2023年2月和歌山県議会 高田由一 一般質問 概要記録
  
  録画中継
                                2023221

1.子ども医療費や学校給食の無償化について

2.原発政策について

3.災害時の県の支援策について

4.鉄道の不採算路線について

5.ユニバーサルツーリズムの推進について

6.会計年度任用職員の処遇改善について


《コメント》高田由一 県議
 質問に入ります前に、岸本知事は就任直後の記者会見で、次のように語られています。「県民の笑顔を作るという意味では、共産党のみなさんも多分同じご意見を持って下さるでしょうから、そこは是々非々のお付き合いをしていきたい」との発言です。
 私も、是々非々の立場で議論をしていきたいと思いますのでよろしくお願いいたします。

1.子ども医療費や学校給食の無償化について
《質問》高田由一 県議
 最初に、岸本知事の知事選挙での公約である子育て支援策についてうかがいます。
 知事は新聞の候補者アンケート等で子ども医療費や給食費の無償化を進める旨の回答をされていましたので私も大きな期待を持っておりました。
 ただ率直に申し上げて、今議会初日の知事の提案説明はいささか拍子抜けした感じが否めませんでした。選挙でされた公約についてもっと熱く語られるのかと思っていたからです。年末の選挙というタイミングからいっても新年度の当初予算に岸本知事の意向が十分反映できないのはわかりますが、それでは今後、どのようなスケジュールで実施しようとしているのかわかりませんでした。
 そこでうかがいます。子育て支援のなかでも子ども医療費と給食費の無償化を選挙公約としてかかげられた知事の思い入れと、これらの施策に必要な財源の見通しも含めて答弁をお願いします。

《答弁》 岸本知事
 国におきまして異次元の少子化対策に取り組むという方針が示されております。本県といたしましても、前例に囚われない大胆な施策を実行し、「子どもを育む環境づくり」を進めていきたいと考えております。
 子どもの医療費及び学校給食費の無償化は、子育て世帯に対する経済的負担の軽減につながります。このことを私も強く期待しております。
 まず、医療費の無償化につきましてですが、乳幼児期は、抵抗力も低く、罹患した場合には重症化し易いことから、早期に受診できますよう、乳幼児医療費助成制度として、乳幼児までを支援する制度として現在市町村に補助を行っております。
 一方、市町村では、地域の実情に応じた政策として、現在、全市町村で中学校卒業まで、そのうち一部の市町村では、高校卒業までを対象年齢としております。その自己負担分を独自に助成しているわけであります。
 現在、市町村とともに実施している乳幼児の予算は6億円であります。仮に県が、市町村とともに、高校卒業までを対象とすると概算で、年9億円の負担が新たに生じます。都合毎年約15億円の財源が必要となります。
 次に、学校給食費の公的支援につきましては、現在、政策として実施している市町村における無償化や、経済的に就学困難な世帯を対象とした就学援助制度によって行われているところであります。
 仮に、県内全ての児童生徒を対象に学校給食費の無償化を実施した場合は、毎年33億円の財源が必要となります。
 将来にわたって子どもの医療費及び学校給食費を無償化するには、多額の恒久財源の確保が必要であります。今後は、予算の賢いやりくりを前提に県による市町村への補助や負担の手法を含めて検討してまいる所存でございます。

《再質問》高田由一 県議
 答弁では子育て支援にかかる概算の費用が示されました。医療費への半額負担で15億円、給食で33億円、これは県が全額持ったときですから、半額補助だと16億円程度だと思います。あわせて30億円程度だとすると、財政危機警報を出す前の新中期行財政経営プランでも150億円程度の基金残高の予想でしたから、知事の言う子育て支援政策をするとしたら5年程度で財源が枯渇することになります。
 私はそういう基本的な情報も含めて出された選挙公約だと思っていましたから、知事就任後、財源問題が持ち出されているとは思っていませんでした。
 いっぺんに無理なら、段階的に実施していくということも選択枝としてありうると思いますが、その点について知事の考えはどうですか。

《再答弁》 岸本知事
 おっしゃるとおりでして、予算の執行ですから、色んなやり方があろうかと思います。
 いずれにしましても、仮に段階的にやるとして、少額であろうとも恒久的な財源が必要です。これも今、高田先生のご質問の仕方を聞いていますとよくご理解をいただいていると思います。使い切って、なくなって、次ありませんというわけにはいかない。
 仮に、3億円でも未来永劫3億円をずっと使うわけですから、3億円のお金をともかく恒久財源として捻り出す。5億円の金を捻り出す。こういうことでありますので、やはりそこは、私はある程度自らも財政については長年やってきたという自負もございますので、あまり軽々なことは申し上げられないところで、少し思いとは裏腹に慎重な言い方にはなっておりますけれども、まずもって賢いやりくりをやりながら、就任したばかりですので、令和5年度しっかりと事業を見直しまして、これだけ恒久財源ができましたという段階で、またご報告をさせていただけるように努力してまいりたいと思います。


2.原発政策について
《質問》高田由一 県議
 次に、原発政策についてうかがいます。
 政府は2月10日、エネルギーの安定供給や気候危機対策を口実に原発の新規建設や60年を超える運転を認めることなどを盛り込んだ「グリーントランスフォーメーション実現に向けた基本方針」を閣議決定しました。
 その方針では「原子力の活用」として「エネルギー基本計画に定められている2030年度電源構成に占める原子力比率20~22%の確実な達成に向けて、原子炉の再稼働を進める」ことや「次世代革新炉の開発・建設に取り組む」などとしています。
 福島での原発事故以来、原発の新増設を「想定していない」とした政府の立場を大転換するものであり、私ども日本共産党は断固反対の立場です。
 こういう状況のなかで、報道によりますと関西電力は、新年早々、福井県庁を訪れ、知事と懇談。2023年末、今年の年末ですが、これを期限としている原発から出る使用済み核燃料の中間貯蔵施設の県外での移設場所について、「あらゆる可能性を追求して全力を尽くしている」としました。
 関電はこれまで県外計画地点の表明に向け、自ら設定した2,018年や2020年という2度の期限を延期してきました。そして今年末までとした3度目の約束を履行できなかった場合、運転開始から40年を超えた美浜原発3号機、高浜原発1、2号機は計画地点確定まで運転しない方針を自ら示しています。そのうえで関電の森社長は「関係先のキーパーソンに働きかけを行っている」と答えています。
 県内でも、この原発からでる核のゴミの処分場や中間貯蔵施設をめぐって、これまでも私の地元、白浜町もふくめ心配の声があり、この議場でも何度か議論がありました。仁坂前知事は、和歌山県の地理的条件や巨大地震の心配などもあることから、「最終処分場はもとより、中間貯蔵地としても最もふさわしくないところであることは理論的に明らか」として、県としてこうした施設の調査を受け入れることさえ念頭にないことを明確に答弁されています。
ただ私が心配しているのは、今回の政府の原発推進への方向転換によって、今後も使用済み核燃料が貯まり続けることになり、そのなかで関西電力が「あらゆる可能性を追求して全力を尽くしている」としていることから、今後、和歌山県への働きかけがある可能性もでてきているわけです。
 そこで知事にうかがいます。
 そもそも知事は、原発についてどのようなお考えをお持ちでしょうか。また、使用済み核燃料など原発からでる廃棄物についてはこれまでどおり、受け入れないということで変わりはないでしょうか。知事の答弁をお願いします。

《答弁》 岸本知事
 お答え申し上げます。エネルギー自給率が諸外国に比べまして大変低い我が国であります。2050年のカーボンニュートラルや2030年の温室効果ガス削減の目標達成に向けて取り組む上では、将来にわたり安定的にエネルギーを確保しつつ脱炭素化を実現させるためには、再生可能エネルギーはもちろんのことでありますけれども、原子力発電も重要な選択肢の一つであると認識しております。
 また、脱炭素化の潮流に加え、ウクライナ侵攻後の世界情勢などを背景とした、エネルギー価格の高騰により、今、電気料金が大幅に上昇し、国民生活が脅かされている状況にございます。
 当然、原子力発電につきましては、東京電力福島第一原子力発電所の悲惨な事故を防ぐことができなかったことに対する反省や教訓を肝に銘じた上で、廃炉や復興、最終処分といった課題に政府は責任をもって取り組むべきであり、その際には、国民から十分な理解を得て進めていく必要があると考えております。
 その上で、「2050年カーボンニュートラルや2030年度の新たな削減目標の実現を目指すに際して、原子力につきましては安全を最優先し、再生可能エネルギーの拡大を図る中で、可能な限り原発依存度を低減する」という、政府方針も踏まえ、安全性を最優先に、当面、原子力発電を活用していくことは必要であると考えております。
 ただ、これまでどおり.原子力発電所から出る使用済み核燃料などの廃棄物を我が県として受け入れる考えはございません。
 発電所から離れた場所に廃棄物を運搬することは効率的とは言えませんし、何より本県は南海トラフの地震の被災リスクもあります。地震や津波の影響、或いは地形、土地の利用や人の居住の状況などを踏まえれば、県民の命と暮らしを守る私の立場上、和歌山県内は適地であるとは考えられず、受け入れる考えはございません。

《再質問》高田由一 県議
 知事は答弁のなかで「可能な限り原発依存度を低減する」という政府方針をふまえ、当面、原発を活用していくことは必要、と言われましたが、この政府方針であるエネルギー基本計画そのものが現状からすれば大いなる原発推進政策になっています。なぜなら、福島の事故前の電力の原発への依存度が30%近くあったものを、20~22%程度に低くすると言う計画だからです。いま現在の原発依存度は6%程度です。それを政府方針のように20から22%にしようとすれば、今後、全原発の再稼働や新設をしなければこの数字にならないからです。それに加えて今回のGXでの「原発回帰」です。
 だからこそ、知事にそもそも原発についてどういう立場をとるのかとうかがったのです。政府方針を踏まえるという立場では、核のゴミの処分場の心配はこの和歌山からなくならないのではないでしょうか。政府にいまの方針を撤回するよう求めることこそ必要ではないでしょうか。答弁をお願いします。

《再答弁》 岸本知事
 論理的には、いま高田議員がご指摘になった点は、論理的な一つの道筋だろうと思います。
 一方で、私ども和歌山県としては、日本政府の中の一つの地方公共団体として、政府の方針に沿って、行政を行っていくという、建て付けもございますので、現状、政府のこれまでの計画や方針につきまして、和歌山県として、十二分な検討をして、それに対して賛成、反対の立場をしっかりと採点し直すというという段階には、ございません。
 当面、政府の方針を踏まえて、いま高田議員がおっしゃられたことも念頭に置きながら、いろんな事を色々なご意見を聞きながら、考えて行きたいと思います。


3.災害時の県の支援策について
《質問》高田由一 県議
 次に、災害時の県の支援策についてうかがいます。
 この問題について私は2019年9月の一般質問で取り上げましたが、いい答弁はもらえませんでした。ただ私のなかでは重要なテーマのひとつなので、再度、うかがいます。
 災害が発生したときに、被災者のみなさんを支援する制度として被災者生活再建支援法があります。この制度は、1998年に成立し、自然災害により住民が生活基盤に著しい被害を受けた場合、都道府県が拠出をした基金を活用して、その生活の再建を支援することになっています。現在では、家屋が全壊した場合や大規模半壊に加え、2020年の改正で中規模半壊といって損害割合が30%程度の被害も支援対象となってきました。
 ただ、この国の制度にも不十分さがあります。まず、制度の対象となるのは、基本的に10世帯以上の住宅全壊被害が発生した市町村、あるいは100世帯以上の住宅全壊被害が発生した都道府県となっていて、極めて大規模な災害でないと適用にならないことです。そのため同一の災害で個人的には全壊に近い被害を受けても、集団的な被害のまとまりがないと、支援制度が適用されない場合があるのです。たとえば竜巻被害などで数軒の家だけ激しくやられた場合などは対象外です。これに対し不公平だとの声が出るのも当然です。
 そこで県独自の被災者生活再建支援制度についてうかがいます。内閣府の資料を見ましても、災害規模や要件にかかわらず、住宅の半壊や一部損壊、床上浸水などに支援金を出している都道府県がかなりふえてきています。
 和歌山県でも災害規模や要件にかかわらず住宅の被害とくに半壊や一部損壊、床上浸水も対象とした県独自の被災者生活再建支援制度をつくるようにしてはいかがでしょうか。
あわせて県の災害見舞金の充実についてもうかがいます。県の災害見舞金制度は、昭和42年に創設され、その後4回の見直しを経ています。現行の見舞金の額については、被害の程度に応じて、住家の被害に対して全壊が1万円、半壊と床上浸水が5,000円、人的被害に対して、死亡と行方不明者が5万円、重傷が5,000円となっている状況です。
 例えば、床上浸水の見舞金5,000円。これについては、実は市町村のほうが金額も多い状況です。私の地元の白浜町では、県が床上浸水5,000円に対して、白浜町の床上浸水は2万円、田辺市でも同じく2万円、参考に、和歌山市では3万円、海南市でも3万円となっています。その他の市町村も、見舞金を県の制度よりもより多く支援している状況です。災害に備えて県の見舞金の引き上げをすべきではないでしょうか。
 県独自の被災者生活再建支援制度や災害見舞金の充実について、知事の答弁をお願いします。

《答弁》 岸本知事
 災害時の住宅の半壊や一部損壊等々についての支援のあり方というのは、少し時代を振り返ると、元々は非常に手薄いものでありました。というのは、個人の資産でありますので、個人の資産について公的なお金を出すのはどういうことか、いかがなものかという考え方があった訳でありますけれども、阪神淡路大震災を契機に、大変な被害を受けられた方々に対して、そういう一昔前の考え方を変えて、徐々に徐々に支援の幅が拡大してきたという経緯がございます。
 その上で申し上げますと、災害で被災された方への支援につきましては、平成10年でありますけれども、大規模な災害を受けた地域の復興を速やかに進めるという観点から、都道府県が出し合って造成した基金と、国庫補助金を財源といたしまして、生活基盤に著しい被害を受けた個人に対して支援を行う、被災者生活再建支援制度が設けられ、これが数度にわたり、今申し上げましたように内容の改善が図られてきております。
 その上で、さらなる制度の改善につきまして、全国知事会を通じまして、和歌山県としても国に対応を求めてまいりました。その結果、令和2年12月に被災者生活再建支援法が改正されました。これまでの「全壊」、「大規模半壊」に加え、半壊の中でも被害程度が大きい、いわゆる「中規模半壊」が新たに制度の対象となったところであります。
 県独自の支援につきましては、平成23年の紀伊半島大水害において、想像をはるかに超える住家被害が発生し、被災者生活再建支援制度による支援のみでは、生活の拠点である住宅の再建が困難な世帯も多数にのぼると考えられたことから、最大150万円の県独自の上乗せ補助制度を創設し、被災者の住宅再建を支援したところであります。
 一方、議員ご指摘のとおり、同一災害による被害であっても、災害規模の要件によりまして、法適用される区域とされない区域が生じる場合がございます。被害の状況によりましては、法適用外区域に県独自の支援を行うということも考えております。
 近年発生している災害を見ますと、その態様は様々でありますので、災害の状況に合わせて、県独自の上乗せ補助や、法適用外区域への支援を行うなど、必要に応じてできる限り柔軟に対応するとともに、同一災害による全ての被災区域を支援の対象とするよう見直すことにつきましては、引き続き国に対して要望してまいります。
 それから、議員からのご指摘でありますけれども、県独自の災害見舞金制度ということにつきましては、被災された方を慰労する、激励するということのため、被害の程度も半壊や床上浸水以上を対象とするなど、これも少しずつ対象を幅広くして、現在に至っております。今後も引き続き、現行の制度の中で実施してまいりたいと考えております。


4.鉄道の不採算路線について
《質問》高田由一 県議
 次に、鉄道の不採算路線についてうかがいます。
 昨年4月にJR西日本は「ローカル線に関する課題認識と情報開示について」という文書を発表しました。輸送密度が一日当たり2,000人未満の線区、県内では紀勢線の新宮・白浜間が該当するようですが、こうした線区について収支率を公表し、赤字で大変だといいたいようです。また、同社は、こうした線区については鉄道の大量輸送の優位性を発揮できないとして、今後、地域の皆様と議論や検討をしていきたいとの内容です。要は赤字で大変だからどうにかしてくれということだと思います。
 この文書に対して当時の仁坂知事はコメントを発表、そのなかで「鉄道は全国で公平に安定して確保されるべきユニバーサルサービスとしての役割があるため、路線ごとに採算を合わせる必要はなく、黒字路線の収益を赤字路線に配分するなど、全ネットワーク維持の方向で考えるべき」と述べています。私もこれは的を得た内容だと思いました。とくに収益が赤字になっている路線のみを取り上げ公表していますが、大もうけをあげているドル箱路線については、どれだけ黒字になってもうけているかは発表しないのです。「いいとこ取り」の反対の「悪いとこ取り」です。
 こうして鉄道の存続が全国各地で問題になるなか、私ども日本共産党は昨年12月、「全国の鉄道網を維持・活性化し、未来に引き継ぐために」の提言を発表しました。そこでは、「不採算路線を含めて維持する」とした民営化時のルールを確認し、国が責任を果たす改革を訴えています。その内容は、国が線路・駅などの鉄道インフラを保有・管理し、運行はJRが行う上下分離式などを提案しています。この上下分離式は、ヨーロッパの鉄道事業では当たり前の形態で、完全民営でやっているのは日本だけと言っても過言ではないとしています。先日、知事にもこの提言をお渡ししたところです。
 そこで知事にうかがいます。岸本知事はそもそも鉄道の役割についてどのようにお考えですか。また、JRの今回の動きをどのように受け止めているでしょうか。また、国やJRへ今後どのような働きかけをしていくおつもりでしょうか。以上、答弁をお願いします。

《答弁》 岸本知事
 ご質問ありがとうございます。本日は、高田議員と是々非々で議論を戦わせていただいておりますけれども、本件については、全く同意でございます。
 まず、鉄道につきましては、通勤、通学などの日常生活、さらには産業、観光などの地域経済を支える必要不可欠な社会基盤としての役割を担っていると考えております。国土強靭化や国土の均衡ある発展などの観点から、地方のローカル線を含む全国的な鉄道ネットワークの維持を図ることは最重要課題であると考えております。
 さらに、先ほど議員からご指摘のありました、紀勢本線の新宮・白浜区間、1日当たりの輸送密度が2,000人未満となっている不採算区間であるとしてJR西日本から開示をされております。しかし、これはもう本当に高田議員のおっしゃるとおりで、じゃあ、新大阪から白浜はどうなっているんですか、ということを言いたくなるわけであります。そもそも、同社の鉄道事業は、不採算路線を含め事業全体で採算が確保できるように民営化されたことから、路線の維持については、一部の区間の収支等だけではなく、同社の鉄道ネットワーク全体の収支等に基づき議論されるべきであると考えております。
 したがいまして、県としては、国に対して、黒字路線の収益を赤字路線に配分するなど収益を内部移転させるルールづくりや、国策としての鉄道ネットワーク維持についての考えを示すよう求めてまいります。
 また、JR西日本に対しては、沿線自治体や県と連携して鉄道の利用促進を図るとともに、民営化の経緯を踏まえ、引き続き路線を維持していくよう働きかけてまいります。


5.ユニバーサルツーリズムの推進について
《質問》高田由一 県議
 次に、ユニバーサルツーリズムの推進についてうかがいます。
 この質問は、2021年12月にも一般質問で取り上げました。そのときの議論でも紹介しましたが、兵庫県の取り組みが参考になります。兵庫県ではその後も取り組みを進め、この2月県議会で「高齢者、障害者等が円滑に旅行することができる環境の整備に関する条例」が議案審査されるようです。この条例にいたる社会的背景を見ますと、ひとつには、人口の減少・偏在化、少子高齢化の進行があります。総人口の減少が進む中、高齢者・障害者は県内人口の3割以上を占め、今後も増加していき、2025年には団塊の世代がすべて後期高齢者になります。二つ目にはSDGsの取り組みです。そこでは「誰一人取り残さない」包摂性を掲げており、観光分野においても「誰一人取り残さない」視点が重要となっています。三つ目にはユニバーサル社会づくりに向けた社会的要請であります。障害者差別解消法の改正に伴い、遅くとも2024年6月までに事業者にも障害者に対する合理的配慮の提供が義務化されます。そして最後に観光面でのニーズの高まりがあります。来年5月、開催される神戸世界パラ陸上や再来年の大阪・関西万博など国内外からの誘客機会を見据え、多様な来訪者の受入に備えることが必要となるからです。
 以上のような理由で、兵庫県として条例まで作ってユニバーサルツーリズムへの取り組みを県内外にアピールしています。また、高知県での取り組みも以前、紹介しましたが、県がバリアフリー観光相談窓口を開設して強力に推進しています。一方、和歌山県内にはユニバーサルツーリズムに関する相談窓口さえない状況が続いています。
 そこで知事にうかがいます。ユニバーサルツーリズムを推進するため、どのような施策を考えておられるでしょうか。知事としての意気込みを答弁してください。

《答弁》 岸本知事
 現在の社会におきまして、障害のある方をはじめ高齢者の方など誰もが社会活動に参加する機会が確保され、障害のある方もない方も互いに、その人らしさを認め合いながら共に生きる共生社会を実現することが大変大事であると認識しております。
 したがいまして、観光面におきましても、年齢や障害等の有無にかかわらず、誰もが気兼ねなく参加できる、今、高田議員がおっしゃっていただいたユニバーサルツーリズムを推進していくことが大変重要だと考えております。
 これまでも県といたしましては、市町村が設置する公衆トイレのバリアフリー対応を含めた整備への支援、あるいは県内の宿泊・観光事業者を対象にしたおもてなしセミナーなどの取組を実施してまいりました。
 ユニバーサルツーリズムの推進は、新たな誘客層の開拓につながるものと強い期待があります。ハード面、ソフト面の受入体制の整備や充実を図りながら、今、高田議員がお示しをくださった先進地の取組を参考に誰もが家族や友人等とともに旅行が楽しめる観光地づくりに努力してまいります。


6.会計年度任用職員の処遇改善について
 次に、会計年度任用職員の処遇改善についてうかがいます。
 2020年4月から全国の自治体の非正規職員に「会計年度任用職員」が導入され、この3月でちょうど3年を経過することになります。
 和歌山県では、それ以前から県独自の制度として事務補助職員の制度を2014年から導入し、運用してこられました。この制度においては、3年を迎えるまでは、公募によらず、つまり試験をすることなく雇用の更新ができ、3年が終了した時点であらためて試験を受け、合格すればあらためて任用がされていました。
 2020年から導入された会計年度任用での事務補助職員の採用においても、同様の方式がとられ、和歌山県では公募によらない再度の任用が2回まで可能となっています。逆にいえば、3年たてばいったんリセットされ、公募されるということです。
 これら会計年度任用職員の制度において、当初から心配されていたのが、雇用の継続の問題でした。実際、2021年の和歌山県の事務補助職員の公募においては、知事部局で見ると105名の方が、継続して働きたいと試験を受けましたが、不合格者が13名でており、うち6名が少なくとも事務補助職員の制度が開始された2014年から県庁で勤めていた方であり、ベテランの非常勤職員が継続して雇用されなかったという実態があります。
 さらに、今年も会計年度任用職員制度導入以前から永年、県庁で勤めてきたベテラン職員が不合格になった事例もでています。まさに、こうしたことが県庁内すべての職場で起る可能性があるのです。
 なぜ、こうしたことになるのでしょうか。それは会計年度任用職員の任期については「その採用の日から同日の属する会計年度の末日までの期間の範囲内」とされているからです。つまり原則1年以内ということです。総務省が作成した「会計年度任用職員制度の導入等に向けた事務処理マニュアル」では、「任期の終了後、再度、任用されることはあり得る」とする一方、Q&Aの部分で、「国の期間業務職員については、平等取扱いの原則及び成績主義を踏まえ公募によらず従前の勤務実績に基づく能力の実証により再度の任用を行うことができるのは原則2回までとしている。」と例を出しています。これにより、会計年度任用職員制度の導入前までは、10年、20年、25年と再度の任用を繰り返してきた非正規職員にまで、導入後には、「公募によらない再度の任用は2回まで」といった制限をかけることになった自治体が多数になったのです。
 このような会計年度任用職員として働く方々からは、「公募の年度になるたびに、次年度の再度の任用がどうなるか、生活はどうなるのか不安で精神的な負担がたいへん大きい」「安定した生活が望めないので、結婚や家庭を持つことが考えられない」といった声も出されています。雇用の継続性が確保されなければ、知識や経験を深め、専門性を蓄積することはできませんし、必要もありません。業務に専念し力を発揮するためにも、安定したくらしを保障するためにも、安定・安心して働き続けられる職場が必要です。会計年度任用職員の継続的な任用を保障し、自治体業務の専門性・継続性が確保できるようにすることが大切です。
 例えば、民間労働者の場合は、労働契約法第18条で、有期労働契約の契約した期間が5年を超える労働者が、当該使用者に対して期間の定めのない労働契約の締結の申し込みをした場合には、期間の定めのない労働者として承諾したことと見なすとしています。しかし、労働契約法は、公務員においては適用除外とされているため、自治体の会計年度任用職員への適用もありません。ぜひとも和歌山県の会計年度任用職員の処遇を改善するためにも、この任用期間の見直しを考える必要があると思いますが、知事の見解をうかがいます。

《答弁》 岸本知事
 お答えいたします。会計年度任用職員の任用にあたりましては、客観的な能力の実証を行うことが必要であります。本県では、なにより地方公務員法の平等取扱いの原則及び成績主義を踏まえ、公募による選考を行っております。
 また、再度の任用につきましては、国の非常勤職員の制度とのバランスや、それ以前の本県における事務補助職員制度の運用の実態を考慮いたしまして、従前の勤務実績に基づく能力実証により、連続2回までは公募によらない「再度の任用」を行うことができるようにしております。
 公募にあたりましては、年齢や任用回数による制限は設けておりません。任用満了予定の職員が改めて採用試験を受験することは可能であります。
 そういうことで、任用期間の見直しということのご質問でありましたけれども、今後とも、国の非常勤職員や他の都道府県の会計年度任用職員の制度を参考にしながら、適正な運用に努めてまいりたいと存じます。

《再質問》高田由一 県議
 制度そのものの見直しについて、国へ働きかけをすることはできませんか。

《再答弁》 岸本知事
 私が公務員になりましたのは昭和55年、かなり昔のことでありますけれども、当時はですね、国におきましても、会計年度任用職員というような制度はございませんでしたし、いわゆる非常勤という形で働く方、職員の数は非常に少のうございました。いわゆるアルバイトという形でですね、そういう形で働く方はおられましたけれど、それこそ補助的なお仕事をしていただくようなことでありまして、その後、財政状況の悪化により、なかなか公務員の定員を増やすことができない一方で、業務量がどんどん、どんどん増えていくと。あるいは、それに行政改革で逆に定員を減らしていくという大きな流れの中で、おそらく現場の智恵でやむを得ず、そういう非常勤で働く働き方を増やさざるを得ない、というようなことがあったのかと思いますし、また、財政をあずかってきた立場から言いますと、職員の給料は人件費であります。なかなかそのアルバイトとかそういうものはですね、いわゆる予算上の職員のですね、給与とカウントされないというようなこともあって、そういういろんなことが重なって現状のようなことになっているかと存じますが、私自身、政治家としてですね、今、私たちが直面しているような働き方を公務員の皆さんにしていただくことが本当に正しいのか、ということは、私、国家公務員のときから自問自答してきた人間であります。今、にわかにですね、県知事の立場として、どうこうするということは申し上げられませんけれども、今、高田議員がおっしゃられた問題点につきましては、共有をさせていただいて、いろいろと研究をしてまいりたいと思います。ありがとうございました。

《要望》高田由一 県議
 県で対応できることとして、県の会計年度任用職員の賃金をもう少しあげるべきではないかという問題提起をしたいと思います。これはすでに昨年12月県議会の総務委員会でも質問しましたが、県の会計年度任用職員は、「一般事務に関する業務」ですと3年間勤めたときの額で月額15万4,900円となっている。県ではこのほかに「相当高度の知識及び経験等を要する一般事務に関する業務」という区分もあって、そこは月額の上限は18万8,700円となっています。私は和歌山市役所で働く会計年度任用職員の賃金も調べましたが、和歌山市では「事務員」というくくりで、月額18万5,200円となっています。県でいう「相当高度の知識及び経験等を要する一般事務に関する業務」と和歌山市の「事務員」がほぼ同じ賃金の水準になっているのではと見受けられます。各自治体で制度設計がちがいますから、一概にはいえませんが、決して県の会計年度任用職員の報酬が高いものではないので、今後、調査のうえ、改善をされることを要望しておきます。



                              岸本知事の答弁を聞く、高田由一県議(右)
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