雑賀 光夫 2008年2月県議会 一般質問・答弁

200836

1 「教育改革」の総括について
 @和歌山県ですすめられてきた「中高一貫校」をはじめとする「教育改革」の功罪は何か。「県民    合意ぬきに拙速ではなかったか。
 A「学習指導要領」などで学校現場をしばり、振り回すということについて。

2 道路特定財源について
 @全国的にみていわゆる「無駄な道路」というものはなかったのか。
 A県内でも「これは」と思うような必要以上の道路はないのか。
 B政治が判断すれば地方道路の予算を確保する選択肢はいくつもあるのではないか。
 C知事という立場で、公金を使ってひとつの見解を宣伝することはいかがか。
 D「地方切り捨ては許さない」と声を大にすることこそ必要ではないか。
   ・ 再質問

3 生活保護制度にかかわって
 @生活保護率、就労率など和歌山県の生活保護の実態と推移。
 A生活保護のネットからもれている方を掘り起こすこと、平成19年9月6日開催の「生活保護関係全国係長会議」の趣旨徹底について。
 B生活保護制度の趣旨を県民に周知する啓発について。

4 放置艇規制条例と船舶置き場の整備について
 @条例の考え方と船舶係留地の整備について。
 A係留場所は住宅密集地をさけ、津波から守る施設整備も必要。
 B係留場所選定にあたっての住民合意。

5 駅のバリアフリー化について
 @県内でのJR、私鉄をふくめたバリアフリー化の計画。
 AJR黒江駅のバリアフリー化の見通しと地元負担について。



 「教育改革」の総括について
雑賀  光夫 議員
@ 和歌山県ですすめられてきた「中高一貫校」をはじめとする「教育改革」の功罪は何か。「県民合意」ぬきに拙速ではなかったか。

 
  議長のお許しを得ましたので、質問にはいらせていただきます。

   第1の柱は、教育の問題、教育改革の総括と今後のあり方にかかわってであります。

私は、5年前に県議会に出させていただきましてから「教育改革は、県民合意が大切で、拙速であってはならない」と申し上げてきました。
 教育改革の一つの争点であった「中高一貫の県立中学校」の問題については、保護者の一部にニーズがあったとしても「公教育にゆがみをもたらすから、中高一貫の県立中学校設置には反対だ」と申し上げました。橋本市への県立中学校設置に際しては、「小さい地域にこうした学校ができることは、和歌山市に初めて設置したときと比べても、地域の中学校に打撃を与える」と文教委員会の席で警告したのでありました。
 
  最近、文教委員会では、坂本委員長のイニシアティブで地域の教育長さんや校長さんのご意見を聞いて回っております。
 伊都・橋本での懇談で、ある校長がおっしゃいました。「県立中学校ができて、小学校から中学校に来る90人の児童の半数が受験しました。13人が合格。合格しなかった児童の中にも私学に行くものも増えて、20人が抜けました。県立中学校というのは、一般の中学校にいい刺激を与えるといわれてきましたが、大打撃です。」
 このほかにも、高校入試改革で前期・後期試験が導入され、中学校を卒業する時点で半数の生徒が高校入試で挫折感を味わうということはいいのだろうかというご意見など、率直な多くの意見が出されています。過去数年間の和歌山の教育改革がこれでよかったのかを総括すべきときに来ているように思います。
   だから、文教委員会でも「現場の声を聞いてみよう」ということになったのでしょう。

   そこで教育長に質問いたします。過去数年、和歌山県内で教育改革が矢継ぎ早におこなわれてきたわけでございますが、必ずしも県民合意になっていなかったと思います。この改革について、特に「高校通学区撤廃」「前期後期制などの高校入試改革」「中高一貫の県立中学校を増やしてきたこと」など、どうお考えでしょうか。


《答弁》 教育長
   本県における教育改革についてお答えいたします。
 教育委員会では、国における教育制度改革の動きを踏まえつつ、社会の変化や県民のニーズを見極めながら、これまで様々な改革に取り組んでまいりました。
 議員から御指摘のあった、通学区の撤廃や入試改革、中高一貫教育の導入は、高等学校における生徒数の急激な減少や、生徒の興味・関心、進路の多様化等に対応し、特色ある学校づくりを進める観点から実施してきたものです。
 これらの改革につきましては、取り組み後まだ日も浅く、教育システム全体の中で乗り越えなければならない課題もあることから、それぞれの成果と課題を十分に評価するとともに、学校現場の実態等を踏まえた分析を進める必要があると認識しております。
 地域や保護者の願いをしっかり受け止めながら、県民の信頼に応えられる公教育の確立に向け、今後とも鋭意努力してまいります。


雑賀 光夫 議員
A 「学習指導要領」などで学校現場をしばり、振り回すということについて

 第二点、文部科学省がすすめてきた教育改革として「ゆとりの教育」がどうだったのかが論議されております。それだけが問題ではありません。文部科学省の政策は揺れが激しい。
   本日、教育長にお伺いいたしたいのは、文部科学省の教育政策で、学校現場が振り回されてきた問題をどう考えるかでございます。「学習指導要領の法的拘束性」ということがいわれて、学習指導要領が変わるたびに、あるときは詰め込みの教育内容が押し付けられ、「おちこぼれ」が大きな問題になりました。その後は、「生活科」だ、「ゆとり」だ、「総合的な学習の時間」だと学校現場は、ふりまわされてきました。
 教育の基本は豊かな学力と体力、市民道徳を身につけさせることであります。学校現場はそのことを目指して努力している。このことに信頼をおいて、それを励ましていくことを教育行政の基本にすえなくてはならないのではないかと思いますが、教育長はどうお考えでしょうか。


《答弁》 教育長
 学習指導要領は、従来からも大綱的な性格を持つものであり、今回の改訂においても、『生きる力』を育むという理念を継承するとともに、各学校の自主的な取組を尊重する内容となっています。
 しかし、学習指導要領の理念が十分に理解されていなかった面があることも指摘されているところであります。これからの教育では、その理念を十分踏まえながら、各学校が目の前の子どもの教育課題に熱意を持ってしっかりと向き合い、取り組んでいく事が大切であります。
 過日、文教委員の皆様には、県下の学校を訪問し、直接、学校の取組や課題を把握していただきました。県教育委員会としましても、それぞれの学校の実態や先生方の思いを受け止めながら、市町村教育委員会と連携し、学校と行政が一体となった「確かな学力」「豊かな心」「健康な体」を育む教育の推進に、取り組んでまいります。


 道路特定財源について
 雑賀 光夫 議員
  第2の柱として、道路問題についてお伺いしたいと思います。

   私は、この壇上で、道路問題について何度も発言をしてきました。遅れている道路整備、通学路の安全、いろいろです。同時に、「この道路は少し贅沢ではないか」という指摘をしたこともあります。海南市の日方大野中藤白線にかかわっての質問でした。また、海南市の国道370号・阪井バイパスについても、「無理に4車線にしなくても2車線でもいい」とも申し上げたことがあります。全国的に問題になっているいわゆる「無駄な道路」と比べれば、ささやかなものですが、小さいことでも自分の足もとの問題でムダをなくそうと提案したことは大変大事なことだと思っています。
 さて「地方のチャンスを奪うな」というチラシが県内で大量に配布されました。「道路特定財源・暫定税率が廃止されたら和歌山県は大変だ」というものです。発行者として、和歌山県・和歌山県議会などならんでいますが、私どもはそのことについて相談にあずかったことはないことをまず明らかにしておきたいと思います。
 このチラシのような趣旨の議論は、その以前から知事の発言にみられましたし、年明けの和歌山放送で、知事と県選出国会議員の座談会でも繰り広げられておりました。その座談会で、ある国会議員の方は「無駄な道路などというものは一つもない」という趣旨の発言までしておられました。どんな道路でも、全く人も車も通らない道路というのはないでしょう。しかし、費用対効果という観点から、莫大な費用をかけてあまり利用されない道路を「無駄な道路」というわけです。そんなことを好くご存知の政治家の方がずいぶん乱暴な論議をするなと思ったものです。
 さて、議論の前提を整理しておきたいと思います。道路特定財源とは、揮発油税をはじめ、道路関係からの税収を道路財源にあてるという仕組みであります。一般財源にも使うといいながら、道路整備計画を優先し、事実上ほとんど道路に使ってしまうというやり方は「道路優先財源」と呼べばいいのですが、ここではあわせて「特定財源の仕組み」と申し上げましょう。
 その仕組みの上に、その税率を上乗せした「暫定税率」の問題があります。
 何が問題にされているのでしょうか。

第一.    一つ一つの道路を作るに当たっては、財政全体を視野に入れて、本当に必要な道路かどうか、費用対効果はどうなのか、福祉か道路かガソリン値下げか、国民にとって何が必要なのか政策判断をしなくてはなりません。しかし「特定財源」という仕組みは、「お金はある」ということで、厳しい政策判断がおろそかになる、その結果、いわゆる「無駄な道路」が作られてしまう。東京湾アクアラインでは、交通量が過大に見積もられていたことが批判されています。本四架橋でも、3本もの橋をかける必要はなかったという意見が多いように思います。

第二.    その一方で、和歌山県など地方で必要な生活道路など先送りにされてきました。そのことは「特定財源」「暫定税率」という仕組みがあろうとなかろうと、あったにもかかわらず政治が地方を大切にしてこなかった結果であります。

第三.    「暫定税率」の上乗せをどうするのか、税金をどう取るのかということは、政治が決める問題です。暫定税率を廃止あるいは引き下げるのか、環境税のようなものに置き換えるのか、別の大企業優遇税制を是正して財源を生み出すのか、あるいは、私たちは反対ですが、消費税を引き上げることを含めて、さまざまな選択肢があります。それをどのように地方に配分するのか。国会で法律を作ればどんな選択肢でも選べる。そこで国会で論議されているわけです。

以上が、質問の前提条件であります。

知事にお伺いいたします。

第1 全国的に見ていわゆる「無駄な道路」などというものはなかったとお考えなのかどうか、知事の認識をお聞かせ下さい。


《答弁》 知事
   全国のことは自分の権限ではないので分からないというのが模範的な答弁ではないかと思いますが、個人としてはそれは少しはあるのではないかとはっきり言うと思います。それはしかし国会でも、あるいはそれぞれの地域の県議会でも御議論されたらいいことでありまして、別にそれを封じられているということではないと思います。
   実は、この考え方は政府のものなのでございます。何度もご説明しておりますけれども平成18年12月、和歌山県で選挙が行われている時でございましたけれども、その時に政府は無駄な道路はもうやめて必要な道路は造るけれども、その必要な道路は今後10箇年計画を作って決めて、残りのものはもう造らないことにして、それで残った財源は一般財源に回すというふうに仰った、この考え方ではないかと思います。
   そこで私どもは和歌山県が悲願としている、もうここまで来ていると思っておった道路、和歌山県の色んな道路が、一番遅れている和歌山県の道路の改良が実現できないことになってしまったら大変だというふうに思いまして、昨年の春から道路懇談会を形成いたしました。そこで検討をして夏までに結論を得た。その結論は道路は地方にチャンスを保障するものだ。それからやっぱりそれでも選択と集中はいるぞという考え方が哲学であり、この選択と集中のもとで積算をいたしますと、10年で和歌山県に関しては今までの2倍、選択と集中をしても2倍も予算がかかるということを試算をしてそれを国土交通省に届けて舗目論をリードできたと思っております。
   もちろん色々面白おかしく出ておりますような色んな無駄、これは廃していただいた らいいと思います。そんな無駄があるんだったら和歌山県の道路を1cmでも多く造っても らいたい、こちらに財源をたくさん回してもらいたい、とこういうふうに思っております。
   しかし、和歌山県で2倍のお金がかかるときに国全体を考えま しても、到底地方で、例えば和歌山県で試算すると10分の1になってしまうようなそういう措置、あるいはもしそれをカバーするために国から取り上げるといたしますと国自体が5分の1になってしまうような、そういう措置で、全国が、あるいは道路建設が必要な道路を造れるとは私は全く思っておりません。


雑賀 光夫 議員
第2 和歌山県内でも、「これは」と首をかしげるような道路もある。知事は、そんなことを感じたことはないのかどうかお聞かせ下さい。


《答弁》 知事
   これも正しい答えは、どこか首を傾げるような道路建設があったら堂々とこの議会で議論して頂きたい、そのために皆さんがいらっしゃるではないかと、こういうふうに思っております。私どもはそういうことは造らないように一生懸命努力を自分たちもして、無駄を廃して必要な道路から優先的に造っていくということをやっていきたいと思っております。ご意見は虚心坦懐に聞いていきたいと思っております。しかし、全ての要望には地元の方々のそれこそ悲願に似たような気持ちも全部乗り移っております。そういうこともまた私どもは常に感じながら行政をやっております。
 ´ 例えば平成19年11月27日、海南・海草議会議員連絡協議会の方が、先ほど御議論にありました阪井バイパスの促進を是非頼むというふうに知事室にお見えになって言ってこられました。その中に参加されておられたのはどなたでありましょうか。その時は当然4車線でもう造るという計画は出ております。それを早期にお願いすると言ったのはどなたでありましょうか。もし、それは達うんだ、2車線がよろしいというふうに思っておられるとすれば、それは足を引っ張るためにご参加されたのでありましょうか。あるいは、知事室は今言論は自由自在でございます。私もちょっと思い切ったことを言いますけれども、お客様にも何でも発言していただいております。そういう意味で別に弾圧したとか、脅かしたとかそんなことでは決してございません。私は雑費議員も阪井バイパスの促進は是非やるべきだというお考えのもとにやっておられるんだろうなということで、行政をリードしてきたつもりでございます。
   もっとも正直言って和歌山の道路に関しては全て未完成で繋がってないなという感じも抱いております。従って、どこか優先的に早く繋げるような方向で選択と集中をやっていかないといかんなと、それはまた選択か ら漏れた人たちに対しては気の毒だなと思いながら心を鬼にして後回しにせざるを得ないようなものもたくさんあるわけでございます。


雑賀 光夫 議員
第3 私が先に申し上げた、税金の集め方、地方への配分など法律を作ればさまざまな選択肢があるという私の指摘について、違った考えをお持ちかどうかお聞かせ下さい。


《答弁》 知事
   様々な選択があるではないか。税金の集め方、地方への配分など、色んなやり方があるじゃないかと、そういうふうにおっしゃいました。その通りでございます。
   しかし、現在出ている議論、国政の分野で色々議論されている分野は、財源の廃止論ばっかりで財源の手当諭は私は全くといってないと考えております。地方が足りなくなる、そうすると国からさらに取り上げて地方の方に回してあげて地方はまあいいかなと、そう したら今度は5分の1になったら、国の方の予算が、私の試算では5分の1になってしまいます。その5分の1でもちろん無駄は廃したとしても果たして私どもが要望しているような悲願と しているような42号線の有田海南バイパスとか、京奈和自動車道とか、紀伊半島一周道路とか、府県間道路とか、こういうものが我々の思うように本当に造っていただけるでありましょうか。
   先ほどの11月27日に要望されたもう1つの要望項目は国道42号線の海南有田のバイパスについての早期新設改良整備でございました。


雑賀 光夫 議員
第4 さまざまな選択肢があって国会で論議されている問題を、知事という立場で、あるいは和歌山県という名前で、税金を使い、自治会をつかって、「これしかない」というように一方的な考えを宣伝されるのはいかがかと思いますが、いかがでしょうか。


《答弁》 知事
   和歌山県を預かっている知事としては、和歌山ではこういうことに事実としてなりますよ、ということを述べて何が悪いのでありましょうか。
   国政のことは黙っておれと言われるのならば、それこそ私はお上の規範に盲従するというようなことではないかと思いまして、個人的にはそんな卑屈な態度で、というふうに思います。
   黙っていたら、お上あるいは国政に黙っていたら和医大の定員増だって、地デジの危機だって全然解決いたしません。従って、黙っていることはできないわけであります。
   もちろん私としては県に直接関係のないこと、国政で色々議論されている、これについて発言することはこれは差し控えたいと思っております。一例を挙げますと、アフガンの給油の話なんかございました。国政で二分されてました。あれは直接関係ありませんから、これについては個人の意見はともかくとして、県として意見を申し上げることはないというふうに思います。
   しかし、道路の問題は県として大変大事な話であり、皆さんの悲願でございます。従って、これはこういうふうになりますよということは申し上げないといけないということだと思います。
   もう1つ申し上げますと、色々なパンフレットを作りました。そのパンフレットで、こ の暫定税率の廃止の問題点を指摘したパンフレットと似ているパンフレットがあるのを ご存じだと思います。これは必要な道路はこれなんですと言って先はどご説明しましたように、道路はチャンスなんですと、選択と集中はするけど和歌山はこれだけいるんですということを客観的にみんなで議論して申し上げた材料と全く同じなのであります。その材料をお出ししてパンフレットを作って政府に働きかけをしたときは、応援はしていただいたかどうか分かりませんが、別に異論はなく。それが実現できなくなって大変だ、全く同じ論拠なのでありますが、これは大変だと言ったときに、何故たまたま国政で意見が分かれているからといってそういうことを黙らないといけないのでありましょうか。


雑賀 光夫 議員
第5 知事が声を大にして言わなくてはならないのは、これまでの政治で地方が置き去りにされてきたという問題、道路問題しかり、「三位一体の改革」しかりであります。そして、特定財源や暫定税率の仕組みがどうなろうと、地方に住む私たちを切り捨てることは許さないということだと考えますが、いかがでしょうか。


《答弁》 知事
   全く賛成であります。地方に住む私たちを切り捨てることは許さないと言えと仰った、そのために私は行動しなきゃいけないというふうに思っております。まさに暫定税率の問題がここに関わるから、私たちは一生懸命考えないといけない。暫定税率の廃止によって財源がなくなる、別に取ってくれば別でございますけれどもその財源がなくなる、その結果、幹線ネットワークが頓挫して、それで和歌山が繋がらなくなる。これこそ和歌山の切り捨てになるから私たちは言っているのであります。
   石原知事も、東京都知事でございますが、道路は東京にとっても大事だろうと言っておられて、同じ意見でございます。しかし、私は東京都については道路が建設できなくても不便にはなる、不便にはなるけれども切り捨てられることはないというふうに思います。しかし和歌山では、この幹線ネットワークが頓挫したら我々は不便になるだけじゃなくて切り捨てられることは必定だというふうに思います。そういう意味で切り捨てられたくないということで頑張っているものであります。
   中央の政局に過度に影響されることなく、まさに県民の視点で和歌山県がどうやったら良くなるかということを是非一緒に考えていこうではございませんか。是非よろしくお願 いします。


再質問 「特定財源」の仕組みは政策判断を甘く
雑賀 光夫 議員
   道路特定財源の問題というのは、道路から上がった財源は、すべて道路に使うという仕組みです。「お金はある」ということで、慎重な厳しい政策判断、政策検討がおろそかになることが心配です。ここに問題の眼目があります。
 かつては無駄な道路もあったが、これからが無駄な道路は作らないと政府も言っていると知事は言っていますけれども、本当にこれからは作らないのかというところが問題です。
   東京湾アクアラインに加えてまたも新しい橋を東京湾にかけることもふくめて、さまざまな計画があるわけですね。
 たしかに、和歌山から淡路島への橋は、ないよりあるほうがいいでしょう。しかし、これだけ福祉が大変なときに、財政が大変なときに、それをつくるのがいいかどうかというときに、厳しい政策的な検討と判断がもとめられる。ところが、道路特定財源という仕組みは、そういう検討をせずに政策決定をしてしまう危険がある。
   特定財源・暫定税率維持で、政策選択の手を縛ってしまうのでなく、国会でも討論して、この道はいるのかいらないのか、どれだけのお金をかけるのか厳しい政策的討論をすべきだというのが、私たちの主張でございます。
 知事も、地方を切り捨てるなというのは大賛成といわれて、それは大賛成です。おそらく大賛成といわれるだろうと思っていたのですが、そこでは意見が一致するわけです。

   知事の言い分に論理の飛躍
   ただねえ、すこし論理に無理があるなと思うのは、特定財源の廃止が即地方切捨てになるというのは、かなりこれは論理の飛躍がある。聡明な知事とは思えないような、論理の飛躍をしているというように思います。
   お聞きしたいのは、その論理の飛躍があるという点が一つ。もう一つは59兆円という中で、無駄な道路は作らないといいながら、国会の中で無駄な道路というものがどんどん出てきている。これはやっぱり、59兆円は、全部道路に使うんですという道路特定財源あるいは優先財源といったらいいですか、この仕組みがあるからこういうことがおこってくるんだと私は思うんですが、知事はどうお考えでしょうか。


《再答弁》 知事
   論理におかしいところがあるとおっしゃいましたけども、特定財源の廃止が地方切り捨てになると言った訳ではなくて、暫定税率など、財源を頂けないとですね、地方の切り捨てになってしまいますよねということを申し上げたのでございまして、お金がですね、やっぱり無くなったら、それは道路も何も造れないというのはあきらかではございませんでしょうかということを申し上げたいと思いました。それから、無駄なこと、おかしいこと、これは民主主義の世の中でございますので、いろんな所で議論したらいい。それから、特定財源になったからといって、全ての道路が自動的にボンボンボンとできる訳ではなくて、それぞれ毎年の進捗状況とか、中期計画には一応、紀伊半島の道路がようやく 載せてくれたところなんですけれども、それも毎年毎年の予算の中でですね、どれくらい のスピードでやって行くかとか、そういうことについて議論があるわけでございますね。そういう意味で議論をする機会というのは別に全く無くなる様な事はありませんので、それを全く無くなる様なことをいうのは論理の飛躍なんでございます。


 生活保護制度にかかわって
雑賀 光夫 議員
   第3の柱は、ワーキングプアと生活保護制度活用の問題についてであります。
 
  「ワーキングプア」というのは「働いても生活保護以下の生活しかできない人」と定義されています。2002年で世帯数の18、7%という推計もあります。「NHKスペシャル」の「ワーキングプア」の特集では母子家庭で、いくつもの仕事をして、夜の九時に子どもを寝かしつけてから働きに出る、午前二時に子どもが眠っている場にもどってくる、こんな生活を、あと10年つづけるというけなげな決意を語るお母さんが紹介されておりました。
   ワーキングプアの問題は、根本は雇用や労働条件の問題ですが、ここでは、福祉・生活保護の面から、この問題に迫ってみたいと思います。
   必死でがんばっていても、生活保護以下の生活しかできないでいる方が、多くいらっしゃる。がんばって、がんばって、体を壊して、本当にどうしようもなくなったところで、私たちに相談にこられて、生活保護を受けることになるというのが、よくあるケースです。働く意欲もなくしてしまっている場合も少なくありません。
   しかし、少し考えてみればおかしなことです。生活保護というのは、最低生活のセイフティネットですから、それ以下の生活の皆さんは、このセイフティネットで守られなくてはならないのが、この国の建前です。ところが、その建前が守られていないわけです。守られていないだけではない、ほんとうに困窮した方も、すぐには受付してもらえないという話を、県内でもよく聞きます。
   私たち海南海草の共産党の議員団でこの問題を論議しました。一人の市会議員から「私は、まだ働けるときから生活保護のお世話をする。生活保護をうけても、働いている方が多い」と報告しました。生活保護のお世話の件数が一番多い議員です。その議員は、「生活保護になっても、少しでも働きなさいよ」とアドバイスしています。これが本当の姿ではないのでしょうか。それは北九州市などで問題になっているような「就労指導」という名目で、生活保護から追い出すのとはまったく違ったものです。

   「捕捉率」という言葉があります。「つかまえる」という意味の「捕捉」です。生活保護を受けられる要件を満たす世帯がどれだけ生活保護をうけているかという数字を捕捉率といいます。平成16年12月の「生活保護制度の在り方に関する専門委員会 報告書」の中に「捕捉率を検証する必要があるという指摘があった」という文言がでてきます。しかし政府は「捕捉率」を検証した気配がない。
   「補足率」はどうなのでしょうか。逆に言えば、生活保護を受けてもおかしくないのに、受けていない方がどのくらいおられるのでしょうか。
   生活保護をうけている方は人口の1%ですが、生活が困窮している10%の方の消費水準を比較すると、10%の困窮家庭のほうが消費水準は低いという統計もあります。生活保護の要件は、所得水準のほかに、近親者から援助をいただけないのかということ、預金や財産はどうかということもありますから、この10%皆さんのすべてが、受給対象者になるとは限りません。しかし、それを差し引いても、捕捉率は相当低くなるのではないかと推測されます。行政の責務は、法と現行基準にもとづいて、このギャップを埋めることであります。
   ところが、なかなかそうはならないという現実があります。そこで、こんな声も聞こえてきます。「生活保護の人は結構なもんや。私らもっと生活が苦しいんや」。不正受給の問題は別としても、普通に生活保護を受けている人についてまで、生活が苦しい人たちから、そんな声が起こることがあります。生活保護制度が本来の姿で運用されていないから、そういう声が出るのだと思います。

   北九州市での餓死事件をうけて、厚生労働省の指導にも一定の手直しがうまれているように見受けられます。
   平成19年9月6日に、厚生労働省社会・援護局が開いた「生活保護関係全国係長会議資料」というものがございます。そこには「生活困窮者を発見し適切に保護を実施するため、生活困窮者に関する情報が福祉事務所の窓口につながるよう、住民に対する生活保護制度の周知、保護福祉関係部局や社会保険・水道・住宅担当部局等の関係機関との連絡・連携を図るよう努められたい」と記載されています。
   分かりやすく言い換えてみましょう。「国保税を払えないで、資格証明書しかもらえない人がいたとします。国保の担当者は、資格証明書を発行すればそれでいいのではない。なぜ、この方は国保税を払えないのか。悪質滞納者でないのなら、生活保護で守られるべき方ではないのか。福祉事務所や民生委員と連絡をとって、対応しなくてはなりませんよ。」…「会議資料」は、そういっているのです。

   福祉保健部長にお伺いいたします。
   第一に 和歌山県内で、生活保護を受けておられる方が何人おられるのか、就労実態がどうなっているのかなど生活保護の実情をその歴史的経緯もふくめてお伺いいたします。


《答弁》 福祉保健部長
 和歌山県の生活保護の動向については、昭和50年度以降では、昭和53年度に被保護人員15,556人、保護率14.5‰をピークに減少を続けてきましたが、バブル崩壊後の長引く景気の低迷等により、平成9年度の被保護人員7,684人、保護率7.1‰を境に増加傾向に転じ、平成20年1月には被保護人員12,099人、保護率11.8‰となっております。
 ´また、世帯の就労実態ですが、昭和55年度には世帯主、世帯員が就労している世帯は1,685世帯、21.0%でしたが、平成20年1月には706世帯、7.6%と、減少しております。


雑賀 光夫 議員
   第二に 生活保護を受けられるはずなのに生活保護を利用できていない方の問題です。国保税や地方税の滞納、年金の未納などは、貧困のメッセージである場合が少なくありません。こうした担当者と生活保護の担当者が連携して、生活保護制度の活用を図るべきだと思うのですが、いかがでしょうか。
 また、平成19年9月6日の「会議資料」の趣旨を、出先機関や市町村担当者までどのように徹底させておられるのか、お聞かせください。


《答弁》 福祉保健部長
 生活保護制度は、申請主義をとっているため、生活に困窮する者からの申請で保護の開始決定を行うことが原則となっております。しかし、生活保護の適正な運営に当たっては、本人等からの相談を待つだけでなく、生活困窮者に関する情報が、福祉事務所の窓口につながるよう、民生委員や市町村の関係部局等との連絡・連携を図るよう、従来から各福祉事務所を指導しているところでございます。
 さらに、平成19年9月の「全国係長会議」の趣旨を、10月の福祉事務所担当者会議において周知を図ったところであります。


雑賀 光夫 議員
   第三に 世間では、生活保護というのは全く働けない人が受けるものだという観念があります。また、生活保護を受けることを恥ずかしいことのように考えて無理をしておられる方も少なくないと思います。必要な方は、積極的にこの制度を活用されるように、県民への啓発活動をすることが求められると思いますが、どうお考えでしょうか。


《答弁》 福祉保健部長
 民生委員は、地域住民の生活状況の把握に努め、必要に応じた福祉サービスの情報提供や相談を行う役割を担っており、その一つとして生活保護制度の趣旨説明等もおこなってございます。
 また、県のホームページにおいて、生活保護制度の概要説明や相談窓口を県民に対して周知しているところであります。


 放置艇規制条例と船舶置き場の整備について
雑賀 光夫 議員
   第4の柱として、放置艇規制条例と船舶置き場の整備についてお伺いいたします。

 「和歌山県プレジャーボートの係留保管の適正化に関する条例」が今議会に提案されております。この問題は、昨年度の予算委員会でも同僚議員がとりあげられ、私も6月県議会で、和歌山下津港の40分の1の海岸線である海南市付近に、放置艇の4割が集中しているという事実を指摘し、対策を急がれるように要望いたしました。その後、仁坂知事が規制条例をつくるという記者発表をされた。迅速な対応を評価するものでございます。
 しかし条例ができるというのは出発点についたということでございます、従来の放置地域が「船舶置き場」に指定されただけでは、「津波のとき船が凶器になる」という状況は変わらないわけです。とくに海南市付近では、住宅地に近接して船舶が放置されています。

 県土整備部長にお伺いいたします。
 第一に、条例の考え方と船舶の係留地の整備について、どのようにお考えなのかお聞かせください。

《答弁》 県土整備部長
   関係法令に基づく規制と併せて早急に放置艇対策を推進するため、「プレジャーボート所有者等の責務」や「係留者の氏名等の届出を義務付ける重点調整区域の指定」などを規定した条例案を、本議会にお諮りしているところであります。
   係留施設の整備につきましては、これまでも和歌山下津港内港地区等において取り組んでおりますが、既存の静穏水域や低利用施設等を活用した簡易な施設整備も進めることにより、必要な収容数が早期に確保されるよう努めてまいります。


雑賀 光夫 議員
 第二に、係留地に指定する場合は、津波が発生した際、船舶が凶器にならないよう、基本的には住宅密集地を避ける必要があると考えますし、どこにつくるにしてもしっかりした係留施設、付近の堤防のかさ上げ、あるいは、港湾の入り口に水門を設置して津波から守るなどのことが必要だと考えますが、いかがでしょうか。


《答弁》 県土整備部長
 堤防や水門などの国土交通省や本県が推進している津波対策施設の整備と併せ、周辺の状況等を総合的に勘案して係留場所を選定するなど、船舶が被害拡大の原因とならないよう取り組んでまいります。


雑賀 光夫 議員
 第三に、係留地周辺住民の合意でございます。係留地周辺住民が津波が来たとき安全なのかどうかということが出発点になっている問題ですから、よく話し合ってご理解を頂き、ご理解いただけるような対策をとっていただきたいと考えますが、いかがでしょうか。


《答弁》 県土整備部長
 法令に基づく放置等禁止区域や重点調整区域の指定を行う際に、地区ごとに協議会を設けるなど、広く地元関係者等のご意見をお聞きし、和歌山県プレジャーボート等対策検討会にも諮った上で指定してまいりたいと考えております。


 駅のバリアフリー化について
雑賀 光夫 議員
   第5の柱として、JR黒江駅のバリーフリー化についてお伺いします。

 平成17年の6月県議会で、JR黒江駅の安全問題、プラットホームの段差解消を訴えました。一年後に、JR、県、海南市が3分の1づつの負担で、段差解消ができたことは、大変うれしいことでした。
 私の質問に、当時の企画部長が「バリアフリー法でやりましょう」と前向きのご答弁をいただき、一気に実現への流れができました。しかし、実際にはバリアフリー法にはよらず、海南市はすぐに要望に応えたいということで、プラットホームのかさ上げだけを実施して、県からもご支援いただいたというのがその後の経過でございます。
 乗降人数は、平成17年度で5000人を超しました。利用する智弁学園の小学校は、平成19年で6年生までが通学するようになって、5000人を大幅に越していることとおもいます。
   地域では高齢化がすすみ、お年寄りの利用も多いのです。地域をまわってみると、「段差を解消していただいて大変うれしい」という声とともに「階段を上るのが大変、エレベーターを」という声を大変たくさんお聞きいたします。
   国の方針としても、乗降人数5000人以上の駅は、バリアフリー化することが大きな流れになっているように伺っています。

 そこで企画部長にお伺いいたします。
   第1 県内での、JR、私鉄をふくめて、バリアフリー化の計画は、どうなっているでしょうか。


《答弁》 企画部長
   国の補助制度を活用するためには地元市町村において、鉄道駅を含めた一定地区内のバリアフリー化を推進する基本構想を策定する必要があります。
 現在、バリアフリー化に着手されていない鉄道駅で、この基本構想を策定済み又は策定中の鉄道駅は、JR及び南海楠本駅、JR六十谷駅とJR紀伊田辺駅の4駅であります。


雑賀 光夫 議員
   第2 JR黒江駅について、そのバリアフリー化の見通しをどうお持ちでしょうか。また、その場合の地元海南市の負担はどうなるのか、お聞かせ下さい。


《答弁》 企画部長
   国の基本方針として、平成22年12月までに1日当たりの利用者数が五千人以上の鉄道駅については、バリアフリー化を図ることが目標とされており、これにJR黒江駅も該当いたします。
   しかしながら、国・鉄道事業者・県を含めた地元自治体が、それぞれ3分の1を負担する国の補助制度を活用するためには、まず、地元海南市において、基本構想を策定することが必要であります。
   県といたしましては、今後ともユニバーサルデザインの考え方に基づいて、バリアフリー化の推進に市町村、鉄道事業者と連携しながら取り組んでいきたいと考えております。


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