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2004年12月01日 | 【 3.月刊『お前だえよ!』 】 |
2001年6月号 ワクワク我らの来々軒~忘れちゃいけない古里の味~
ゴールデンウィークのはじめ、和歌浦での仕事を終え、気の合うスタッフ2名とで「メシでも食いに行こか!」と車を走らせたのが夕方過ぎ。
片男波の駐車場を出た途端、県道に向かうまっすぐな渋滞に巻き込まれ、どうすることもできず、空腹の中どこへ行こうかと独りヨダレを抑えながら考えてた。
仕事が終わった時ぐらいちょっとは豪勢にいきたいもんじょ…。せっかく和歌浦まできちゃあんのやさかえに、あそこのピザにしょうかな? それとも海老フライにしょうかな? あっ、“みしま”もエエわな… とふっと左を見ると、グリーンコーナーがある。「久しぶりにてんかけと明石焼きもええわなっ」ちゅう具合に、食べたいもんだらけの頭である。
「どっか行きたいところないん?」と運転席から僕が、ぐったりとうなだれている2人に尋ねると、「どこでも行ってよ~」とあっさり下駄を預ける。和歌山をこよなく愛する落語家としては、こういう時こそセンスを問われると思うと、ますますドツボへ入って行く。結局、煮詰まった末に思いついたんは、神前にあるちゃんこ屋の“力”。「わぁ行ったことないですわ~。美味しい?」という2人に、「食べたらわからっ」と答えると、ますます感激の様子。みんなの思いは1つ…。一路“力”に行くはずだった。
向陽の前を通り過ぎ、ローソンの角を曲がりしばらく行くと、何気に目に入って来たのが、子供の頃に胸を踊らせ、親に連れて行ってもらった“来々軒”である。ものすごい葛藤が僕に迫ってくる。結局、車中での昔話の盛り上がりに押され、気がつくとウインカーを右に出していた。3人小走りに店内に入り感激したのが、昔と変わらぬ活気である。さすが老舗の底力だ。特に、神前店は数ある来々軒の中でも評判である。
席につきメニューを見てると子供の頃を思い出す。酢豚に焼飯、エトセトラ…。1つ1つに思い入れがある。生まれて初めてピータンを食べたんもここである。不思議な食感は今も忘れない。
しばし時の流れを感じていると、これぞ来々軒のウエイトレスという味あるおばちゃんが通りいっぺんのマニュアルじゃなく、温かく注文を聞きに来てくれる。昔は親の目を気にしながら頼んでたのも、さすがこの歳になると、ためらうことなくバンバン注文する。そんな自分に一抹の寂しさを感じながらも、次から次へとテーブルに並ぶ変わらぬ味に話も弾み、はち切れんばかりに食べた。大いに盛り上がり伝票を持ち、隣のテーブルに目をやると楽しそうな親子連れの姿。遠い昔の自分を見ているようで、ジンとしながら店を去った。
和歌山の老舗の味を堪能した一行は、車に戻っても興奮しっぱなし。この感激はまだまだあるはずと目指したのが、子供の時のクリスマス、必ず茶の間にあったモンブランのケーキ。西浜にあるはずのモンブランの喫茶に向かって走る我々の目は、すっかり少年だった…。
Posted by sisomaru at 2004年12月01日 17:45