としてそれを営利企業に売り渡すことにあると考えます。
 行政機関等匿名加工情報制度は自治体にとっても負担になると思います。個人情報を匿名加工するためにその作業を外部に委託をすることになります。膨大で詳細な加工前の個人情報が、委託先の外部の民間会社に渡ることになるため本当に個人情報が守れるのか、私はこれまでの個人情報流出の事例をみればそんな保証はできないと考えます。
 そこでうかがいます。今回の条例制定の行政機関等匿名加工情報制度において、個人情報は本当に守れるのでしょうか、匿名加工をする段階で漏れる可能性もあるのではないでしょうか。総務部長の答弁をお願いします。

《答弁》 総務部長
 和歌山県個人情報の保護に関する法律施行条例案は、個人情報の保護に関する法律の施行に必要な事項を定めるものであり、行政機関等匿名加工情報に関しては、その利用に係る手数料のみを定めるものです。
 同法の規定により、県が行政機関等匿名加工情報を取り扱う場合には、情報の漏えい防止に必要な安全管理措置を講じなければならず、加えて、正当な理由なく個人の秘密に属する事項を外部に提供した場合には罰則も適用されます。
 また、同法の規定により、県が行政機関等匿名加工情報の取扱いを外部に委託する場合には、委託先も県と同じ安全管理措置を講じなければならず、罰則も適用されます。
 なお、再委託、再々委託等を受けた者も安全管理措置を講ずる必要があることから、委託先には「2以上の段階にわたる委託を含む」と規定されているところです。
 県としましては、個人情報の保護について十分な措置が講じられるよう、法の規定に基づき適切に運用してまいります。

《意見》高田由一 県議
 昨年3月、スマホを持つほとんどの人が利用していると言われるほどのユーザーをもつコミュニケーションアプリ「LINE」で、ユーザーの個人情報が中国から閲覧可能になっていたことが大問題になりました。当時の武田総務相は、総務省のLINE利用を停止すると発表するまでにいたりました。この問題の本質は、2017年に施行された中国国家情報法によって、中国当局が国内の企業に対し、個人情報の提供を強要できるようにしたもとで、中国国内の企業にLINEの個人情報の閲覧をフリーにさせていたことにあります。この国家情報法では、いかなる組織および個人も、法に基づき国家諜報活動に協力し、国の諜報活動に関する秘密を守る義務を課していること、求めに応じて情報を提供した組織、個人を手厚く保護し、表彰や報奨までおこない、不利益が生じた場合には補償する制度まで用意して情報提供をすすめようとしていることなど、大きな問題があります。
 このLINE問題について、日本政府の個人情報保護委員会は、「中国政府から情報提供を求められたことはないとLINE側が説明している」としていますが、のんきな話しです。LINEは中国の国家情報法の秘密を守る義務があるため、個人情報を中国当局に提供していても言えるわけがありません。
 問題は中国だけではありません。政府は2020年10月から、第二期政府共通プラットフォームと呼ばれる日本の中央省庁むけクラウドの運用を「アマゾン・ウェブ・サービス」を利用して開始しました。アマゾンはご承知の通りアメリカの企業であり、そのアマゾンの管理するサーバーに政府の保有する情報が保存されることになります。ここで問題なのは、中国同様、アメリカの諜報機関がアクセス権を持っていることです。アメリカでも2018年、通称クラウド法という法律でデータが米国内に存在するか否かに関わらず、自国の企業に対して、データの提供を求めた場合、企業はこの命令に従わなければならないとなっています。この法制度と軌を一にしてアマゾンの取締役にあのエシュロンという国際的な傍受システムで有名な諜報機関、米国国家安全保障局(NSA)の元長官、キース・アレクサンダー氏が就任していることを見れば、背筋が寒くなります。
 いま政府が進めている地方自治体の情報システムを集約して標準化する「ガバメント・クラウド」についても米国のグーグル社のサービスを使うとしていることも同様の心配があります。
 じつはこうした国家ぐるみの強制的な情報提供の仕組みに対してEU各国の政府機関は米国企業の提供するクラウドからの撤退を進めています。個人情報の海外移転は原則禁止されています。
 また、さきほど紹介した中国はさらにしたたかです。自分が国家情報法で企業などが持つ個人情報を手に入れるようにしながら、国内には昨年8月、個人情報保護法をつくり、国内企業には個人情報の中国国内での保存を義務づけ、データの海外持ち出しを事実上制限しています。
 まさに世界では個人情報を巡り、争奪戦が行われているような状況です。そんななか日本政府はデジタル関連法で個人情報の利活用を進めようとしているのですから心配しすぎることはないと思います。
 したがって議案第95号については反対せざるをえないということを申し上げて、質問を終わります。


 
                                仁坂知事の答弁を聞く、高田由一県議(右)

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