2021年12月県議会 文教委員会 楠本文郎委員の質問概要記録
1130日(早期決議議案) 1214日(付託議案審査等)

1130日(早期決議議案)
《質問》楠本文郎 委員
 教育委員会関係で今回の対象になる人数はどのくらいになるのか、というのが1点。
 もう1点は、昨年は0.05月分、今回は0.15月分、この0.15月分が重たいと思うが、2年間の平均の引下げ額を示してほしい。

《答弁》 教職員課長
 今回の引下げの対象人数は、11月からの支給データを取り、約9,600名、1人当たり平均約6万4,000円となっている。昨年の引下げ分についてのデータは持っていない。

《意見》楠本文郎 委員
 人事院、県の人事委員会から勧告された以上、下げないと仕方ないだろうが、11月12日に国の大臣発言要旨を入手した。その中で関係大臣の皆は、人勧が出ているため下げなければならないが、今下げるべきかと言っている。
 新内閣の中で、成長という形でやろうとしている55兆円の緊急経済対策を図って、国民の購買意欲を上げて景気を回復しようとしているさなかに、教育関係だけで9,600人と大きい人数で、田舎に行くほど比率は高まっていく。
 年末に新型コロナの影響がないときに、東京でさえも(会食制限)4人を8人までは構わないとし、とにかく年末に忘年会をやってほしいと言っている。その中で、公務員は行けないというマイナスのアピールをすることが良いのかと大臣が皆言っている。同じような論調で、国家公務員制度担当大臣、財務大臣、総務大臣、厚生労働大臣、経済財政政策担当大臣が同じ会議の中で検討しようと。
 こういう形でやってきて、まだ国会が開かれていないから決定されていないが、都道府県と政令指定都市が先に行い、市町村もそれに従うこの仕組みでいうと、人事院勧告があるからと金科玉条ではもういかないような時期、そんなタイミングであるように思う。

議案に対する採決
議案第146号 教育職員の給与に関する条例の一部を改正する条例
は賛成多数で原案可決

日本共産党 楠本文郎委員は反対
→ 奥村規子 人事委員会勧告関連議案に対する反対討論 録画中継(600)


1214日(付託議案審査等)
《質問》楠本文郎 委員
 高校再編問題は全県を揺るがしてきた。争点になったのが「特任高校」という表現。「特任高校」はどのような位置づけか。

《答弁》 教育企画監
 「特任高校」という言葉は本年2月の地方別の説明会等で使った。経緯として、答申以降、学校がどうなるかということに関心が高まる一方、それぞれの学校がどう整備されていくのかも議論する必要があるということで、各学校の役割や使命を提示し、意見を伺う必要があった。長期にわたって地域の高校教育の拠点となる「地域中核高校」、それとは違った意味で特色ある教育活動を展開することが期待される「特任高校」など7つのタイプを示した。このことによって、多様な議論や評価があり、関心・理解も深まり、提示した意味はあったと思う。

《質問》楠本文郎 委員
 小中学校のほうが地域の話題になることが多い。高校はあまり話題になることがない中、今回の提案は、高校教育について全県的に考え、深めるきっかけになった。特任高校とは、和歌山市内にある難関大学突破校というのが議論の集約であったかと思う。難関大学を突破することを目指す学校像。このことは否定していないのか。

《答弁》 教育企画監
 当初から難関大学を目指すという意味での学校像は考えていない。当初から、特色ある学校という定義である。

《質問》楠本文郎 委員
 特色というと、スポーツに秀でた学校があるとすると、その学校にスポーツに秀でていない生徒は入学できないということにはしていないはず。全県一区である限り、この方向・傾向はなくならないと思っている。この点については、変更はしていないのか。

《答弁》 教育企画監
 特色とは、外国語教育、理数科教育などを標榜した学校ということ。地域の高校において特色ある教育を充実することは必要だが、より特色化した学校が特任高校である。

《質問》楠本文郎 委員
 特任高校についてこれ以上、やり合う気はないのでここで止めておく。特任高校という表現もないし、考えたこともないという答弁をいただいたと理解する。
 もう一つ、インパクトがあったのは「減らす」という表現。学校がなくなるとみんなが大騒ぎした。180度変わった表現「できる限り存続」は、スローガンではないことを確認したい。

《答弁》 教育企画監
 15年間で生徒数が3分の2程度になる。それに応じた高校になっていくことが必要だというのが答申であった。 29校が20校になるというのも、数的なイメージを示したものである。すぐに、一斉に起こるということではないし、今後の取組やいろいろな状況によって変わっていくこともある。一つの状況を理解するための表現であったと理解してほしい。原則的には、教育委員会の姿勢は変わっていない。

《質問》楠本文郎 委員
 昨日、私が本議会で質問した特別支援学校は、子どもが多くなるからどう対応するかという議論。高校再編の議論は、子どもが少なくなるからどう対応するかという議論。「可能な限り残す」というのと、「減らす」というのは両極の話である。それを問うている。
 いろいろな地域で、高校は地域の宝物だという意見を聞く。県教育委員会が、高校を「可能な限り残すように努力する」という姿勢か、「減らす」という姿勢かでは大きな差がある。ここは分岐点である。単なるスローガンにしないでほしいと思い質問した。

《答弁》 教育企画監
 委員がおっしゃるとおり、この1年間、地域の高校が非常に大事だと強く思っていただき、ありがたい。それに応えていきたいと思っているので、建前ではなく、一緒に学校をつくっていきたい。「可能な限り存続させる」という考えは、始めから変わっていない。

《質問》楠本文郎 委員
 過去の教育長の答弁で「高校は地域の宝物だと再認識する機会となった」というものがあったので、教育委員会の総意だと思う。大切な答弁だと思うので、確認させてもらった。地域の宝物としてどうやって残すのか、どんな高校をつくるのか、議論をしていけばよいと思う。
 議論をする上で、分からないところが2つある。
 ひとつは6学級を標準とし、5学級から7学級もありで、1学年200人から280人が理想だと書かれている。県民が期待するのは、5学級から7学級であると。5学級から7学級とはどこから出てくるのか。
 もうひとつは、国の制度で40人学級という枠があるが、串本古座高校は度外視して35人学級にしている。1学級に35人いないと教育効果が上がらないということはないと私は確信している。学級数と1学級当たりの生徒数は、これからもっと議論すべきだと思うがいかがか。

《答弁》 教育企画監
 6学級を標準という表現はしていない。5学級から7学級については、県民の意見で、1例として、200人から280人の生徒がいれば、いろいろな行動ができたり、多様な専門性を持った先生に教えてもらえるという期待感の中から出てきたもの。今回は、6学級を理想としている。それにこだわるものではない。そこは変わっていない。
 1学級の人数は、弾力的にできるならした方がよいと思う。現実的には、30人学級や25人で授業をしているところもある。高校では、教科によって様々なバリエーションがある。現実的には、今年の入試でいうと160学級の募集であったので、1学級当たり平均すると35人ぐらいになる。40人というのは高校の編成上の問題、教員定数を算出するときの標準であることを理解願いたい。

《質問》楠本文郎 委員
 小規模の分校、希望者が少なくなっている南部高校、希望者の多い紀央館の普通科や日高高校の普通科を考えると、この問題に突き当たる。1学級当たりの人数と学級数で考えると、中津分校は存続について議論の余地がなくなる。南部高校も全国募集等工夫を重ね、それは正しいと思っている。
 その中で、学級数と1学級当たりの人数を決めてしまうと、存続する道筋についで議論の余地がなくなる。そうではないのか。

《答弁》 教育企画監
 そうではない。40人を標準としているが、40人以下のところで運営している学校がある。学級数をどうするかということは、生徒の希望を大切にしたい。ただ希望だけでは、一部の地域・一定の学科に偏るので、慎重にしていく。さらに大事なことは、ゆとりのある募集定員を設定すること。人数ありきで、40で割って、学級数が決まり、存続が決まるという単純な問題ではないし、そうしようとは全く思っていない。

《質問》楠本文郎 委員
 答弁を聞いていると、子どもが主人公ということが端々にあったと思う。子どもに学びを保障するために、専門性を持った高校の先生をつけたいので、行政としての知恵を絞っていることが分かった。
 今回、地域の宝物としての高校を見直す機会になったが、これから議論する余地はあるのか。県の案が出て決定とされたら、議論の余地がなくなる。

《答弁》 教育企画監
 今後の教育を取り巻く環境は変わっていくので、状況に応じてよりよい教育を準備していくのが私たちの責務だと思う。今後、状況が変わるかもしれないし、いろいろな取組を大切にしたいので、先日の「考え方」のビラにも、この学校は何年後にどうなるということは書いていない。地域によって状況が違うので、原則と指針を示して、宝物と思っていただいでいるものについて、今後どのように活用していくのか、必要な地域において協議する場をつくり、再編整備を着実に進めていく。その中には、教育委員会も加わっていく。この点も従来とは変わっていない。

《意見》楠本文郎 委員
 「県立高等学校の再編整備の基本的な考え方」にある「県民が期待する高校教育の姿」の中には「人間として成長してもらう」という視点が抜け落ちている。
 個人的な意見になるが、小中高の教育において「人材」という言葉は使うべきではないと考えている。人の材料ではなく、人間として人格を育て、人として最低限生きていけるように育てることが教育の目的のはずである。当然、発達段階に応じた指導をしていく必要があるが、やがて18歳になったら、選挙権を持って社会人として扱われるわけであるから、そういう基礎学力はつけておくこと、人として育てる教育が重要である。
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《質問》楠本文郎 委員
 子どもの貧困が社会問題になった。だからこそ就学援助制度の改善を特に注視していく必要があると思っている。
 ところがその就学援助金の制度が、2005年から三位一体の改革の下で補助金の形ではなくて一般財源化されたので、市町村が独自にやってよいということになった。これによりプラス面とマイナス面が出ており、市町村によって認定基準や申請方法でかなりアンバランスが出てきている。市町村事務として、就学援助制度は義務ではないのかという一番の疑問があるのだが。

《答弁》 教育総務課長
 制度の周知については「義務」と明文化されたものはないが、市町村では様々な方法で周知・広報を行っている。県では、これまでも就学援助制度の周知・広報等の取組をお願いしてきている。

《要望》楠本文郎 委員
 これは県に対してどうせよという筋合いのものではないが、県は30市町村がどのような就学援助をやっているという情報を集めていることから、もっと情報を市町村に対して、集約して、また返してという形でやって欲しい。
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《質問》楠本文郎 委員

 国庫補助の新設として、オンライン学習通信費というのが出されたと聞いた。オンライン学習を家でやれる環境を整え、お金がなくて整えられない世帯に対しては、就学援助という形で学習通信費が新設されたと聞いた。その内容と支給されている市町村、現時点でどうなっているのか。

《答弁》 教育総務課長
 オンライン学習通信費の補助は、既存の低所得者世帯への支援策で通信費相当額を支給されるものである。内容はICTを通じた教育が、学校長もしくは教育委員会が正規の教材として指定するものまたは正規の授業で使用する教材と同等と認められるものにより提供される場合のオンライン学習に必要な通信費が対象となっている。支給市町村については、国庫補助の対象となる要保護者への支給実績のある市町村は現時点ではない。

《要望》楠本文郎 委員
 どの委員も、やはり就学援助の中で全市町村で普及してほしいと思われるのでは。それがまだだと聞き残念である。冒頭に言ったように、入った情報でまた市町村に返すという営みの中でやってほしい。私の地元の隣の町で、これを出すことにしたという情報を聞いたので、ぜひまた調査してほしい。
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《質問》楠本文郎 委員
 海南市で高等学校等入学準備費というのが就学援助費の中に付け加えられたと聞いた。35,000円とのこと。高校の入学準備金なので、大概必要ではないか。県でおさえている高校入学準備で、標準どれくらいのお金が必要だと把握しているか。

《答弁》 教育総務課長
 高等学校への入学準備費がどれくらい必要か、お答えするのは困難である。

《質問》楠本文郎 委員
 海南市以外で、これを支給している市町村はあるのか。

《答弁》 教育総務課長
 就学援助制度として高等学校等入学準備費を支給しているのを把握しているのは海南市のみである。
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《質問》楠本文郎 委員
 コロナに関することであるが、コロナ感染者数が今画期的に下がって、入院されている方がゼ口と嬉しい日が続いているが、コロナ感染の第6波が懸念されるところである。
 現時点での高校、小中学校における授業時数等の確保状況はどのようになっているか。また、第6波が年度末に出て来ても、対応は大丈夫なのかという心配があるが、その心配がないぐらいに順調に取り戻してきたかどうかについて答えてほしい。

《答弁》 県立学校教育課長
 高等学校については、9月当初は全ての県立高等学校で分散登校を実施した。オンラインを活用した学習を行って、生徒の学びの保障ができたと考えている。その後も、順調に教育活動が進んでいると認識している。

《答弁》 義務教育課長
 小中学校については、常々市町村の方からそういうふうな情報を集めているところである。夏休みを延長した市町村が少しあるが、どの地域においてもおおむね計画どおり授業が行われていると認識している。

《意見》楠本文郎 委員
 現時点では、学校閉鎖や学級閉鎖がないように努力をするというのが準備だと捉えたい。

《質問》楠本文郎 委員
 抗原簡易キットが学校へ配布されたが、どうなっているか。

《答弁》 教育支援課長
 抗原簡易キットは、文部科学省から各学校に送付ざれている。
 抗原簡易キットの使用に当たっては、登校後に体調の変調を来した場合、医療機関受診を促すことを原則とし、速やかに受診できない場合に限って、研修を受けた教職員が立ち会い、有症状者自らが検体を採取することとしている。
 県教育委員会では、教職員が知識及び技能を熟知した上で立ち会えるよう、「医療従事者の不在時における抗原簡易キットの使用について」等研修資材を作成し、学校に周知している。また、検査の立会人が養護教諭等特定の教職員に偏ることがないよう十分配慮するよう周知徹底している。

《質問》楠本文郎 委員
 隣町では抗原簡易キットを購入し、各学校及びこども園に配布して話題になったが、使用期限があり、そのまま各園に置いておいてよいのか。
 災害時の避難所における新型コロナウイルス感染症対策として、抗原簡易キットの備蓄について議論になった自治体では、避難所となる体育館等は気温が高くなるため、役場に引き上げた。災害はいつ起こるか分からないが、そういう兆候が出たときに避難所へ持って行くなどの手段を取った。
 現在、県内の小・中・高・特別支援学校に置かれている抗原簡易キットは、まだ十分に使える月数であるとは思うが、新型コロナウイルス感染症が流行ってないからといって忘れられるともったいない話であり、いざというとき役に立たないこともある。対応の仕方を検討したほうがよいのではないか。

《答弁》 教育支援課長
 使用期限はあるが、学校で保管し、必要なときに使用するということである。
 原則としては、症状があって抗原簡易キットを使用した場合でも、その後に受診し、PCR検査を受けてもらうというのが県の方針である。そのため、まずは体調が悪いときには登校を控えて速やかに受診するという方針で学校にも指導していきたいと考えている。

《要望》楠本文郎 委員
 それは了解だが、使い方が問題ではなく、学校へ置いたままでよいかということである。薬務課等に相談をし、保管方法について検討することを要望しておく。
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《質問》楠本文郎 委員
 一般質問を準備していたら、物すごい部分を発見した。これは選挙管理委員会ではなく教育に関わる話で、事前に提案している。
 主権者教育推進会議が、1969年の時点で「高等学校における政治的教養と政治的活動について」という通知を出していたものを、2015年に文部科学省が同じようなネーミングだけれども「高等学校等における政治的教養の教育と高等学校等の生徒による政治的活動等について」を発出したと記述されている。それについて存在は知っているか。

《答弁》 教職員課長
 認識している。

《質問》楠本文郎 委員
 ここでその扱いをどうせよというつもりはないが、次のような事例があった。
 地域で訪問して「選挙やで、頼んどかよ」と言うと、「え、投票に行っていいのですか」と学校の先生に言われた。「選挙に関わるな」と管理職から言われている。おいおいおい、という思いだった。
 主権者として行う活動と、学校教職員としてやってはならない政治的偏向教育と、18歳の投票権ができた高校生に対してどのように政治を教えるか、どのように選挙を教えるかという議論は、ものすごく閉塞感があるのではと思う。現状はどうか。

《答弁》 教職員課長
 教育公務員について、教育基本法等における教育の政治的中立性の原則に基づき、特定の政党の支持または反対のために政治的活動等をすることは禁止されている。
 学校においては、児童生徒の発達段階に応じて、小中学校から体系的に主権者教育を実施する必要がある。
 教育委員会としでは、政治的中立の確保に留意しつつ、適切に主権者教育を行うよう周知している。

《意見》楠本文郎 委員
 選挙に関わる雑誌の中に「主権者教育の概況」という、文科省でこういう専門を務められた方の論文がある。18歳は50%を超えて投票に行った。ところが19歳になると30%台に落ちる。投票の仕方は分かったが、どうやって選ぶのか、何が問われているのか、自分が主権者としてどう判断を示すのかという教育をされていない。だから自分に関係のないことと考え、投票に行かない傾向が出てきているのではないか。これは私の意見であるが、学校においては発達段階に見合って、18歳には絶対に政治教育と選挙というものに対して教えなければならない。ここの熟達をもっとしなければならないのではないかと問題提起する。
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議案に対する採決
議案第172号 和歌山県立体育館及び和歌山県立武道館の指定管理者の指定について
は全会一致で原案可決



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