目 次

木村前知事の官製談合捜査終結に不満の声
不正の防止策を提言
県秘書課長に「裏金」問題の真相を公開質問
木村前知事初当選後,予定価格5億円以上の入札結果一覧
裁判情報

 

No.59

発行日2007 115


木村前知事の官製談合・汚職事件 
2件の談合,贈収賄,脱税で7名起訴

捜査終結に不満の声

                         

木村良樹前知事の官製談合・汚職事件で、大阪地検特捜部が、昨年12月27日に、同前知事を談合・収賄の罪で追起訴し、計7人を起訴したことで、9月20日の県庁強制捜索から始まった一連の捜査が終結したといわれています。
 「え、もう終わるの。不正のウミを出し切ったとは到底思えない。」と、捜査の終結に不満の声が多数寄せられています。
 この間に取り沙汰された疑惑からすれば、もっときびしく追及してほしいと思うのは当然でしょう。訴追された事実と、未解明と思われる疑惑をさぐってみました。

僅か4事件と7名の起訴

 

 大阪地検特捜部が起訴した事件は、次のとおり僅か4件の7名です。

【04年11月実施のトンネル工事入札2件における談合事件
   木村良樹・前知事
   木村前知事の知人の井山義一・ゴルフ場経営会社元代表
   水谷聡明・前出納長
   日沖九功・元大林組顧問
 
  〈前記2件のうち1件の談合で〉
   丸岡紘一・ハザマ元大阪支店副支店長
  〈前記2件のうち別の1件の談合で〉
   谷本治・東急建設大阪支店社員

【04年11月実施の下水道工事入札における談合事件
   木村被告人、水谷被告人、日沖被告人
   川山男也・熊谷組関西支店次長

【現金1000万円の贈収賄事件】
   贈賄・井山被告人
   収賄・木村被告人

【受注謝礼金にかかる脱税事件】
   井山被告人

 4事件のうちまず贈収賄罪は、木村被告人が、初当選後の00年9月、井山被告人が県発注工事の受注業者選定に介入することを承諾。その見返りとして井山被告人は、2期目の知事選直前の04年6月上旬、1000万円を提供し、木村被告人は、水谷被告人を介し1000万円を受領したというもの。

 2件のトンネル工事談合は、木村、井山、水谷の各被告人らが共謀の上、04年11月に実施した入札において、それぞれ準大手ゼネコンのハザマと東急建設を筆頭とする共同企業体が受注できるようにしたという談合の罪です。

 脱税は、先の談合受注したハザマと東急建設が、その見返りとして井山被告人に「受注謝礼金」計約1億1700万円を提供。井山被告人は、これを収受・利得しながら申告せず、約4159万円の脱税をしたとする罪。

 下水道工事談合は、先のトンネル工事と同じ日に入札が行われた岩出市の下水道工事の入札において、それぞれが共謀の上、熊谷組と木村被告人の支援者だった地元の「丸山組」などの共同企業体が受注できるようにしたという談合の罪です。

 

「丸山組」は起訴猶予
高級腕時計などは立件見送り

 

 刑事事件で責任を追及されたのは以上だけであり、談合で受注した「丸山組」は、会長ら3人が逮捕されたものの起訴猶予に。丸山組は、起訴されなかったことから、指名停止もないことに。これに対し、「指名停止もないのはおかしい。」との声が寄せられましたが、もっともです。これでは悪いことをしても痛みが無く、「やり得」の感が拭えないからです。

 木村被告人に関する収賄容疑でも、1000万円以外に、井山被告人から毎年数百万円(約800万円)受け取っていたとされる金や、高級腕時計3個(270万円相当)を受け取っていたことについては、立件が見送られたといいます。

 他にも、熊谷組から 井山被告人に提供された5000万円の「受注謝礼金」や、木村被告人らの公選法違反の疑いについても何のおとがめもないようです。

 県秘書課の金庫から特捜部が押収した約200万円の現金や預金の「裏金」問題についてはいまのところどうするのか見えていません。しかし、捜査の終結からすれば不問のようです。この問題では、「裏金」の資金団体として、「21会」と「翔樹会」の存在や、両会の運営と資金の管理を県秘書課が行っていたことが明らかになりましたが、県秘書課が不正に手を染めていた責任や、「裏金」の収支と使途も不明なままです。

 

秘書課管理の「裏金」問題など多数の疑惑
未解明のままの不問は許されない

多数の疑惑
未解明のままウヤムヤか

 木村被告人が初当選後の発注にかかる5億円以上の県工事の平均落札率が96・6%(7頁に一覧表掲載)と全工事に十分談合が疑われるのに、このことも未解明のままです。談合の点でさらにいえば、工事の受注主体である共同企業体(3社)の、県の地元業者の選定にも「天の声」を発していたといわれていますが、この点も未解明なままです。

 木村被告人への賄賂の収受の場に同席していたということが明らかになり、年末に退職した小佐田昌計前副知事に到っては、木村被告人が知事辞職後、事件には潔癖を装って、知事の職務代行者を務めていましたが、厚顔も甚だしく、よくも、県民を欺いてきたものだとはげしい憤りを禁じ得ません。市民感覚からすれば、退職金返上はもとより処分に値する行為といえます。これに対する「けじめ」も何らなされていません。

 これでは、事件の全容にメスを切り込んで厳しく断罪したと見なすにはあまりにも遠いと県民が感じ、不満の声が上がるのもうなずけるというものです。

 取り沙汰された不正疑惑は、刑事責任が問えない問題があったり、問えないレベルの不正であったとしても、不正な疑惑は歴然として存在するのです。これらの不正な疑惑を究明し、責任をとらせて、「けじめ」をつけることが、木村被告人の辞職に伴った選挙で当選した仁坂知事に、県民が期待する役割といえます。

 仁坂知事は、年明け早々、鳴り物入りで「公共調達検討委員会」を立ち上げ、数ヶ月後には、提言をまとめるとして、談合防止のシステムづくりを急いでいます。談合防止策づくりの声が大きいものの一方、徹底した真相究明と責任追及の声は、年明け以後には聞かれず、影を潜めた感があります。早期の暫定的な談合防止策の策定が必要なことに異論はありませんが、鳴り物入りであるだけに、談合防止策の策定で、臭い物に蓋をしようとする意図が透けて見えるというものです。


 過去に真摯な反省のないシステムづくりでは、不正を温存したままであって、真に是正が図れたとはいえないし、県が失った県民の真の信頼の回復には到らないというべきです。

 真相究明を大阪特捜の起訴で終結にするのではなく、県独自に、失った信頼に「けじめ」をつけるために、事件や疑惑の真相を究明する筋道を早期につけ、その反省の上にたって、真の談合防止策を構築すべきです。

 

(事務局長・畑中正好)

仁坂吉伸・新知事から「けじめ」の声きかれず

真摯な反省のない是正策では不正を温存することに!!

 

 

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知事と公共調達委員会に真に役立つ不正の防止策を提言

最大のポイント:一般競争入札における厳しい制限や条件と8区割り制の廃止

仁坂知事は、この5日、「誰がやっても談合できないシステムをつくる。2度と事件が起こらないように最善の手段を講じていきたい」として公共調達検討委員会を設置し、提言をまとめて県民に公表するとしました。

 別稿でも述べたように、不正の防止策は、不正の真相究明と真摯な反省の上にたって策定することが必要です。しかし、提言のとりまとめが進行している以上、それがよりよいものとなるよう当会も提言していきたいと考え、その意見をまとめました。

 昨年末、知事らの逮捕を受けて全国知事会が、官製談合防止のための指針をとりまとめました。その指針では、@指名競争入札の早期廃止と、A予定価格1000万以上に一般競争入札の導入を求めています。私達も、同@の廃止とAの導入を否定するものではありませんが、防止策としては、これだけでは不十分であり、談合の防止は不可能です。現実に、山形県が1000万円以上、京都府が2500万円以上、埼玉県・奈良県が5000万円以上を、それぞれ一般競争入札にしていますが、いずれも平均落札率が90%以上であり、談合を防止しているとはいえないからです。当県も5000万円以上に導入していましたが,功を奏していなかったことはいうまでもないことです。なお、功を奏しているといえるためには最低限、平均落札率が宮城県や長野県のように80%以下になることです。

 談合を防止するためには、「誰でもが参加でき、事前に誰が参加したかわからないような制度」にすべきです。そのためには、入札参加業者数が最低でも50〜100社必要です。それも、できるだけ広い地域から参加できるようにすることです。狭い範囲の業者に限ると、事前に誰が参加するか予測が可能となって談合を誘発するからです。

 和歌山県が施行している一般競争入札は、8つの地域に分けて、狭い範囲にしている上に、一般競争入札に「制限」や「条件」を付けて、入札に参加できる業者を少数に絞る制度となっています。多くても30社程度しか参加できないまやかしの一般競争入札です。とりわけ、これまでも談合を誘発するとして当会が、廃止を求めていた地元業者を組み込む共同企業体を入札の条件としていたシステムは、前知事に悪用されていた制度でした。

 従って、談合を防止するためには、指針の@とAとともに、「制限」や「条件」を廃止し、単純一般競争入札にするかあるいは、「制限」を残したとしても、入札参加業者が50〜100社以上可能なように緩やかな「制限」にすることと同時に、地域割り制を廃止して県内1区制あるいは、区割りを残したとしても2区程度にして入札参加業者が広い範囲から参加できるようにすることです。この2点が談合防止の最大のポイントであり、是正が是非とも必要です。

 しかし、橋梁工事や下水道のシールド工事、トンネル工事など工種によっては、業者数が10〜20社程度に限られるものもあります。これらについては、単純一般競争入札にしても談合を防止することは不可能といえます。

 従って、談合を完璧に排除できないことをも念頭に、談合が判明した場合のペナルティを厳しくすることが必要です。「丸山組」が起訴猶予になったことから指名停止もないことになりましたが、やり得を許す甘いこのような現行制度では、談合がなくならないばかりか県民に理解されません。これは、指名停止の条件が、逮捕か起訴されたときと限っているからです。逮捕、起訴に限らず、談合した業者(落札及び落札しないよう協力した業者)を対象に、指針は入札参加資格停止を1年以上としていますが、資格停止を3年と厳しくすることが必要です。また、談合が判明した場合の違約金も現行の落札額の2割から4割とアップし厳しくすることも必要です。

 一方、談合できない一般競争入札にすると、競争力の高い大手ゼネコンによる異常なダンピング価格(予定価格の50%以下)の入札も懸念されますので、低入価格調査制度や手抜きや品質管理の検査体制の一層の強化が求められます。また、大手ゼネコンを対象とする入札では、受注後、地元である県内業者の下請けの義務づけや、異常なダンピングによるしわ寄せを下請業者にしないよう下請け価格保障なども検討に値します。そして、なによりも、工事成績のよい地元の業者が生き残れるように、工事成績点、地元貢献度などを入れた総合評価方式を導入することが必要です。

 また、指針は、不正を内部通報できる窓口を外部に独立して設ける必要性を指摘していますが、単なる外部だけでなく、公平・中立性及び、専門性が担保された外部に独立した窓口の設置や、外部通報先機関に、独自の調査権限及び、独自に告発等を講じる権限を与えることが必要です。今回、県秘書課で、木村知事の「裏金」を管理していたことに照らせば、この制度の設置は必要不可欠です。

 なお、指針は、不祥事の要因となった選挙支援への見返り問題については、「業者との関係の透明性を確保する必要があり、選挙時は十分留意しなければならない」とするにとどまったようですが、木村前知事が、選挙応援の見返りに、井山被告人を受注業者選定に介入することを承諾した経緯からすれば、留意事項にとどまらず具体的な指針を示すべきといえます。それには、県と工事契約にある企業や、県から補助金の交付を受けている団体及び、その団体の役員や関係者等から、政治献金を例外とせず、一切の金品を受け取ってはならないとするような倫理規定の策定も必要です。

資格停止3年、違約金・落札額の4割と罰則の強化も必須

 


県秘書課長に「裏金」問題の真相を公開質問

「捜査中」を理由に詳細な回答を拒否

 昨年の12月1日に私達は、県庁秘書課に、木村前知事の「裏金」とみられる約200万円の現金などが見つかり、それを、こともあろうに秘書課が管理していたということから、秘書課長宛に公開質問を行いました。回答は、「捜査中」を理由に、詳細な回答を拒否するという極めて不誠実なものでした。

 木村前知事の「裏金」は、2つの非公式親睦団体が、政治団体としての届け出をしないまま、加盟企業の代表らから会費名目で毎月3万円、計約5000万から6000万円集めたといわれていたものです。

 その「裏金」を秘書課が管理していたというのですから最高幹部らのみならず、一般職員まで、不正に関与していたいう由々しき問題でした。

 その使途も、「政治家や政党のパーティ券」、「付き合いゴルフ」、「付き合い飲食費」、「通常の交際費で落とせない慶弔費」などの交際費や、「知事公舎の光熱費」、「食事代」、「マイカーの維持費」、「夫婦で渡航(04年10月のブラジルへの旅行)した際の妻の旅費」などの生活費にも充てていたという到底許すことのできないものでした。

 この「裏金」問題を私達は、ヤミ献金という犯罪行為に該当する不正行為で集めた金を、一般県民には、公金の使途に清廉さを装って県民を欺き、公金では落とせない交際費に充てていたという著しいかつ悪質な裏切り行為と見なして、捜査の結論を待つまでもなく、真相を一日も早く説明すべきであると考えて公開質問を行ったものです。

 回答は、20項目にも及ぶ質問事項の各項目毎には回答せず一括して、「知事公室で事務局的な役割を担い、会費を管理していた知事を囲む親睦会として、民間の方々12名からなる21会と、11名からなる翔樹会がありました。会費は会員1名あたり月額3万円でありましたが、これら親睦会を含め、現在検察当局の捜査中であり、これ以上のお答えは出来ません。」と回答。捜査中であっても言えないことはなく、捜査中をよりどころに回答を拒否したものといえ、極めて不誠実な対応でした。 

 真相の説明に不誠実な職員が何の「けじめ」もなく、大手を振っていることに激しい憤りを感じるのは私だけでしょうか。

 

◆◆事務局長・談◆◆

  回答は、少なくとも公室で、前知事の私的な親睦会の事務的な役割を担っていたことを認めている。これは、公務中に私的な事務を行っていた点で、明らかに職務専念義務を怠っており、この点だけでも懲戒処分に値する。その上、 「裏金」が不正金と明らかになれば、法令遵守を怠り、公務員としての資質を欠く行為であって信頼を失墜させたとして、より厳しい懲戒処分にすべきだ。

 

 

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木村前知事初当選後,同前知事が発注責任者である予定価格5億円以上の入札結果一覧表(クリック)

 

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再び勝利判決                

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旅田・元和歌山市長に約2億5500万円の支払を命ず

 

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