2023年2月和歌山県議会 予算特別委員会
  楠本文郎委員の質問概要記録
              2023228

1.脱炭素社会実現にむけての県の姿勢
(1)「(仮称)Dream Wind 和歌山有田川・日高川風力発電事業」について
(2)「(仮称)和歌山印南日高川風力発電事業」について
(3)知事の見解を伺う

2.県営射撃場について

3.日高川水系河川整備計画の進捗状況について

4.県道御坊美山線の現状と令和5年度の計画について


1.脱炭素社会実現にむけての県の姿勢
(1)「(仮称)Dream Wind 和歌山有田川・日高川風力発電事業」について
《質問》楠本文郎 委員
 現在県内には、風力発電・太陽光発電の申請が目白押しとなっています。
 この「(仮称)Dream Wind 和歌山有田川・日高川風力発電事業」における環境影響評価方法書にかかる「知事意見」は1昨年の7月に発出されています。
 知事意見では、「慎重かつ丁寧に調査、予測及び評価を行い、重大な環境影響を回避、低減できない場合には、当該地域での事業の廃止も含めて、事業計画の抜本的な見直しを行うことが必要」と、総論でも各論でも述べられており、私から見れば「諦めなさいよー」と指摘されているように感じます。ところが、事業者の方はさらに動きを強めていると言われています。知事意見の個別的事項には、「希少猛禽類であるクマタカについて、少なくとも2年間の現地調査を行うこと」と示されていますが、こうした知事意見に対する履行状況について、事業者として、地元に理解を求めたり、県に進捗を報告する必要ないということですがこうした姿勢で良いのかどうか、疑問に感じます。

 また、知事意見の中には今後の進め方についても触れられています。方法書のあとは準備書の提出になりますが、「準備書の作成に当たっては可能な限り地域住民にわかりやすい内容、表現となるよう配慮すること」との指摘です。さらに知事意見では「『ベスト追及型』の姿勢に立って調査、予測及び評価を実施すること」とも述べられています。この意見に即した姿勢があるのか心配に思います。
 本事業に係る環境影響評価の状況と今後の対応について環境生活部長からお答えください。

《答弁》 環境生活部長
 事業計画地のある白馬山脈については、東に向かって自然度が高く、貴重な動植物の生息域が残っていることから、この区域における事業は自然環境に重大な影響を与える可能性が極めて高いと考えている。
 そのため、県では、環境影響評価法に基づき、配慮書及び方法書に対して、「重大な環境影響を回避、低減できない場合には、当該地域での事業の廃止も含めて、事業計画の抜本的な見直しを行うことが必要」との意見を述べた。
 現在、事業者において現地調査が行われており、今後、その結果をまとめた準備書が提出されることになるので、方法書に対する意見への対応や環境への影響を確認し、環境保全の見地から意見を述べる。

《再発言》楠本文郎 委員
 配慮種、方法書に続く準備書の段階、地元の同意は得られていません。
 自然環境に対する知事意見、低周波派による健康被害の懸念は払しょくされていません。
 FIT事業には、20年の売電の終了後、この発電施設をどうするのかまで規定されているはずです。いったん破壊した環境は元に戻せるのかも問われます。
 総合的に判断するべき事業だと考えます。

(2)「(仮称)和歌山印南日高川風力発電事業」について
《質問》楠本文郎 委員
 この事業における計画段階環境配慮書について県知事意見では「発電所アセス省令に従って適切に作成されたものとは認められず、想定区域の絞り込みが不十分である。」とあります。そのため、「方法書までにできる限り決定し、反映させること」と述べています。手続き論として、配慮書の再提出にはならないのでしょうか。
 また、「環境影響評価は、情報公開、説明による地域とのコミュニケーションの手続きであることから、事業者としての説明責任を果たすとともに、積極的に地域との対話に努めること。特に、環境リスクについて、正しく説明しておくこと」と方向性が示されています。
 この地元地域では、50階建てのビルに相当する183メートルもの風車が、標高300メートルから700メートルの山の尾根に22基もそびえたち林立するのと同じだとして、様々な心配をしています。
 出力は日本最大と思われる1基で最大5,500kw、風車直径は158メートルもあります。大きさゆえの懸念は大規模な山の開発による土砂災害の危険性が高まること、そのうえ、この切目川沿いには御坊十津川断層が走っています。日高川へ傾斜した逆断層で、広い破砕帯を伴っているといわれています。
 低周波や音の影響はどうか、規格外の1枚80メートルの羽をどうやって運ぶのかなど疑問が出されています。実はこの辺りは米軍機のいわゆるオレンジルート、超低空飛行訓練のルートになっています。山肌すれすれに飛ぶ訓練をしている地域でもあります。
 まだ配慮書の段階ですが、たくさんの不安材料が多いのが現状です。
 配慮書の手続をやり直す必要はないのか、また、環境影響評価について、今後どのように対応していくのか、環境生活部長からご説明いただきたいと思います。

《答弁》 環境生活部長
 (仮称)和歌山印南日高川風力発電事業については、配慮書において、風車の位置や規模、搬入道路など事業計画が定まっておらず、事業実施想定区域の絞り込みが不十分であったことから、方法書までにできる限り決定し、方法書に反映させるよう、県の意見を述べた。
 所管省庁である経済産業省においても、「環境影響評価法に基づく手続上の義務は履行しており、やり直しの必要はない」と判断している。
 今後、県に方法書が送付された場合は、環境影響評価法に基づき、環境保全の見地から意見を述べる。

《再発言》楠本文郎 委員
 義務的要素が軽いのではないかと思います。これだけ大規模なものが、技術的に確立していくのでしょうか。

(3)知事の見解を伺う
《質問》楠本文郎 委員
 県ではカーボンニュートラルを推進し、「脱炭素社会の実現に向けた取組」が大きく位置付けをされています。今年度予算における新規事業である脱炭素経営モデル推進支援、県有施設等の脱炭素化推進事業の予算化、森林資源活用対策などについてすでに質疑されました。県政の意気込みを感じています。気候危機に直面しているなかで、エネルギーの転換をはかることは時代の要請だと考えます。
 ところが一方では、「安全・安心に暮らせる社会づくり」に相反する問題も派生します。エネルギー転換のためには、最大の障害になっているのは「乱開発」にならないかと心配する事例が多くあるという点です。ですから乱開発をさせないという見地が必要なのではないでしょうか。増加する風力発電による開発に対し、県としてどのように対応していくのでしょうか。知事の見解をお聞きしたいと思います。

《答弁》 岸本知事
 脱炭素社会の実現に向け、化石燃料の使用を減らし、再生可能エネルギーの導入を進めていく必要があるが、一方で、風力発電設備や太陽光発電設備を設置することに伴い、災害が発生したり、環境への影響が起きるようなことがあれば、大変なことであり、この懸念は払拭しなければならないのは当然のことである。
 風力発電については、山林の尾根部に設置されることが多く、電気事業法による国の審査のみならず、環境影響評価法や森林法などの規制の対象になる。
 県では、再生可能エネルギーの導入促進に真剣に取り組んでいるところであるが、導入に当たって、地域の環境との調和が必要であり、環境影響評価法に基づいて環境保全の見地から必要な意見は堂々と述べていきたいと思っている。そして、災害防止、さらには森林保全の観点から厳正な審査を行っていく所存である。

《再質問》楠本文郎 委員
 再生可能エネルギーの導入を進めるためには、地元の不安を解消することが必要であり、地元の理解を得るよう事業者への指導が必要と考えますが、知事の見解を伺います。

《再答弁》 岸本知事
 基本的に県は、法令の枠組みの中で審査をするという建てつけであるが、委員御指摘のとおり、地元の不安を解消することを事業者が積極的にやることによって、再生可能エネルギーの推進が進む状況であれば、県としても、ケースバイケースではあるが、地元の皆さん、市町村の首長とも相談しながら、再生可能エネルギーの推進と、自然を守り、森林を守り、県民の生活と暮らしを守っていくことの両立について、どういうことが可能なのか勉強していきたいと思っている。

《要望》楠本文郎 委員
 この事業はFIT買取制度の下で事業化されます。このFITからFIP変動制に変わるということです。地域の同意は極めて大事な要素で、地域の方々の疑問に答える県行政の姿勢を堅持してもらいたいと思います。事業者の姿勢は、「地域の合意がなければ進めない」という姿勢を持つよう対応すべきです。


2.県営射撃場について
《質問》楠本文郎 委員
 仁坂前知事が、昨年11月9日「県営射撃場の整備について」との記者発表をされました。
 「県営射撃場ですが、私の経験で言うと16年ぐらい、ずっと悩んだり揉めたりして上手くいかなかったのですが、上手くいきそうな感じになってきていて、多分できると思いますので発表します。ただし、まだ完全に全ての人とちゃんと合意したり契約したりしていないので、今のところ固有名詞は秘すということでお願いしたいけど、ものすごくいい話なので発表だけします」という記者会見です。
 記者会見でも「結構大変です。第一に、お金が掛かります。第二に、やっぱり音もするし、上手く(対策を)やるので、鉛公害は出ないように設計して建設しますが、そういう問題が過去にあったので、嫌だなという議論もあります。それから、実際に作るのはいいとして、県としては維持経費がものすごく掛かって、不良資産にならないか、という議論がある。そうなったら大変で、それもちゃんと見極めておかないといけない。三番目に、地元の方が嫌だと言った時は、その地元の市町村がちゃんと説得してくれないといけない。ということで、我々は、ずっと、射撃場整備の3条件を満足するような形で進めてきました」と整備の3条件を示されています。
 前知事は最後に「新しい知事がこんなの駄目という可能性はある」と言われています。今年度当初に何らかの予算がのってくると思っていましたが、ありません。では新知事として、どのように引き継がれたのでしょうか、一から出直しなのか、それともこれまでのことを前提としてまだ予算化に至らないということなのでしょうか。複雑な経過をたどってきた案件ですからもし後者であれば、慎重かつオープンな議論をされることが必要だと思いますがいかがでしょうか。

《答弁》 岸本知事
 県営射撃場の整備については、仁坂前知事が整備のための条件としていた「騒音や鉛害対策を含む適正な整備費」、「運営経費の県負担の抑制と運営主体の存在」、「市町村の積極的な協力と地元住民の理解」の3点に基づき検討が行われてきた。上記3条件が整わなければ、ゴーサインが出ないことになっている。
 その中で、昨年3月の基本計画策定時点から、昨今の資材費等の高騰により、本年1月時点での整備費がかなり上昇することが判明した。
 さらに、着手してから3年後に行う土木工事等の発注時点では、整備費がどこまで上昇するか見通すことが困難であることから、状況を見極める必要があるとして、令和5年度での予算化を見送った次第である。

《再発言》楠本文郎 委員
 経過はかなり複雑になっています。ニーズは鳥獣害対策としてあります。射撃場となるとどのような状況でしょうか。それを県営で設立します。環境問題、騒音と鉛害への対策などたくさんあり、費用はどのくらいになるでしょうか。
 運営は委託するでしょう。採算は取れるのか、採算が取れるための努力で達成可能なのでしょうか。
 地元同意の話の中で「地元」がどこなのか、いつも議論になります。県からすれば該当する「町」でしょうが、地権者の広がり具合で利害関係者はまた複雑になります。
 ですから、検討課題をオープンにして、慎重に進めることを要望しておきます。


3.日高川水系河川整備計画の進捗状況について
《質問》楠本文郎 委員
 日高川水系の中で、建設常任委員会として西側視察もしていただきました。財政的な措置は補正予算も大きくで、かなり進んでいることは地域の共通の認識になっています。この西川の進捗が、本川はもとより、堂閉川・下川への予算化も含め、御坊市内の各地域の浸水対策に大きく寄与されることになります。西川で言えば、入山に行きつくまでに流入する財部川、和田川、東裏川などとの整合性が求められてきます。費用対効果はまさにこれから発揮できるところまで来ました。ですからここで手を抜くことはあり得ないと考えています。来年度の計画について県土整備部長からお示しください。
 また、浚渫債の導入によるここ数年の予算化は全県的に歓迎されているとお聞きします。その必要性はすでに一般質問でも申し上げ、確保する旨の答弁も頂いています。ただ、次元的な取組であり、各振興局単位からの要望を積み上げて予算化されるものだと理解しているのですが、しっかり引き続き予算化を要求していっていただけるのか、県土整備部長から合わせてお答えをいただいておきたいと思います。

《答弁》 県土整備部長
 令和5年度当初予算における日高川水系の河川整備の事業内容について、まず、日高川本川では、1億500万円で和佐地区の既設堤防のかさ上げ等を行う予定である。
 また、支川の西川では、2億1000万円で美浜大橋上流の護岸整備や河道掘削を行う予定である。
 同じく支川の堂閉川や下川では、設計を進めるとともに地元との協議等を行っているところであり、それぞれ3150万円で用地測量等に着手する予定である。
 次に、緊急浚渫推進事業債については、令和2年度から令和6年度までの5年間、地方自治体が単独事業として実施する浚渫に係る経費について、地方債の発行が可能となり、財政上の負担が少なくなる制度となっている。
 県としては、引き続き、この事業債を有効に活用していきたいと考えている。

《再発言》楠本文郎 委員
 西川大橋から美浜大橋まで1,550メートル、これから御蔵端まで1,415メートルです。その間に、斎川・和田川・東裏川へ差し掛かります。御坊市にこの効果が表れることを心待ちしています。


4.県道御坊美山線の現状と令和5年度の計画について
《質問》楠本文郎 委員
 県道御坊美山線は、かねてから拡幅が懸案となっていた道路です。先日も、車と自転車の接触があり、大事には至りませんでしたが、道路状況の改善を望む声は継続したまま推移しているところです。御坊市からも言わば最優先課題の一つとしてあげられているところです。
 地元の役員のご協力の中、令和4年度には全体としての説明会が県から行われ、今後は地権者への個別提示へと進んできている段階ではないかと考えます。予算額的には、来年度予算も前年と同額の計上となっていますが、質的には大きな違いがあるものと解釈しています。
 この路線改修の必要性について再度お示しをいただき、その到達状況と令和5年度の計画について、県土整備部長からお示し頂きたいと考えます。

《答弁》 県土整備部長
 県道御坊美山線については、日高川沿いの主要幹線道路であり、御坊市藤田町藤井地区の未整備区間900メートルを除く全線で概ね2車線が確保されている。
 県としては、この未整備区間は幅員が狭く、交通量も多く、交通の支障となっているため、令和元年度から事業を実施しているところである。
 これまで現地調査や測量、設計を進め、具体的な道路計画について令和4年1月に藤井区住民に、5月には地権者に説明会を実施し、順次、用地取得に必要な家屋調査などを進めている。
 調査が完了した箇所から補償説明に着手し、現在、2件が契約済みとなっている。
 令和5年度については、引き続き調査と用地取得を進めていく。

《再発言》楠本文郎 委員
 必要性については異論の余地はないと考えます。住民合意という点では「待ちかねている」状態です。しかし、地権者の交渉は真直ぐにはいかない部分も出来てきます。生活権の阻害になる家もあります。誠意をもって、あたっていただきたいと思います。


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