2020年9月県議会 文教委員会
 杉山俊雄委員の質問概要記録

                               2020924

《質問》杉山俊雄 委員
 議案第122号の訴訟の提起について、時効が訴訟によって消滅すると、その後10年期限が延びて、その間にどこかに委託して取り立てるものではないと聞いているが、それは確かか。

《答弁》 生涯学習課長
 10年という時効を止めることが一番の目的で、今回の訴訟をしている。これをすることによって、この方々から連絡を頂ければ、10年の時効を止め、この10年の間に取り立てるのではなく、返し方の相談に乗るなど話をしながら進めていきたい。 とにかく債務を認めていただくことが第一かと思っている。
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《質問》杉山俊雄 委員
 修学旅行の負担軽減について教育長にお願いしたい。
 今年のコロナ禍における修学旅行で、行き先が和歌山県に向いている。串本観光協会によると、本年度の予約状況が昨年度より5倍多くなっているとのことで、大変喜ばしい状況である。
 6月議会で北山議員の一般質問に対し、知事が「和歌山県には体験型のプログラムがあり、大変全国的にも評価をいただいている。感染リスクも少ないので、ぜひ来てほしい。その時にGo Toトラベルとわかやまリフレッシュプランを使えば、さらにいい思い出になる」と答弁された。
 県教育委員会からの通知により、学校現場では「リフレッシュプランが使えるなら修学旅行を9月にした方が負担も軽くなる」へということで、9月に変更した学校がいくつかある。しかし、受入先の都合で、9月に受け入れられず、やむなく10月に変更した学校もある。小学校では、運動会等の大きな行事を9月に実施するため、修学旅行はどうしても10月に実施しなければならない状況にある。
 何が問題かと言うと、リフレッシュプランが9月までということ。大変人気があり、補正でおよそ5億円増額して実施した。校長によると、大変安く済み、9月に実施できでよかったという話もある。
 リフレッシュプランの上限である1万円が、自己負担から軽減されるかどうか、9月か10月かで線引きされるのは、同じ市内にある学校でも不公平感が残る。
 自己負担の軽減と公平性という観点から、今年に限り、軽減措置をしてもらえるように、知事に申し入れてもらえないか。

《答弁》 宮﨑教育長
 いろいろな協議をしていく中で、修学旅行は9月だけでなく、10月、11月にも実施するところがあるため、観光部局にもリフレッシュプランを延長するよう要望したが、Go Toトラベルもできたことで、9月までで延長は見送ることになった。残念で悔しい思いである。
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《質問》杉山俊雄 委員
 新型コロナウイルス感染症に係る衛生管理マニュアルがバージョンアップされている。8月6日付けのVer.3で科学的知見に基づいて改正されたと書いているが、特に消毒や清掃に関しては大幅に変更されている。その知見について教えていただきたい。

《答弁》 教育支援課長
 文部科学省に問い合わせた。新型コロナウイルス感染症対策専門家会議の意見、科学的な検証データ、文部科学省の感染状況データなどに基づいた情報や知識のことで、それらを踏まえて、総合的に判断したものである。
 消毒作業については、経済産業省が専門団体に要請して検証した結果、新型コロナウイルスに有効な成分が家庭用洗剤にも含まれることが判明したため、消毒を清掃の一環として効率的に実施できるようになった。

《意見》杉山俊雄 委員
 WHOが7月7日に「エアロゾル感染」と言及した。委員である専門家は、接触感染ではないと言っている。だから、部屋や用具の消毒など感染対策に力を入れる必要はないと言われている。これらの知見が関係して、消毒方法が大きく変わったと思っている。
 これまでは、教員に限定して消毒を行っていたが、子どもたちが清掃をし、その後に手洗いをすれば十分である。消毒や家庭用洗剤などにとらわれるのではなく、普通の掃除で十分だという知見を県教委が持っていれば、現場に消毒に力を入れる必要はないと言えるのではないかと思っている。
 例えば、インフルエンザについて、専門家の意見では、1回の咳やくしゃみに含まれるウイルスは数個しかない。ほとんどの人がマスクをしている満員電車で感染した事例もほとんどないことからも、マスクを着用していればほとんど影響がない。見えない敵を恐れて行動するのではなく、知見を知って行動したら良いのではないかと思う。
 それから、2月末に一斉休校があった。このときの科学的根拠は何かと思う。東京新聞では「官邸主導で専門家会議にも相談していない」とか、西日本新聞では「民間と違って学校は補償もないし、経済的な打撃も少ないから、そんな政治的思惑から採用された政策だったのでは」と書いている。あまり科学的根拠がないということである。
 それから緊急事態宣言があり、3カ月間、学校が休みになった。そのことによって、子どもたちや青年の貴重な時間を奪ったと思っている。先ほど家庭学習の話があったが、宿題を与えて教える人があればやれるが、教える人がなかったらやれるわけがない。
 学校給食もなくなって、貧困家庭の子は、痩せて学校に来たというようなことも新聞で見た。家庭環境でも、塾へ行かせるかとか、ネット環境があるかとか、私立学校に行っているかどうかなど、教育も不平等さが現れたのではと思っている。
 その後、ずっとコロナでみな我慢している。今までは子どもたちは静かにしていたが、我慢も限界に来て、今まで我慢していた分がどこかでストレスをいきなり発散して、いろんな問題行動も起こりつつあるということもある。どこかの大学生の4分の1くらいは、学校を辞めようと思っているというアンケートもあり、子どもや青年のいろんなものを奪っているということがある。そのことだけ言っておく。
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《質問》杉山俊雄 委員
 変形労働時間制について、文部科学省の資料によると、建設業や販売業のように年間を通じて繁閑を繰り返す業種などで、効率的に働くことや労働時間の短縮を可能にすると書かれている。
 しかし、学校に導入しても勤務時間や業務を短縮するものではないことを初めに示している。なぜ、そのような矛盾を抱えながら導入するのか、その理由を教えてほしい。

《答弁》 教職員課長
 文部科学省の資料では、勤務時間を縮減するものではないと明記されているが、長期休業期間等において休日を集中して確保することで、教師のリフレッシュの時間等を確保し、ひいては児童生徒等に対して効果的な教育活動を行うことに資するとともに、教職の魅力向上に資することにより意欲と能力のある人材が教師を目指すことにつながることが期待されると書かれている。

《質問》杉山俊雄 委員
 夏休み中に休日をまとめ取りできることで、優秀な人材が集まると思うのか。

《答弁》 教職員課長
 それだけではなく、様々な働き方改革を通じて優秀な人材に集まることを期待しており、市町村教育委員会と確認しながら検討している。

《質問》杉山俊雄 委員
 教員の働き方改革には、業務削減が重要である。どれだけ業務を削減するのか、具体策はあるのか。

《答弁》 教職員課長
 現在、外部人材として、スクール・サポート・スタッフや部活動指導員等を導入し、またそれらの増員を国に働きかけている。さらに県として、義務教育すべての学年で35人以下の学級を実現できるよう国に要望している。国も変形労働時間制の導入には一定の超過勤務の削減が必要であるとしており、市町村教育委員会と考えていく。

《質問》杉山俊雄 委員
 小中学校では、超過勤務が多い状況であり、具体的な業務削減なしには導入できないと思うが、教育長の考えを聞かせてほしい。

《答弁》 宮﨑教育長
 変形労働時間制の導入は、国の教育再生実行会議、中央教育審議会で審議され、法律、条例を制定し実施するものである。また、45時間以内の超過勤務とならないと導入できないが、現在、そういう状況にはないと認識している。しかし、市町村が導入する場合は、県に条例化する必要があるため、超過勤務削減と併せて考える。

《要望》杉山俊雄 委員
 導入されると、8時間制が崩れ、12日間連続して働くことも可能となり、教員が疲弊してしまう。各市町村教育委員会としっかりと協議することを要望する。
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《質問》杉山俊雄 委員
 きのくに教育審議会の答申について、大変よい答申ができたという人が多いが、40年教師をしていた私がこの答申を読むと「えっ」と思った。大変な問題を含んでいると思うので、少し質問をしたい。
 平成17年に、再編の制度設計をした。それで、問題点や課題に立ち返り、今回どうするのかとなると思うが、山下議員の総括に対する教育委員会の答弁を聞いても、十分理解できなかった。特に問題なのは、大学進学率が低いと書かれていることである。大学進学率は、以前は全国平均と同じような推移をしており、平成17年度ぐらいから全国との進学率の差が広がっている。就職については、全国平均だったのが、今度は就職率が年々高くなっている。17年度の再編が始まってから、全国との進学率の差が広がっているのは、どういうことなのか。
 また答申の中で、教師が悪い、進路指導が悪いと書いてあるが、本当にそうなのか。17年度の再編整備の制度設計に問題があるのではないか。

《答弁》 教育企画監
 平成17年の再編整備は、全県的な問題について言及したのではなく、特に存続が困難な高等学校の整備について答申した内容であるため、平成17年の再編整備が理由ではないと考えている。

《質問》杉山委俊雄 委員
 全国との格差が年々開いている原因は、何だと考えているか。

《答弁》 教育企画監
 様々な原因がある。答申の中に書かれているように、現時点においてかなりの差が開いている。この原因は、生徒の意識の問題や和歌山県の置かれている地理的な要因、教員の指導力や意識の問題等、複合的に絡んでいると考えている。

《質問》杉山俊雄 委員
 次に、今度の答申で、6学級が適正規模だと書かれているが、その根拠が乏しいと思う。藤本議員の一般質問で、串本高校の話題が出された。非常に地域に根差した高校ということで、調査報告レポートを聞かせていただいた。答申を見ると、串本地域は2学級規模の高校等にして存続することが書かれている。
 小さな学校でも地域に根差す学校があるのに、なぜ6学級なのか。和歌山県は、他県と比べて小規模校が多いわけではない。全国的にみると16位である。1校当たりの人数で言うと、平均より上である。他県では4~8学級であるが、なぜ6学級になったのか、その根拠を教えてほしい。

《答弁》 教育企画監
 前の答申では、4~8学級が適正規模と書かれていた。それは、当時の県内の高等学校の規模から、それが妥当であるという判断だったと考える。
 今後、4~8学級の規模の状態で進めると、ほとんどの学校が下回ることが懸念される。様々な活動を行う上で望ましい学級数の基準として考えることで設定されたのが、今回の6学級である。答申に書かれているように、部活動や授業の展開、生徒の興味関心に応じた教育が可能となる望ましい学級数が6である。
 ただし、交通の便を考えて各地域に1校、あるいは和歌山市の高校では、6学級が望ましい学級数として整備することが重要だと考えるが、委員ご指摘のような、交通の便の悪い地域や特色がある学校、専門学科については、それとは別の考え方で残すことが必要だろうと考えている。

《意見》杉山俊雄 委員
 悪く言えば、先に削減ありきの答申に聞こえる。
 答申の中で、良いことが書かれていた。高校時代は価値観の異なる多様な他者と交わって共感することや協力することを通して、相互に信頼関係を築き、自立に向けて学んだことをどのように人生に生かしていくかを考える時期だと書いてある。
 大きな規模やクラスでなくても、小さい規模でも仲間や先生との出会いで自分というものを学校の中で作っていけると思ったので、私の感想だけ述べておく。

《質問》杉山俊雄 委員
 答申には、教育の目的、公教育の責務とあるが、「公教育の責務」とはどういうことか。

《答弁》 教育企画監
 公教育であるので、和歌山県の公立学校、私立学校も含め、学校教育の目指すところという意味である。

《質問》杉山俊雄 委員
 答申では、日本の未来を担い、世界で活躍できる人材や和歌山の発展に寄与する人材の育成、要は人材の育成というふうに聞こえる。それは、教育の目的や公教育の責務とは違う。機会均等ということで、教育の向上、あるいは確かな学力を保障し、全ての者が同じような教育を受けられるということだと思うが、そういうことではないのか。

《答弁》 教育企画監
 委員ご指摘の人材育成については、差し迫った責務である。人材育成は、求められているものの一つだと考えている。それについては、答申の最初の「はじめに」のところに、教育は、一人一人の願いと、社会や時代の要請の両方に応えていく使命があると書かれており、委員のご指摘と矛盾することはないと思う。

《質問》杉山俊雄 委員
 次に、活躍できる人材云々の中で、大学進学の実績を上げるとか、そのために、地域へ中核となる進学校をつくるとか、あるいはアスリートの育成をするとか、あるいは文化芸術に秀でた人たちを育てるというのは、機会均等からいうとずい分外れるのではないかと思う。
 例えば、アスリートに必要ということで、和歌山北高校に大変立派なアスリート用の温水プールがあるが、大きな予算をその学校の教育につぎ込む。予算が決まっているのに、そこにたくさん使えばその他の学校では少なくなる。教育の機会均等、全ての子どもたちが同じように受けられるという観点からすれば、違うと思う。
 次に、中高一貫校では学習内容は全然違う、できる子にはできるような、できない子にはそれなりに、という印象を受ける。早川和男さんの神戸大学の『住宅貧乏物語』を読むと、同じような階層を集めるとスラム化すると言う。同じようなものを集めてはいけない、上から下までたくさん集めることによって、学校というのは、生き生きしていくという話を読んだことがあるので、教育の機会均等から外れるというふうに思っている。
 それから学区制について「大学区制を中学区制に戻すことはできない、元に戻して中学区制になれば、子育て世代が地域から流出する」とか、「教育の機会均等が保障されない」と答申に書いてあるが、それはなぜそうなるのか、ちょっと説明してもらいたい。

《答弁》 教育企画監
 平成15年に通学区域が撤廃されたが、それ以前から、実は学区を越えて進学を希望する者が増えていた。その中で、さらに今度は、地域の学校がどんどん小規模化していく。その中でますます「地域の学校でやはり希望がかなえられない」「もっと外へ出て活躍したい」と思う生徒も増えてきている状況もある。
 そういう中で、すでに15年経過したが、もう一度15年前、20年前の状況に戻すような状況ではないと思う。それをやれば、いくつかの改善点は出て来るかもしれないが、デメリットも非常に大きいであろうというのが、審議会委員の考えであろうと思う。

《質問》杉山俊雄 委員
 では、大学区制の方が教育の機会均等が保障されるとはどういうことか。

《答弁》 教育企画監
 教育の機会均等、教育の質に関しては、例えば1学級や2学級の学校であれば、受ける教育の中身もかなり限定されてくる。ただ、各市域に6学級規模の学校を置くとか、あるいは紀北にも紀南にも専門的な科目を学べる学校をつくるなどの整備をすることが、質や機会の均等に当たることを答申では示していると思う。

《意見》杉山俊雄 委員
 京都は昔、小学区制だった。小学区制だったので、地域の多くの者が小中高と進む中では、受験勉強などもほとんどしないで、みんな伸び伸びとやっていた。だから中退なども非常に少なかった。
 少子化が進む中では再編は多い。奈良は大学区制だけれども、地域を重視するなら学区制を見直してもいいのではないかという記事が奈良新聞にあった。奈良もそういう問題を和歌山と同じように抱えていると思った。

《質問》杉山俊雄 委員
 普通科志向が学力を低下させると書いている。「とりあえず普通科」という志向が年々強くなってきている。これが一斉的・画一的な学びの学習意欲に影響すると書いている。これは何回読んでも私には分からない。教えていただきたい。

《答弁》 教育企画監
 私は普通科志向が学力を低下させるとは読めない。一斉的・画一的な学びの影響について、国の普通科改革に関する答申の部分を参考にして書かれていると思う。高等学校の普通科の教育は、いわゆる5教科を中心に、型にはまったようなカリキュラムが組まれており、それが画一的であると。そのことが中学校から高校に入った時、実際自分がやりたいことと合ってない場合、そこが課題であると。そういう文脈だったと思う。

《質問》杉山俊雄 委員
 普通科で私はいいと思う。3年間でどう自立していくのかを考えるのでいいと思う。
 それからもう一つは専門学科について、山下議員の質問にもあったと思うが、通学区撤廃によってメリットがなくなった、あるいは推薦入試を廃止したので生徒が来なくなった、次から次へ新しい専門学科をつくったようなことを言っていた。
 そうではなく、推薦入試、通学区、普通科系専門学科、それらは選択の幅が広がって、通学区がなくて行けるところで選択ができたから格差が広がったと思う。良い学校へどこからでも行けるということで、どんどん格差が広がった。それは、やはり機会均等に反するように思う。推薦入試を廃止したのも、推薦入試があれば早く進路を決めたいと思ってまずそこへ行った。無くなったら、自分の行きたい、選択できるところに行こうとなった。やはり制度設計の問題だと私は思う。そんなことではないか。
 普通科系専門学科がなくなったり、あるいは今後なくしていくとか見直すとかと言っている。あるいは通学区を撤廃したり、推薦入試を廃止することによって、生徒が集まらなくなった、だから廃止すると言っている。それは子どもたちの問題ではなく、県教委の制度の問題ではないかと思うが、どうか。

《答弁》 教育企画監
 その場その場においていろんな状況があった。そこを考えて、その時々に考えられる方策を取ってきたと思う。
 専門学科をつくっては潰してとの表現があるが、そんなことは一切ない。できたものについは、教育的な使命を完了したものから閉科していったのはやむを得なかったと思う。山下議員の質問にもあったように、総合学科においても成果は非常に大きかった、ただ、つくった時から20年、30年と経過すれば、また検証していって、その次のスタイルを考えるべきだというふうに思っている。
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議案に対する採決
議案第115号 令和2年度和歌山県一般会計補正予算
議案第122号 訴訟の提起について
議案第124号 財産の取得について
は全会一致で原案可決

請願に対する採決
議請第4号 公立学校教員に「1年単位の変形労働時間制」導入のための条例制定をせず、少人数学級の実施や教職員の増員など教育環境の改善を求める請願
は賛成少数で不採択とすべきものと決定
日本共産党 杉山俊雄委員は採択を主張
奥村規子の議案と請願の委員会不採択に対する反対討論

「義務標準法の改正による35人以下学級の推進を求める意見書(案)」
を委員会提出意見書案とすることを全会一致で可決



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